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第36話 待望の遠足②

 いつの間にか隣の市に入っていたバスは、予定通り40分ほどで、最初の目的地である博物館についた。


 バスを降りてすぐに先生からの諸注意があり、1時間後にバス集合ということになった。


 原則、それぞれの班ごとでの行動になるようで、皆思い思いの方向へ歩いて行った。


「よし、俺たちも行こっか」


 うちの班も正樹君を中心に、とりあえず色々見てみようということになった。


 この博物館は県内でも有数の広さを誇るそうで、彫刻から絵画、甲冑や刀剣まで幅広く扱っているらしい。もちろん来るのは初めてなので、少なからず楽しみにしていた。



 早速中に入ると、大きな日本画が俺たちを迎え入れてくれた。


「すごーい! おっきぃー!」


 小学生みたいな感想を残した暖愛さん。心は完全にこの後のバーベキューに向いているようだ。


 反対に俺は、目の前に広がる荘厳な風景画に目を奪われていた。どうやら地元の画家の作品らしい。名前は聞いたことがなかったが、その繊細な仕事に思わず目を奪われた。


「あらたぁー? 置いてくよ?」


 暖愛さんのよく通る声がホールを響く。


 気がつくと三人は先の方へスタスタと歩いていた。


 平日の早い時間ということもあり、他のお客さんもまばらで、比較的歩きやすかった。本当はもっと一つ一つをじっくりと見たかったのだが、1時間という制限もあり、許されそうもない。



「うわー、これ何だろ?」


「甲冑だね。戦国期にここら辺を支配してた人の家臣のものかな」


「へぇー! 新って歴史詳しいんだ」


「まぁ、そこそこかな」


 そこそこと言ったものの、小さい頃は家にあった時代小説を片っ端から読んでいたので、勝手に知識がついた。娯楽が少なかった俺にとって本を読んでいる時間は大切な息抜きだった。


「……うぅぅ、まだ私が知らない一面があったなんて」


 咲良が一人で唸っている。なんだかんだ言って初めてちゃんと話してからまだ2週間しか経ってない。互いに知らないことがあっても当たり前だ。


「そういえば、咲良は歴史得意なんだっけ?」


「うーん、あんまりですね。どっちかというと世界史の方が」


「そっか、歴史って言っても色々あるもんね」



 その後もかなりのハイペースで展示品を見て周り、あっという間に1時間が経ってしまった。


「思ってたより楽しかったなー!」


 今日はより一層テンションが高い暖愛さんがバスに戻ってきて大きく伸びをする。


「ね、新君の解説もあったし」


「そんな俺なんて……」


 解説なんて大層なものじゃない。ちょっとした補足だ。


「でもでも、今日はこれからが本番だよ!!」


 暖愛さんが分かりやすくギアをもう一段階上げた。そう、これからバーベキューするキャンプ場まではバスで15分くらい。そこから自由時間なので、極論あとはほとんどお遊びみたいなものだ。



 予定通りの時刻にバスは博物館を出発し、段々と上がってきた皆のボルテージをキャンプ場まで運んで行った。


「うわっ、本当にすぐなんだね」


「本当ですね、もう着いちゃいそう」


 咲良と適当な雑談をしていたら、キャンプ場の看板がチラチラと見え始めていた。


「よーし、いっぱい食べて動くぞー!」


 恐らくこのクラスで一番このバーベキューを楽しみにしていたであろう暖愛さん。いかにもアウトドア感漂う性格は期待を裏切らない。



 バスが着くと、さっきと同じように諸注意がある。火はどうやって起こすだの、班単位で行動するだの、クマとかシカとか気をつけろだの、大事な連絡もなされ、遂に――


「じゃあ、あとは各班で楽しめよー、解散!」


 先生の合図で皆がそれぞれの拠点とする場所を選ぶ。


「よっしゃ、まずは火おこし!」


 調理班である正樹君と咲良中心で準備がなされていく。


「えーと、まずは炭を並べて、その間から着火剤を……」


 火をつけた着火剤を火バサミで投げ込み、少し放置。時間がかかるものだとは知っていたが、食べ物を焼けるようになるにはまだまだかかりそうだ。


 その後みんなで何して遊ぼうかなどと話していると、炎が大分静かになって、パチパチと音を立て始めた。


「よし、扇ごうか」


 一人一個支給されたうちわでパタパタと風を送る。これで炭に火が移るらしい。


「結構疲れるね」


 普段あまり運動しない俺にはこれだけでも重労働だ。正樹君が炭を追加し、段々と全体に火が広がった。


 ここまでで30分。これで早い方らしい。恐るべし、火おこし。



 キャンプ場の職員の方からもオッケーサインが出て、遂に火の準備が整った。


「じゃあ、早速お肉から!」


 お肉からと暖愛さんは言っていたが、俺たちの買い出しによるお肉と野菜の比は9:1ほどなので、逆に野菜の方が貴重という状況に陥っていた。まぁ、いいんだけど。


 ジュウゥゥ……、バチッ!


 お肉が焼ける音が俺たちの胃袋をノックするように、急にお腹が空いてきた。


「いやー、やっぱお肉は正義だね、正義」


 完全に調理班に任せた暖愛さんが、折りたたみ式の椅子に体を委ねぼんやりとお肉が焼けるのを見つめている。


 お腹が空いたんだろうなぁ……


 そんなことを考えながら、俺のお腹も人のことを言えないくらい轟音を立てている。


 あー、早く焼けないかなぁ……!

 いつも本作品をお読みいただきありがとうございます!


 さて、5月ももうすぐで終わってしまうということで、私ももうすぐ、『受験生』として忙しい時期を迎えることとなりました。


 向き合いたくない現実から、小説の世界へと逃げ込みたかったのですが、なかなかそんなわけにもいかず......


 という訳で、これからこの作品は不定期更新という形になります。今までも不定期更新ではあったのですが、更新頻度がより落ちてしまうと思われます。楽しみにしてくださっている方、申し訳ありません。


 勉学、体調面との両立を考慮し、今回の判断をさせていただきました。長々と語らせていただきましたが、何卒よろしくお願いいたします。



 絶対に完結まで走り切りますので、それまで気長に見守っていただけますとありがたく思います。これからも『地味メガネ女子の彼氏のフリをしたら、隠れ美少女と同居することになった』とよろしくお願いします!

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