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第13話 いつもより少し違う朝に

「ぁあ、もう朝か」


 いつもより少し早く目が覚める。昨日は遅くまで寝れなかったので、いつもより瞼が重い。


 ただ、今日も弁当を作らなきゃいけない。


 頑張って身体を起こそうとした時、背中の後ろで寝ている咲良の姿が目に入る。


 そうか、一緒に寝ちゃったんだもんな……


 なんか、昨日一日分の疲れが、一気にのしかかって来た気がする。あまりにも展開が早過ぎた。



 気を取り直してキッチンに立つ。


 もう弁当作りも慣れたものだ。俺一人分だったら、冷凍食品のオンパレードなのだが、一人食べてもらうならもうちょっと工夫したいところだ。


 今日は暖愛さんの分もなので、いつもより更に一つ多い。それでも、手際よくこなすことはできそうだ。



「よし、完成」


 何ならいつもより早く作り終わった。決して手を抜いたわけではないのだが、まぁ、これもまた料理が上達したと言ってもいいだろう。


 こうは言っても、半分以上は冷食で作ったのは卵焼きと適当な炒め物だけだ。



「咲良、起きれそう?」


「ぅーん?」


「朝だよ?」


「もぅちょっとだけぇ……」


 ふにゃふにゃと言葉を発する咲良を、またかわいいと思いながら、俺は自分の準備に取り掛かる。


 毎朝の忙しい時間帯に準備が重ならないように、色々工夫はしているつもりなのだが、やはり朝はバタバタと家を出ることが多い。


 別に急ぐ必要もないんだけどなぁ。



 一通り準備を終えると、咲良は変わらずベッドの上で丸くなっていた。


「咲良、そろそろ起きて」


「んぁ、起こしてください……」


「しょうがないなぁ」


 だんだんと自分に甘えてくれるようになって嬉しく思う一方、彼女の魅力に引き込まれていく自分が怖い。


 昨日は特にそうだった。だから、彼女の言葉を遮ってしまった。


 いつかは向き合わなきゃいけない。そんな感情が俺の心の中で渦を作る。抗おうとしても着実に引き込まれて、気がつくと抜け出せなくなる。


 でも、そこに入ってみたい自分もいる。



 咲良の体を起こす。軽い。軽過ぎやしないか?


 少し不安になりながら、咲良に朝の挨拶を済ませる。咲良も昨日はすぐには寝れなかったのだろう。いつにも増して眠そうに見える。


「朝ごはん、食べる?」


「はい、食べます……」


「先に準備する?」


「はい、準備します……」


 恐らく、まだ目が覚めてないのだろう。ポカンとした顔を浮かべながら、ゆっくりと洗面所に向かった。


 結局、先に準備をするようだ。



「お待たせしました」


 10分ほど経つと、すっかりいつもの咲良になって現れた。


 席に着いて朝ごはんを食べ始める咲良。


「あのさ、咲良」


「どうしました?」


「咲良って、学校と家だと、どっちのキャラが素に近いの?」


「うーん、今は家ですかね」


「『今は』?」


 朝食の場でするような話題じゃないかもしれないが、一度気になったら、最後まで聞かないと満足できない。


「はい、前まではここに帰って来ても、部屋でずっと一人って感じだったんです。だから、学校と同じ感じだったんです」


「そうだったんだ」


「でも、今は新君がいるので。毎日ちょっとはしゃぎ過ぎちゃってるくらいです」


 てへへと笑っている咲良を見ながら、俺がいるからという言葉がすごく心に残った。


 俺がいるから。嬉しいが、俺は本当にそんなな大層なものなんだろうか?


 まぁ、咲良がそう思ってくれてるなら、それ以上はいらないが。


「だから、最近は学校でもちょっとずつ自分の感情を出せるようになってきて。前みたいに大人しくしてると、またああいうことに巻き込まれちゃうかもですし」


 ここ二、三日はあまり絡んできてないあの二人も、またいつ仕掛けてくるかわからない。


 それでも、以前より堂々としたい方が、危ないことに巻き込まれる抑止力にはなるだろう。



「じゃあ、行きますか」


 いつも通りの時間に家を出る。


「あぁ、二人とも、いってらっしゃい」


「大家さん、行って来ます」


「行って来ます」


 大家さんとの毎日の挨拶を交わしながら、学校までの道を歩く。


 昨日の帰りは地獄のような空気が流れていた二人の間の距離も、昨日のこともあって、ほんの少し縮まった気がする。



「おはよー」


「正樹君、今日も早いね」


「まぁね」


 教室に入ると、正樹君と定石のような会話を交わす。咲良は相変わらず、自分の机に一人でいるが。


「おっす、新」


「あぁ、暖愛さん」


 少し遅れて暖愛さんもやって来た。


「そういえば、お弁当、お昼でいい?」


「え! 本当に作って来てくれたの!」


「まぁ、約束したからね」


「さすが新! 今日はみんなでお昼食べれそうだね」


「そうだね」


 昨日暖愛さんとの距離が近いと咲良に注意されてしまったので、今日は気をつけているつもりだ。


 しかし、教室の向こう側から刺さるような視線を感じるので、頑張って話を切り上げようとする。


「じゃあ、またお昼ね〜」


 やっとのことで暖愛さんとの会話を終了できた。また咲良の方に目を向けると、ぷいっと目を逸らされてしまった。


 やっぱり、人間関係って難しい。


 なんか最近、正樹君のすごさをよく気付かされている気がする。


 まぁ、俺も頑張るか。

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