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             異世界送魂師ヒルメ  ~涙は地に還り、想いは空へ還る~  作者: ケンボー


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追われる霊獣族の王女


「「なぁヒルメ。サンクチュアリという村の出身と聞いたが、どの辺にある村なんだ?」


「こっからずーっと向こうにある小さな村だよ!


 「なぁヒルメ。サンクチュアリという村の出身と聞いたが、どの辺にある村なんだ?」


「こっからずーっと向こうにある小さな村だよ!


 そこでジジとシロとみんなで暮らしてたんだよ!」


「いや、どの地方なんだ?」


「あっちだよ?」


(話は理解できるが、話が通じない)


「うん、そうか。あっちなんだな」


遠い目をして返事をするアリアナ。


(身に着けている装備を見ると相当な上物だな……。杖、ローブ、それにらしくないネックレスと指輪。それぞれに白と黒の宝玉が……魔法石か……いや……)


「ねぇ、アリアナさん」


「あっ、な、なんだ?」


「アリアナさんはどこから来たの?」


「私は……エルフの里から来た……」


「アリアナさんは帝国に何しに行くの?」


「帝国にある学術図書館へ向かう途中だったんだ」


「図書館ってなーにー?」


「図書館というのは本が沢山ある場所だ。


 そこで歴史に関する本を見たくてな。


 まぁ調べものだ……」


「なぁヒルメ。やはり一緒に行くのは……」


「なんで?


 一緒に行こうよ」


「ワウ」


「い、いやしかし……エルフなんかといたら何を言われるか……」


(そう。


世界ではエルフはあまり人族に好かれていない。


傲慢で偉そうで、エルフ族以外を見下している。


私も過去に人族とトラブルに……)


「関係ないよ!


 アリアナさんは私とシロを助けてくれた人だから!


 ね! シロ!」


「ワウ♪」


アリアナにスリスリするシロ。


「しかし……」


(この子なら信じても……。しかしシロ可愛いな、ちくしょう。ふふ……まぁこの二人なら大丈夫か)


「よし、わかった!


 こちらから頼む。


 一緒に帝国へ向かおう」


「やった!


 良かったねシロ!」


「ワウ!」


「アリアナさん!


 シロー!


 見てー!


 木の実がなってるよー!」


「ワウ!」


何も確認せず頬張る二人。


「馬鹿者!


 毒があるかもしれないだろ!」


げんこつをされる二人。


「ごめんなさーい」


「ワウウ……」


「まったく!」


(ふふふ。先ほどの弔いではあんなに大人びた顔を見せたが、まだまだ子供だな。おかしなものだ。こんな感情が私にあったとはな)


◇ ◇ ◇


森を歩き、夜も更けてきた。


「よし。


 今日はここで野営をするか」


「ご飯は狩りをしよう」


「狩り!?」


「うむ。


 ヒルメには難しいだろうから……シロ、手伝ってくれ」


「ワウ!!!」


「しーっ。


 静かに進むぞ……いた。


 見てみろ、ワイルドボアだ」


「私が弓で射貫く。


 そこでシロが噛みつく。


 いいな?」


「ワウ!」


「行くぞ!」


「ワウ!」


「すごーい!


 息がピッタリだね!」


「ふぅ。


 無事終わったか。


 よし、すぐに解体しよう」


「わー!


 こんなに細かく解体するんだね。


 牙とか皮とか」


「こうしておけばギルドで売れるからな」


「ギルドってなに?」


「冒険者ギルドだ。


 知らないか?」


「しらなーい」


(冒険者ギルドも知らないってことは、ギルドの恩恵を受けていない村……。そんな村が魔獣の出るこの時代に何事もなく存在しているなんて……ヒルメの村は……)


「アリアナさん?」


「あっ、すまない。


 冒険者はまぁ依頼を受けてこなしたりすると報酬が貰えたりするんだ。


 仕事だな」


「なんかすごーい!


