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第14話 嫉妬しました

「じゃあ、食べようか」


 午前の授業も終わり、昼休みに入った。


 俺たち四人は机を向き合わせて、それぞれの弁当を開こうとしていた。


「いただきます」


「「「いただきまーす」」」


 正樹君は家から持って来たものを、そして俺と咲良と暖愛さんは俺が作ってきた弁当を開く。


「うわっ、何これ。これ本当に新が作ったの?」


「うん、そうだけど?」


「すごっ! 私絶対無理だわ」


 ちなみに、俺と暖愛さんの弁当はほとんど同じようなものを入れているが、咲良のは冷食の種類をいくつか変えて、違う人が作ったように見せている。


 さすがに同居しているのがバレるのは避けたい。



「うーん、美味しい。店出せるね、これ」


 暖愛さん、それは冷凍食品です。


 さすがに全部手作りというわけにはいかなかったが、なかなかなクオリティのものは作れたんじゃないかと思う。


「お口にあったならよかった」


 ちらっと咲良の方を見ると、小さく親指を立てている。こっちも味に問題は無かったようだ。



「そういえばさ」


「どうした、暖愛?」


「咲良ちゃんってどこら辺に住んでるの?」


 暖愛さんの突然の質問に咲良が固まる。


「あっ、それ俺も気になってた」


 正樹君も興味があると言わんばかりに体を前のめりにする。


「あっ、えっと……」


 ここで助け舟を出すなら何がいいかな?


「南町の方だったよね?」


「はっ、はい」


「南町か。あっちの方あんまり詳しくないんだよね〜」


「私も」


「そういえば、暖愛の家もまだ知らないかも」


「えっ、嘘! 正樹来たことなかったっけ?」


「ないよ。あったら覚えてるし」


「それもそうか」


 うん、うまく話題がずれてきた。咲良と目で会話しながら、不自然なところが生まれないようにする。


 彼氏のフリをしつつ、同居の事実を隠そうとしているわけだから、結構体力を使う。



「ねぇ、新、明日もお願いしてもいい?」


 弁当を一通り食べ終わった後、暖愛さんが両手を合わせて頼んできた。


「まあ、別にいいけど」


「本当! やったー! 今月、もうお小遣い使い切っちゃってさ」


「暖愛、お前先月も財布かつかつって言ってたよな」


「うるさいわね、JKは色々とお金がかかるのよ」


 正樹君のツッコミを上手く流しつつ、暖愛さんがいつもの女子たちのグループに戻っていった。


 彼女はグループの中心人物だし、もちろんクラスでも一目置かれる存在だ。


 それなのになぜ、俺たちと絡んでいるのだろうか。正樹君と仲が良いっていうのも一つの理由だろうが、わざわざ俺たちと一緒にいる時を狙って近づいて来ている気がする。


 まぁ、こんなことを考えても答えが出るわけではないので、これくらいでやめておこう。



 午後の授業は、昨夜の睡眠不足も重なり、ほとんど記憶が残っていないが、運良く指名されなかったので、何事もなく終えることができた。


 帰りのHRも終わり、荷物を全て持った咲良が近づいて来た。


「新君、帰りますよ」


「ねぇ、また怒ってるよね?」


 明らかに不機嫌そうな顔をしている咲良。とりあえず学校を出てから話を聞くか。


 俺たちが校門をくぐると、珍しく咲良が話し始めた。


「私、嫉妬しました」


「いきなりどうしたの?」


「やっぱり暖愛さん、新君のこと好きですよ!」


 どうしてこうなるんだ……?


「だって、今日の顔見ました? 料理男子かっこいいって顔してましたよ?」


「かっこよくないでしよ」


「いいや、かっこいいです」


 何だこれ?


 互いに恥ずかしくなりながら、その後も押し問答が続いた。


「だから、新君は学校では私以外と喋っちゃダメです!」


「それはさすがに……」



 アパートについてからも、咲良はずっとご機嫌斜めだった。


「咲良、そろそろ許してくれない?」


「……いいですよ。もう暖愛さんと話さないって約束するなら」


「それは無理でしょ。遠足もあるわけだし」


 俺の答えに、咲良がまたムスッとした顔をする。そんな顔しないでくれよ……


「新君、私のこと嫌いですか……?」


 咲良がまた不安そうな表情を浮かべながら聞いてくる。


「嫌いじゃないよ」


「じゃあ、好きってことですか?」


「好き、なのかな?」


 曖昧な返事になってしまう。しょうがないよね。


「分かりました。暖愛さんと話してもいいですよ。その代わり、私も絶対に意識させてみせますから!」


 咲良が握り拳を見せつけてくる。


 なんか、結局昨日と同じようなことになってません?


「それじゃ、今日も一緒に寝てくださいね」


 予想はしていたが、恐らくここから毎日、同じベッドの上で寝ることになるのだろう。


 まだまだ同居生活は始まったばかり。


 ここから1ヶ月弱この生活が続くとして、俺は理性を保てるのだろうか。


 自分の気持ちに正直になれ。そんな言葉が重くのしかかる。多分、咲良は俺のことが好きだ。


 そして、多分俺も――


 でも、まだそんな段階じゃない気がする。


 これも、自分に都合の良いように捉えているだけなのかもしれないし、ただただ、俺に勇気がないだけなのかもしれない。


 だから、今はまだ、咲良に振り回されていよう。そうすればきっと、いつかは答えが出るはずだ。

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