表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/38

第38話 勝負のテスト①

 月曜日の遠足ワイワイとは裏腹に、ピリピリした空気が漂う木曜日の朝の教室。


 今日から高校生活初めての定期テストが始まろうとしていた。


 今回のテストは評定には関わるものの、中間、期末考査と比べると実力を測る意味合いが大きかった。一年の最初の時期の授業定着度を測る目的もあるのだろう。


 国数英がそれぞれ100点満点、他は50点満点。社会は地理と歴史、理科は化学だけなので全部で450点満点というテストだった。


 やはり緊張感が漂うテスト前の朝。いつもは騒いでいる暖愛さんも自分の席について勉強をしていた。


 一昨日、そして昨日も暖愛さんの家で勉強会が催され、俺と咲良と暖愛さんで赤点回避に向けて頑張ってきた。最初はポカンとしていた内容も、昨日の終わりには相当頭に入っていたし、何事もなければ大丈夫……なはず。



 人の心配ばかりしていたが、俺も授業はほとんど内職なので、めちゃくちゃ自信があるわけではない。それでも中学での貯金もあるし不安はない。


 何より、暖愛さんや咲良に教えることにより知識が整理された気がする。



 1日目の今日は国語と社会二教科。文系科目中心だ。


 試験監督の先生が入ってくると、皆の背筋がピンと伸びる。高校入試ぶりのテスト。あの時の緊張感がほんのりと蘇ってくる。


 ホッチキスで留められた国語の問題の束が前から送られてくる。


「名前は先に書いてていいぞー」


 後から渡された回答用紙の下に名前を書く。少しの間ペンを走らせる音で騒がしくなった教室もすぐに静寂に包まれた。


 カチカチと、いつもは気にも留めない時計の針が進む音が緊張を高める。


「よし…………始め!」


 先生の合図と共にシャーペンを手に取る。前半は現代文。後半は古文みたいだな。


 予想通り、難易度はそこまで高くなく20分ほどで現代文を解き終わる。試験時間は1時間なので、大分余裕がある。


 古文も基本的な文法や現代語訳だけでスラスラとペンが走る。


(あと25分……)


 思ったより早く解き終わってしまった。周りはまだ頑張って回答を考えている人や、もう終わったのかそれとも諦めたのか完全に伏せている人などいろんな人がいる。


 中学の頃、テストは戦争だった。一条家の息子として、一切手を抜くことは許されなかった。周りも優秀な人ばっかりで、その中で良い順位を取るためには人一倍努力しなければならなかった。


 でも今は人に教える余裕もある。自分の性格的にも今の方が合っている気がする。



 一通り見直しも終わり、やることがなくなった俺は次の地理の復習を始める。復習といっても教科書とかノートを出せるわけはないので、自分の頭の中に入っている知識を書き出してみる。


 国語の問題は余白が多くて書きやすい。


 本当ならまだテストが終わってないのに他の教科の復習なんて、見つかったら怒られそうだけど、幸い試験監督の先生は椅子にどかっと座って腕を組んで眠っている。


 もはや監督としての機能を果たしていない気がするが、わざわざカンニングするような人もいないと踏んでのことなのだろう。



 まだ入学してから1ヶ月半ほど。そこまで広くないテスト範囲内で地理に関する単語を書き出してみるも、そもそも資料読み取りの問題が多いだろうからあんまり復習になってない気がする。


 ふと時計を見るとあと5分ほどで国語が終わる。さっ、もう一周見直しするか。


「あぁ、もう時間かぁ……そこまで!」


 先生がのそっと立ち上がって後ろから集められた回答用紙を受け取る。


「じゃ、後二教科頑張れよー」



 その後の地理、歴史も特に詰まる問題もなくスラスラと解き終えた。今日の三教科は問題ないだろう。確実に9割は取れている。


 そして問題は……


「暖愛さん、今日の三教科はどうだった?」


「うーん、多分大丈夫じゃないかな?」


 思ったより淡白な答えだったが、自信があるようで良かった。


「それより明日の方がやばい。苦手教科しか並んでないもん」


 明日は数学、英語、化学。ボリュームは今日よりも多い気がする。


「というわけで、今日も先生役お願いしても……?」


「まぁ、良いけど」


「やったー! 新先生、私の神聖な放課後の時間は君にかかってるんだからねぇ?」


「いや、暖愛さんの頑張り具合だと思うけど……」


 咲良にも声をかけて、また三人で暖愛さんの家に向かう。


「ていうか、こんなに毎日お邪魔しちゃって迷惑じゃないの?」


「まぁ、うちは親どっちも忙しくて夜にならんと帰って来ないし、それにこっちは教えてもらってる側だからね。逆に来てもらって悪いなっていうか……」


「それは全然大丈夫だけど」


「もし面倒くさかったら、私が新とか咲良ちゃんの家に行っても良いんだけど?」


「「それはダメ!」」


 俺と咲良の声が被る。いきなりでびっくりしたのか暖愛さんが顔を顰めている。


「じゃ、じゃあやっぱりウチにしようか……」


 思った以上にびっくりさせちゃって申し訳ないが、おれと咲良が同居しているとバレるのは……そのー、色々恥ずかしい。


 同居生活も後一週間。この秘密は隠し通せるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