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第34話 暖愛さんの恋愛相談

 カフェに入って、二人ともアイスコーヒーを頼む。


 よく晴れた日曜日。遠足の買い出しを終えた俺と暖愛さんは先週と同じカフェに入っていた。


「それで相談って?」


 席に座ってすぐ、早速だけど話題を振ってみる。


「こんなの人に相談するの初めてなんだけどさ……」


 さっきまでの元気はどこに行ったのか、急にモジモジしだした暖愛さん。


「でも、圭はこの手の話得意だと思うから」


「この手の話というと?」


「まぁ、恋愛相談、みたいな?」


 恋愛相談。あまり予想していたかった言葉だが、先週は正樹君からもこれ系の相談を受けたので、やっぱり相当なやり手だと思われてるのかもしれない。


 ついこないだ人生初の彼女ができたとこなんですけどね……


「まぁ、とりあえず話を聞こうか」


 ちょうどきたアイスコーヒーにガムシロップを入れながら、暖愛さんが話し始める。


「あのさ、5組の早乙女(さおとめ)(はやて)って知ってる?」


「あぁ、名前は」


 早乙女颯。いかにも爽やかそうな名前の通り、顔もクールに整っていて、女子からの人気も高い。とはいえ、特に関わりのない俺が彼について知っているのはこれくらいで。


「実は……告白、されちゃって」


「そのー、早乙女君に?」


「そういうことです」


 モジモジ感がさらに増した暖愛さん。男子からの人気も高いはずなのだが、あまりそういった話題を聞くことはない。


 高嶺の花過ぎて近づき難い。これが共通認識なのかもしれない。話してみると優しい普通の女子なんだけどな。まぁ、時々距離感バグってるけど。


「それで、俺に相談というのは……?」


「実は、こういう告白を受けるの初めてで、その、オッケーしていいのかなって」


 暖愛さんは、もはやモジモジという擬音が頭の上に浮かんでそうなくらい顔を真っ赤にしている。アイスコーヒーを飲みながら、ゆっくりと答えを考える。


「うーん、暖愛さんはどうなんですか?」


「どうって?」


「そのー、早乙女君のこと、好きなんですか?」


「好き、なのかな?」


 小さく笑った暖愛さん。確かに好きって難しい。ちょっと質問を変えてみるか。


「早乙女君とは前から接点あったんですか?」


「うーん、一回か二回、友達と一緒に遊んだくらいかな」


「それで告白されたのは?」


「先週末。凛と麻耶と、あと男子何人か誘って遊んでたんだけど、そこに颯君がいて」


「そこで告白されたと」


「うん、突然だったから私も考えさせて欲しいって答えて」


 そして、俺に相談した、と。


 やっぱよくある恋愛相談って感じだけど、俺に相談しなくても……


「ねぇ、新はどう思う?」


「うーん、結局は暖愛さんが早乙女君のこと好きかどうかなんだろうけど、って最初に戻ってきちゃったね」


「新はさ、もし私が颯君と付き合ったらどう思う?」


「どうって、まぁ、暖愛さんが決めたことなら祝福できる、かな?」


「……そっか」


 一瞬暖愛さんの顔に寂しさが差し込んだ気がした。引き攣る表情を無理に伸ばしたような笑顔を向けて、暖愛さんはわざとらしく声を上げて笑う。


「うん! 分かった。ありがと」


「ごめん力になれなくて」


「ううん、話聞いてもらえただけで嬉しかったよ」


 やはり少し表情が憂いを孕んでいるように見えるのは気のせいだろうか。



「あのさ、俺からも聞いていい?」


「うん? 何?」


 そう、俺が果たさなければいけない任務。


「正樹君のこと、どう思ってる?」


 正樹君に暖愛さんの気持ちを探って欲しいと言われていた。


「うーん、どうって、友達かな?」


 あまりにもストレートに聞きすぎたかもしれないな。


「いや、俺から見たら二人めちゃくちゃ仲良い感じに見えてさ」


「まぁ、仲はいいかな〜。一緒にいて楽な方かも」


「うん。それは俺も同感」


 と、いかにも普通の会話という感じで話しているが、告白の返事を相談されてすぐ、他の男子のことどう思ってるなんて聞くもんじゃないよな。


「で? なんでそんなこと聞くの?」


「いやー、ただ気になっただけだよ。なんならもっと深い仲なのかなって」


 少しだけ踏み込んでみる。あまりに露骨に言っちゃって二人の距離感を壊すことだけはしてはいけない。


「深い仲って、そんなんじゃないよ。正樹は私のことなんとも思ってないだろうし」


 やはり正樹君の好意は暖愛さんには伝わってみたいだ。


 あまりにも卓越したコミュニケーションスキルのせいで自分の気持ちを完全に隠せてしまう正樹君と、実は恋愛経験がほぼ皆無の暖愛さん。


 確かに放置しといたら一生二人の関係は進展しないかもしれない。


「そうかな? もしかするかもよ?」


「うーん、正樹とそういう関係になるのはあんまり想像できないかな」


 やばい、このままじゃ絶望的な情報を正樹君に渡すことになる……!


「……まぁ、でも、正樹から言われたらアリかもなぁ」


 ぼそっと呟いた暖愛さん。聞き逃しませんよ?


「って、颯君への返事保留にしてんのに何変なこと考えてんだろ、私」


「ねぇ、やっぱり告白断ったら?」


「いきなりどうしたの!?」


 困惑、といった表情でこっちを見ている暖愛さん。


 これはデカい収穫だ。もしかしたら正樹君に頑張ってもらえればあり得るかもしれない!



 その後はたわいもない話をして、俺の日曜日最大イベントは終わりを告げた。

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