マリーの部屋の絵画
六十八、マリーの部屋の絵画
ディーモンクラブの幹部であるマリーの部屋は淡い色の壁紙で、レースのカーテンがある可愛らしい部屋だった。
今日は任務も無く、マリーはドレッサーの前でネイルを塗っていた。
ネイルを塗り終えると彼女の部屋にかけられている額縁に入った絵画の前に立った。
その油絵には魔王の姿が描かれている。
「あーあ。早く魔王様に会いたいわ。絶対強くてかっこいいはずよ」
マリーは予言上のまだ見ぬ魔王に憧れていた。
そこへ彼女の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」
マリーが答えるとジェイドがドアを開けて入って来た。
「マリーさん、これから、一緒に筋トレに行かない?」
「いいわね」
「やったー。マリーさんに色々教えてもらっちゃおう」
「いいわよ。それと筋トレの後は食堂でたくさん食べましょう」
二人は楽しそうにトレーニング室に向かった。
その頃、マニは訓練場でやっと今日の訓練が終わってほっとしていた。
「ああ、今日もやっと生き延びた…」
汗を布で拭きながら、武具の片付けをしていた。
毎回、ステファノの指導が厳しくてくじけそうになる。
早くディーモンクラブの拠点から隙を見て逃げ出したいな。
夜中にこっそり脱走しようと部屋を出ると、だいたい通路で誰かに会ってしまって、その都度言い訳しながら自分の部屋に戻る日々だった。
迷っただの、夜中におなかがすいただのその場しのぎの言い訳づくりには苦労した。
マニから少し離れたところで、ステファノとサイラスがまだ手首の角度が…と剣の持ち方について熱く語っている。
そこへテュールが訓練の様子を見に現れた。
「テュール様!お疲れ様です。」
サイラスという事務職なのに戦闘訓練をしたがる少年が瞳を輝かせてテュールの元に駆け寄った。
「ぜひ、剣を教えてください!」
サイラスは90°のお辞儀をした。
マニは無言で固まった。
えっ、今から?もう訓練の時間がやっと終わったのに…。
ショックでつい、握っていた木刀を床に落としてしまった。
ステファノもテュールに近づいていく。
「俺もご指導お願いします」
そう言ってステファノも頭を下げた。
二人の熱心な向上心にテュールは口元を緩めた。
「よかろう」
なんで嬉しそうに応じるのかな?
「良かったな。マニ」
ステファノが先輩として気遣ってくれているのだろうか。
マニの方を振り向いて声をかけてきた。
「よ、よろしくお願いします」
疲れた体を気合で動かし、マニはテュールに頭を下げた。
これは断れる空気ではない。
早く帰りたいな。
夕暮れの中、ラフェは岩場の上から双眼鏡で廃墟を眺めていた。
隣にはシアンとラムダが立っていた。
「あれがディーモンクラブの拠点なのか?」
「そうだよ。マリーちゃんの気配がする」
「そうか?」
「私には全然わかりません」
シアンとラムダは不思議そうにラフェを見ていた。
「ところでラフェさん、あの拠点には何人くらいいるのですか?」
「戦闘員だけで5、60人はいると思うけどー」
ラムダの疑問に気楽な感じでラフェが答える。
「多いですね。私の体力じゃとても持ちません」
「どうしたものか」
三人はとりあえず、岩場を降りて野宿をすることにした。
拾って来た枝を集め、暗くなる少し前に火をつけて三人で囲んで座った。
疲れたのかすぐにラムダは横になった。
シアンが途中の川でくんだ水を飲みながらラフェに話しかけた。
「そういえば、お前、魔王降臨計画について何か知ってるか?元大将軍なんだろ」
「うーん?なんだったっけな」
ラフェはすぐに思い出さないようである。
目の前では焚火がはぜている。
「俺の国では湖の魔女が南の地に魔王が降臨するって予言して外してたけどな。フフッ」
シアンは思い出し笑いをこらえきれなかった。
「そういえばムドラー女王の側近が魔王の降臨について話していたのは聞いたことあるな。確か、魔王の魂は天国から落ちる時に魂と力に分けるから、あとで合わせるとか?」
「分離しても後で合成できるのか!おい、それはまずいだろ」
シアンはすぐに地面に丸まって眠るラムダの方を見た。




