第40話 デート計画
高校生活初めてのテストも終わりを告げ、クラス全体が解放感に包まれていた。
「新、一週間ありがとうねー!」
帰る準備をしていると、暖愛さんが大袈裟に手を合わせて席にやってきた。
「どういたしまして。暖愛さんが真剣にやってくれたから、こっちも教えやすかったよ」
「いやー、ほんと新先生に頼んで良かったよぉ」
いつも通りの無邪気な笑顔が戻ってきて安心だ。ここ一週間はかなり勉強に追い詰められていた感じだったので、少し心配だったが。
「それで、テストはどうだった?」
「うん! 今日のも大丈夫そう!」
「じゃあ塾行きは回避かな?」
「多分ね。これで私の放課後の時間は守られた。ということで、また誘うから一緒に遊ぼうね」
「まぁ、程々にね」
これからも少しずつ勉強は続けて欲しいところだが、テストが終わった直後にわざわざ言わなくてもいいだろう。
「じゃ、またねー!」
暖愛さんはいつもの女子三人グループでテストお疲れ様会をするらしく、足早に教室を後にした。
「新君、帰ろ?」
暖愛さんが行ってすぐ、咲良がトコトコと俺の机へやってくる。学校ではまだ少し控えめに振る舞っているのがいじらしい。
「うん、帰ろっか」
家に向かうまでの話題は、やはり明日、明後日の休みをどう過ごすかだった。
「最後の休みだからね、なんかしたいことある?」
「うーん、新君はどうですか?」
「俺は咲良と一緒だったら何でもいいかな?」
咲良がポッと顔を赤くする。
それにしても、こんな恥ずかしいセリフを平気で言えるようになるなんて。慣れとは恐ろしいものだ。
「ず、ずるいですよ!」
頬を膨らませながら、モゴモゴと何かを呟いている。そんな咲良に小動物のような可愛さを感じて、少し笑ってしまいそうになった。
「あ、あの、新君」
「どした?」
「も、もし良かったら、外にデートに行きたいな、なんて」
モジモジしながら上目遣いで聞いてくる咲良。
うん、最高に可愛い。
「いいよ?」
「いいんですか!?」
なぜそんなに驚くのかは分からないが、俺もずっと家でゴロゴロするのも味気ないと思っていたので、ちょうど良かった。
「ていうか、この前も映画行ったし、そんなに恥ずかしがることなくない?」
「で、でもこの前はちゃんと付き合う前だったし、そのー、恋人同士だと、緊張するっていうか……」
確かに、付き合ったはいいものの、直後に遠足やテストがあって、なかなかちゃんとデートをする時間を取れなかった。
一緒に暮らしていると、距離が近過ぎてわざわざ二人で外で過ごそうという考えに至らなかった。
同居生活もあと一週間。もちろん、同居生活が終わっても恋人という関係は変わらないが、その前に思い出は作っておきたかった。
「それじゃ、どこ行く?」
「どこ……がいいですかね?」
「別にどこでもいいんじゃない?」
「うーん、カップルっぽいところ……」
頑張って頭を悩ませている。俺はどこでも咲良となら楽しめる自信がある。でも、せっかく考えてくれているんだから、それを無下にはできない。
「新君、どうしよう! 私全然思いつかない!」
「そんな深く考えなくてもいいんじゃない? これからいくらでも一緒に居られるんだし」
なんでこんなキザっぽいセリフがすらすら出てくるのか分からないが、咲良は嬉しそうにニヤニヤしているのでよしとしよう。
「それもそうですね。それじゃあ……水族館とかどうですか?」
「水族館かぁ、行ったことないな」
「うわ、これが御曹司ですか……」
驚きの表情を浮かべている咲良。
咲良の言う通り、小さい頃はずっと何かしらの勉強をしていて、両親と遊んだ記憶はほとんどない。
「咲良はあるの?」
「あるに決まってるじゃないですか! ない方が珍しいですよ!」
「あ、そうなんだ……」
「それで、水族館でいいんですか?」
「うん、俺も賛成。明日と明後日どっちが良い?」
「うーん、じゃあ明日ですかね。月曜日からも学校ありますし、日曜日は家でゆっくりしたいかなって」
「確かに。じゃあそうしよっか」
土日の予定がまとまったところで、家が見えてきた。
「あ、大家さん」
「あら、今日は早いのね」
「はい、テストだったので午前中だけでした」
「そう。それにしても、二人ともすっかり仲良しねぇ〜」
「おかげさまで……」
いつも通り距離感が近い大家さんにたじたじになりながらも、世間話に花が咲く。
「そう言えば、咲良ちゃん」
「は、はい!」
「お部屋についてなんだけど、予定通り来週の金曜日には全部工事が終わるみたい。だから、あと一週間だけ待ってもらえるかしら?」
「はい、もちろんです」
「それから、新君」
「はい?」
大家さんに腕を掴まれ引き寄せられる。
咲良に聞こえないような小さい声で大家さんが話し始めた。
「新君、咲良ちゃんとはうまくやってるの?」
「は、はい。それなりには」
「あなたたち若いんだから、今のうちにやれることはやっておきなさいよ」
「やれることと言いますと……?」
「それはあんた……やれることよ!」
「は、はぁ」
大家さんにバシッと背中を叩かれる。その顔にはニヤッとした笑みが浮かんでいた。
俺はそれに精一杯の苦笑いで返した。
「それじゃ、足を止めて悪かったね」
「そ、それじゃあ」
俺たちが部屋に入るまで、大家さんはニヤニヤと笑っていた。
「ねぇ、新君。大家さんになんて言われたんですか?」
「え、いや、特には……」
大家さんが言っていたこともぼんやりとは理解したので、咲良には話しづらい……。
「ふーん。まぁ別にいいですけど?」
同居生活は残り一週間。
その一週間で、俺たちはどれだけの思い出を作れるのだろうか。
お久しぶりです!
かなり間が空いてしまいましたが、無事に第40話を投稿することができました!
更新をお待ちくださっていた方、本当にありがとうございます。
久しぶりの更新ということで、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
ここから物語も終盤です。
これからも不定期とはなりますが、更新していきたいと思いますので、もし良かったら応援よろしくお願いします。




