元大将軍ラフェ
六十七、元大将軍ラフェ
泊まっている城内の客間に戻ったシアンはソファに腰かけているラムダに話しかけた。
「ヘロン王国のやつら、何だかおかしくないか?問題を解決するために動く気がないというか」
「確かに状況が厳しいというだけでは納得いきませんね。それにしてもジャックさんが行方不明なのが痛いです。ヘロン王国の情勢なんてあまり詳しくないですから」
「俺も西の方は以前来たことあるけど、山脈近くの町しか見なかったからな」
シアンはローテーブルをはさんでラムダの向かいに腰かけた。
「ところで、ラムダ。魔王の正体に心当たりはないのか?同僚に堕ちたら魔王になりそうなやばい天使はいたのか?」
「魔王になりそうな上級天使たちはいましたね」
「そうか。魔王を降臨させるったって、こちら側から打てる手なんてあるのか?」
「無いですよ。上級天使などは強大な力を持ち危険なので魂と力を分離されつつ落とされますからご心配なく」
「じゃ、魔王のことは放っておいていいか。ここにいても仕方ないからディーモンクラブに突撃してマニを連れていったん国に戻ろうぜ」
パイプ役のジャックがいない今、ヘロン王国の上層部を当てにもできないので二人はこっそり窓から外へ出た。
物陰から物陰へ身を隠しながら移動し、塀を飛び越えた時に声をかけられた。
「ねえ、僕も連れてって!君たちディーモンクラブに行くんだよね?」
明るい声のトーンでラフェが話しかけて来た。
街中で歩きながらラフェは止まることなく話し続けている。
「僕ならディーモンクラブの拠点の大体の方向もわかるよ。女王様たちは会議ばかりで全然何もしないから当てにならないなって思っていたんだよ。早くマリーちゃんにまた会って今度こそ口説きたいし……」
「そうかよ」
シアンは適当に流しながら話を聞いた。
マニのいそうな場所がわからない今、ラフェに頼るのが一番早い。
「あーあ。戦場にサイラスを置いてきちゃったから、大将軍から歩兵に格下げされちゃった。最悪だよ」
「それは仕方ないでしょう。彼は王族だったらしいですから。」
ラムダがたしなめる。
「それはそうなんだけど、ああするしかなかったんだよ。ディーモンクラブの幹部たちに囲まれて増援も間に合いそうにないのに、サイラスは亡くなったお兄さんのためにも最後まで戦うって言うこと聞かないしさ。仮面が割れた素顔のマリーちゃんが可愛すぎるしで……。サイラスが無事だと僕は信じているよ!」
「二人には友情があったのですね。すみません、泣ける話は苦手で……」
ラムダが目元を押さえた。
今の話泣ける要素あったか?
ラムダが歩き疲れたと言うとラフェは荷車を店で買った。
その荷車にラムダに乗るように言い、ひいて歩き始めた。
「女王様からは無期限謹慎命令が出て暇だったんだよ。一人で行くのも不安だし、君たちがついてきてくれてよかったよ」
「そうでしたか」
気をよくしたラムダはラフェの話に相槌を切らさなかった。
やがて町を出て、荒野をディーモンクラブの拠点があるらしい方向に向かって進み始めた。
ラフェの愚痴を延々と聞かされながらシアンは歩き続けていた。
その頃、ヘロン王国の城の薄暗い隠し部屋にムドラー女王の側近の老人の5人が集まって水晶玉を覗いていた。
「ラフェたちは行ったみたいじゃのう」
「どう転ぼうとわしらの思惑通りじゃ」
「もう時間はほとんど残されておらぬ」
「そうじゃ」
「今は待つのみじゃ」