 アリアナさんも冒険者なんだ!」


「あぁ、そうだ。


 私はAランク冒険者だ」


「さぁ、行くか」


「あっ、ちょっと待って」

花を摘み、ワイルドボアがいた場所へそっと置くヒルメ。


「涙は地に還り……想いは空へ還る……」


「我が祈りを導とし……魂のあるべき場所へ導かん……」


《ソウル・アセンション》


これからは永久とこしえにお休みなさい……。


(む……また弔いか。この一帯が聖域のように……。やはり私にも影響を及ぼしている……)


「ありがとう」


「ごめんね。


 命をいただきます」


「なぁヒルメ。


 この前も言ったが、魔獣だぞ。


 こいつらは食料だ。


 なぜそんなことをする?」


「そのままにしておくとね、悲しい気持ちとか苦しい気持ちがそこに残るの。


 残った想いは集まって、やがて魔物になる。


 だからちゃんと送ってあげないといけないんだよ」


「思ってもみなかった……。


 魔獣など殺す対象だし、食料なんだから気にかけたこともなかった」


(スケイルゴブリンもその影響ということなのか……。そんなことが本当に起こるというのか)


◇ ◇ ◇


「さて、テントに戻るか……。


 むっ、誰だ!」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「傷だらけ!?


 大丈夫ー?」


「待て!


 近づくな!


 魔獣だ、こいつは!


 貴様、何者だ!」


魔獣は苦しそうに言う。


「はぁ……はぁ……


 逃げて……


 逃げて下さい……」


「なに!?」


「ふー。


 やっと追いついた。


 もう諦めて下さい。


 これで終わりですよ」


大鎌が魔獣の首を捉える、その瞬間――。


「清浄の光よ……盾となりてかの者を包み込め!」


《ガーディアン・プリズン》


「ちっ!


 なんだこの力は!


 触れるとダメージを受ける!」


「いくぞシロ!


 合わせろ!」


「ワウ!」


「吹き荒れろ暴風よ!


 我が力となりて!」


《エアリアルゲイル!》


「ワウウ!!」


《ファイアストーム!!》


暴風と炎の渦が敵を飲み込んだ。


「ぐぁあああああああ!!」


「やったなシロ!」


「ワウ!」


「大丈夫?」


魔獣の元へ駆け寄るヒルメ。


「離れろヒルメ!」


「大丈夫だよアリアナさん。


 この子から嫌な匂いしないから」


「匂いだと!?」


「ん?


 この傷なんか変だね。


 黒いモヤモヤが見える」


「よし」


「涙は地に還り……想いは空へ還る……」


「我が祈りを導とし……魂のあるべき場所へ導かん……」


《ソウル・アセンション!》


これからは永久とこしえにお休みなさい……。


「ぐぐっ……この力は……


 貴様は……」


「もう諦めて下さい」


(前の魔獣とは反応が違う……。バリアでもダメージを受けていたな。霊獣族にはカウンターになるということか……ヒルメはいったい……)


魔獣の傷がみるみる回復していく。


「ふぅ。


 もう大丈夫だよぉ」


(なぜ魔獣の傷は治っているんだ……。そしてあの敵は魔獣ではない。霊獣ではないか)


「おいヒルメ。


 なぜこの魔獣の傷は治っているんだ?」


「この子の傷は呪いによるものだから浄化されたんだよ。


 たぶん誰かに呪いをかけられたんだね」


「おい、危ないかもしれんから離れ――」


「ん……」


「あっ!


 気が付いた!


 大丈夫ー?」


「ありがとうございます……」


剣を構えるアリアナ。


「おい貴様、何者だ」


「大丈夫だよアリアナさん。


 危ない魔獣からは嫌な匂いがするけど、この子からはしないもん」


「ならばフードを取り、顔を見せろ」


フードが外される。


(これは魔獣ではない……霊獣だ。なぜこんなところに……ましてや子供……)


「わっ!


