第22話 意外な相談者
同居生活2週間目。
まだまだ慣れないことも多いが、先週と比べるとこの生活が染み付いてきた気がする。
憂鬱な月曜日はいつもと変わらずにやってきた。まぁ、先週までとは全く違う状況だが。
「おはよー、咲良」
月曜日ということもあり、過去一寝起きが悪い咲良を起こしながら、朝の準備を進める。
朝ごはんを二人分用意するのも、大分手際が良くなってきた。咲良もこの部屋での暮らしで慣れてきたのか、俺に段々と気を遣わなくなってきた。良いことだよな……?
二人で歩く通学路も、会話が弾むようになってきた。特定のトピックについて話すわけでもなく、思いついた事をただ話すだけ。それでも、何故か心地良い。
「おはよう、正樹君」
「あっ、おはよ! 今日は俺の方が早かったみたいだね」
最近は俺たちが先に着くことが多かったが、今日は正樹君が教室で出迎えてくれた。
「咲良さんもおはよう」
「あっ、おはようございます!」
咲良も正樹君とは相当接しやすくなったみたいで、元気に挨拶を返す。
相変わらず学校では大人しくしている咲良だが、俺以外にも徐々に心を開くようになってきた。家での咲良を学校でも出して欲しい気持ちもあるが、他の人に彼女のあの姿は見られたくない。
あれ? 俺も独占欲が出てきたかも……?
いつも通りの学校生活。そんな風に思ってたら一気に状況が変わったのは丁度1週間前。
今日も特に何かあるわけでもなく、つまらない授業とただひたすらの内職で午前中が過ぎていった。
今日は暖愛さんが他の女子たちとお昼を食べるそうで、正樹君も他のクラスメイトに誘われてどこかに消えていった。
という訳で、今日は咲良と二人きりのお昼だ。
二人で教室で食べていると、なかなかに目立つので今日はあの場所に行こうかな。
咲良を連れて外に出ると、俺たちはあのベンチを目指す。先週は辛島と高橋に絡まれていた咲良を助ける(?)結果になったが、それまでは俺のお気に入りの昼食会場だった。
「あっ、ここでいつも食べてたんですね」
「そう、最近は一人じゃなかったから来てなかったんだけどね」
ここで誰かとお昼を食べるのは初めてだ。
二人で弁当を開く。いつも通りの冷食尽くしの弁当だが、咲良は今日も美味しそうに食べてくれる。
昨日の映画でもそうだったが、まだまだ知らない彼女の好みがたくさんあるんだろうな。でも、焦らずに。あと3週間も同居生活が続くのだから。
「そういえばさ」
「はい?」
「ずっと気になってたんだけど、いつまで敬語なの?」
ついつい距離を縮めようと動いてしまう。焦らないようにと考えてたところなのにな。
「うーん、これ癖みたいなものなんですよね」
「まぁ、無理にとは言わないけど、タメ口でも全然良いからね」
「ありがとう……ございます」
どうやら、こればっかりはすぐにとはいかないようだ。
昼食を終えて教室に戻ると、もう正樹君が戻ってきていた。
「ねぇ、新君、今いい?」
正樹君がいつにもなく神妙な顔をしている。いつも明るい彼には似合わない顔だな?
「うん、いいけど? 何かあった?」
「あのさ、今日の放課後予定ある?」
「まぁ、暇だけど……」
「じゃあさ、ちょっとだけ相談に乗ってくれない?」
「相談?」
「うん、無理だったら今度でも良いんだけど」
「今日で良いよ。予定もないし」
「本当! やった! じゃあ、よろしく」
正樹君ほどの人が俺に相談したいことって一体何なのだろう。
力になりたい気持ち半分。彼が持つ悩みを知りたい不純な好奇心半分。という感じで引き受けてしまったが、本当に俺に務まる内容なのだろうか。
午後の授業も同じように時が過ぎるのを待つ時間だった。テストがチラついてきたので、先生たちも少し気合いが入っているように見える。
だからと言って俺のやる気が増える訳でもないので、どうしようもないのだが。
「じゃあ、行こうか。正樹君」
「ありがと、新君」
相手が正樹君ということで、咲良もすんなりと受け入れてくれた。この前の暖愛さんの時は大変だったが、今回は少しばかり遅くなっても大丈夫そうだ。
やはり、いつもの帰り道とは逆の方向へと歩みを進めていく。
正樹君が入っていったのは近くの公園だった。ベンチに腰掛けると、遊んでいる小さな子供たちが目に映る。
「ごめんね、時間とってもらっちゃって」
「ううん、全然。それで相談って?」
「おっと、早速本題行く?」
「別に、アイスブレイク入れても良いけど?」
「いや、話すよ」
一気に正樹君の表情が固くなる。そんなに深刻なことなんですか……?
「実はさ、今日相談したかったのは恋愛のことなんだけどさ」
あら、いきなり専門外。恋愛なんてものは人生で一度もしたことはない。まぁ、周りから見たら相当なやり手だろうが。入学して1ヶ月で彼女作ってんだからな。
「実は、好きな人がいてさ――」
「ほう?」
「誰か分かるよね……?」
「うーん、暖愛さん?」
「うん、その通り」
おっ、当たった。いくら鈍感な俺でも薄々感じ取っていた。もはやもう付き合ってんじゃないかと思ってたくらいだ。
「それで相談ってのは?」
「あぁ、そうだったね。実は新君に協力して欲しいことがあってさ」
どうやら本当に力になれるか怪しくなってきたみたいだ。まぁ、とりあえず内容を聞いてみるか。




