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第39話 勝負のテスト②

 テストも二日目に突入した。


 昨日は暖愛さん家でみっちりと最後の仕上げをした。赤点回避に向けて出来るだけ点数が取れるように教えたはずだし、暖愛さん本人も集中を切らしていなかったので、何事もなければ大丈夫だろうが。


「おっ、新、咲良ちゃん!」


「おはよ、早いね」


 机に勉強道具を広げながら、暖愛さんが後ろを振り向く。


「何時から来てたの?」


「うーん、20分くらい前かな。二人もいつもより早いんじゃない?」


「うん、ちょっと勉強したかったからね」


 いつもより少し早く着いた教室。既に一人で勉強していた暖愛さんに習って、俺と咲良もそれぞれの席で勉強を始める。


 ちらほらと人が増え始めると、教室全体がテスト前の不思議な緊張に包まれる。昨日も感じたこの心地よい雰囲気に身を委ねていると、一教科目の英語の監督の先生が入ってきた。


「勉強道具しまってー」


 先生の声がけの後、皆がカバンに勉強道具をしまい終わると、監督の体育の先生がゴツい手でプリントを渡していく。


 枚数が多く、開始ギリギリに全てを配り終わった。


「よし、じゃ最初はリスニングからね。すぐに放送かかると思うからそれまで待機な」


 テストの開始を待つこの時間が一番長く感じられる。


 先生の言う通り、チャイムが鳴り終わると共に放送がかかる。


『大問1は放送による検査です。問題用紙の2ページを開きなさい』


 聞き慣れた諸注意を聞き流し、先に選択肢を読んでおく。これも中学の時に先生に口を酸っぱくして言われたことだ。


 難なくリスニングを終えると、教科書で見た文章が現れる。


 定期の英語は暗記ゲー。高校生なら一度は思ったことがあるだろう。実際俺もそうだと思う。


 高校最初のテストということもあり、問われているのは中学レベルの単語、文法ばかりだった。


 スラスラと解き進め、昨日と同じように時間が余る。それでもスペルミスを探しながら見直しをしていると、比較的すぐに終了の時間を迎えた。



「ねー、新。ここどうやって解くんだっけ?」


「あ、ここはね――」


 英語の次は数学。この短い休憩時間の間にも、暖愛さんは知識を吸収しようと俺のところにやってくる。


「うんうん、そゆことね」


「これだけやってきたんだから、後は自信持って。暖愛さんなら絶対大丈夫だから」


 少し緊張している様子だった暖愛さんに、一応励ましの言葉をかけてみる。まぁ俺のこんな薄っぺらい言葉で自信がつくかは分からないが……


 それでも、これは俺の本心だ。


「……ありがと」


 小さく呟いて暖愛さんが自分の席に戻っていく。



 暖愛さんが勉強を教えて欲しいと言ってきたのは先週のこと。正直、一週間でどこまでできるか不安だったが、ここまで真剣にやってくれるとは思わなかった。


 塾に行きたくない。放課後に遊びたい。そんな動機であっても、しっかり勉強する力は持っている。何事にも全力で。そんな彼女の性格が勉強にも表れていたのだろう。


 暖愛さんも咲良も、自分の苦手を克服しようと頑張っていた。咲良に教えている時も、暖愛さんに教えている時も、誰かが頑張っている姿はとてもキラキラしていた。


 その努力が完全に結晶となって現れるのか。勝負の数学が幕を開けようとしていた。



 数学が始まって30分。時間も折り返しとなり、教室中にシャーペンが走る音が響いていた。


 俺にとっては朝飯前だったが、暖愛さんはちゃんと解けているだろうか。テスト中に人の不安をしている暇はないのかもしれないが、不安になって前を見ると、暖愛さんが黙々と解き進めていた。


 あんまりジロジロ見てカンニングを疑われても嫌なので、自分の回答に戻る。残す大問は後一つ。


 時間もあるので丁寧に解き進める。記述問題。しかも結構ボリュームが多い。それでも、解法がわかれば詰まる問題ではない。まぁ、全部そうだろうけど。


 こんなことを考えられている時点で、相当冷静なんだろうな、俺。


 全ての問題を解ききり、もう一度暖愛さんの方を見ると、最後の記述問題に取り組んでいるようだ。


 頑張れ! と声を出したいところをグッと堪え、残りの20分を見直しで潰した。


「あらたー! 解けたよー!」


 テストが終わるや否や、暖愛さんが俺の机に駆け寄ってくる。


「良かったー」


「新、私の方チラチラ見てたでしょ?」


「へ? 何でわかったの?」


 どうしてバレたのだろう? 暖愛さんも後ろを向いていたのか?


 俺の反応を見て、暖愛さんがニヤニヤしている。


「やっぱり。新は優しいから自分のテストより私の方が気になっちゃうんじゃないかなって思ってたんだよね」


「何だ、そういうことか」


「よし、次が化学か。頑張るぞ!」


 最後に残った一教科。理科は今回は化学のみだが、次の定期では生物基礎、物理基礎も入ってくるらしい。



 ラストスパート。化学は得意でも苦手でもないが、他の人よりはできる……気がする。


 やっぱり時間が余る。もうやることがない。もうすぐテストが終わる。ということは、咲良との同居生活の終わりも近づいてきている。


 なんか一気に寂しくなってきたな。


 予定では来週の金曜日。ちょうど後一週間後で最後だ。つまり明日からは最後の休み。咲良は何がしたいのかな?


 テスト中に考えることではなかったかもしれないが、おかげで時間は早く過ぎていった。



 こうして、暖愛さんにとっての勝負のテストは結果を待つのみとなった。

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