 可愛いな、このしっぽ」


「ひゃあ!」


「おい。


 お前、魔獣族ではなく霊獣族だな。


 こんなところで何をしている。


 なぜ追われていた?」


「そ、それは……」


ぐぅ~。


「アリアナさん。


 お腹すいちゃったから、お話はご飯食べながら聞こうよ」


「ワウ! ワウ! ワウ!」


「はぁ~……


 お前ってやつは……。


 わかったわかった。


 食事をしながらにしよう」

「どうやって食べるの、アリアナさん?」


「ふふ。


 任せておけ。


 これでも料理には自信があるからな」


「ワウワウ!」


「やれんのか? だってシロが」


「なめるなよシロ。


 お前が唸るような料理を作ってやろう」


「ふふふ……。


 あっ、ごめんなさい」


「ん……」


 「ゆっくりしていろ。


 今ご飯が出来るからな」


「ねぇねぇ。


 名前はなんて言うの?」


「フェネクスです」


「わー!


 可愛い名前だね!」


◇ ◇ ◇


「待たせたな!


 これがエルフ仕込みのワイルドボアの煮込みシチューだ!」


「どうだシロ!」


「ワウ♪ ワウ♪」


「めちゃくちゃ美味しいって!」


「そうだろうそうだろう!」


「おいお前も……いや、フェネクスだったか。


 温かいうちに食え」


「は、はい。


 いただきます……。


 美味しい!!」


「うんうん。


 そうだろうそうだろう」


「アリアナさん、お料理上手だね~。


 美味しい!


 ジジといい勝負!」


「ジジ……。


 今度対戦願おう」


「じゃあ今度一緒に村に行こうね!」


◇ ◇ ◇


食事も終わり、フェネクスの話を聞くことになった。


「で、なぜ追われていた?」


「私を殺すためです」


「誰にだ?」


「父にです」


「な、なぜ父親がお前を殺そうとするんだ?


 娘だろう?」


「わかりません……。


 監視をされるようになり、殺されそうになったので侍従のコハクが逃がしてくれたのです。


 コハクは追っ手を止めるために足止めをして……」


「コハク……」


「理由はわからないってことか……」


(実の娘を理由なく殺そうとするなど……追っ手まで……)


「私の母は前王でした。


 ですが私を産んだ時に力を失ってしまって……。


 王位を維持できなくなってしまったので、父が引き継いだのですが、それから父は変わってしまったんです」


「私にもわからないんです……。


 ただ普通に過ごしていただけなのに……」


「……」


(霊獣族の王の娘だとぉ!? これはヤバいな……。


 私たちも殺される。


 勝てるわけがない)


ペロッ、ペロッ。


「シロちゃんありがとう。


 慰めてくれるのかな?」


「ワウワウ」


(くっ……可愛い)


「だいたいのことはわかった。


 で、この後はどうするんだ?」


「とりあえず追っ手から逃げながらコハクを探します」


「何か当てはあるのか?」


「いえ……」


「じゃあ一緒に行こうよ!


 ねぇアリアナさん!」


「お前わかっているのか!?


 霊獣族の王の娘だぞ!


 追っ手が来たらかばいきれないぞ!」


「霊獣族の王の娘とかは知らない。


 フェネクスちゃんだもん」


「だもんじゃない!」


「大丈夫だよ。


 さっきもなんとかなったし、コハクさんも一緒に探そう!


 ね、シロ」


「ワウ」


「んー……。


 んー……。


 わかったわかった。


 一緒に行こう。


 すまなかったフェネクス」


「本当に良いのですか?」


「いーよー。


 一緒に行こう!


 ね!」


「ワウ!」


「ありがとうございます。


 ヒルメさん、アリアナさん、シロちゃん」


「これでお友達がまた増えたねシロ!」


「ワウ!」


こうして私たちの旅は三人と一匹になった。


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