出撃
六十三、出撃
やがて季節が巡り、降り積もった雪が解けた。
マニは吹雪もおさまり、カルカッシの町に戻りジャックたちと合流したいと思ったが、詳しい位置関係がわからないことに気づいた。
だいたいの方向は連れて来られた時にわかっていたが、西の国々の地理を調べて来なかったため遭難するリスクもあった。
今すぐ飛んで逃げ出すほど追い詰められてもなかったので、しぶとく居座り機会を伺うことにした。
数日後、マニは会議室に呼ばれた。
そこにはジェイドとステファノが背筋を伸ばして座っていた。
「あ、マニ君が来た」
ジェイドは笑顔で手を振ってくれた。
隣に座っているステファノはそれを黙って横目で見ていた。
やがて部隊長のテュールが到着し、今回の任務の説明が始まった。
ディーモンクラブは近くのヘロン国と勢力争いをしているらしい。
長年、魔王降臨の是非や領土などを巡って争い続けているという。
今回、テュールの部隊がヘロン王国のある町を手に入れるために出撃することになった。
もちろんマニは他国の戦争の傭兵なんかしたくないのだが、他の町に行くなら逃亡するチャンスになる。
一人でこの組織を崩す見込みが無いし、マニは戦闘中に隙を見て逃げようと思っていた。
「前衛はステファノとマニに任せる。ジェイドは後方支援だ」
「はい」
三人は声をそろえて答えた。
「私は後方で指揮をとる」
テュールがそう言って説明が終わった。
後ろで見張られているなら混戦してから逃げるしかないな。
「マニ君も明日は頑張ろうね!」
食堂での夕食時、無邪気なジェイドの励ましを受けたマニは後ろめたさを感じながらも、脱走頑張ろうと心の中で思った。
自室に戻ったマニは以前クェンティンがいる西の山脈に行ったときは平和そうに見えたのを思い出した。
西の方も広いし色々あるのかな。
次の日、戦闘服を着たマニたちは早朝から朝焼けの中、廃墟を出て、荒野を馬に乗って移動した。
移動中は朝日が眩しかった。
そして昼頃には森に着いた。
森の前に馬をつないで、数人の構成員を残し、テュールの部隊は森の中を進んだ。
1時間ほど森の中を歩くとヘロン王国の町が見えて来た。
町を囲む兵の周りには見張りが数人立っていた。
「僕、飛べるので先に行ってもいいですか?」
「だめだ、敵に見つかる」
ステファノに正論を言われ、マニは引き下がるしかなかった。
逃げるチャンスが……。
「突撃」
テュールの指示でステファノとマニは剣を構え、町に向かって走りだした。
見張りの兵はすぐに気づいて止めようと、剣を振り上げ叫んだ。
「ディーモンクラブが攻めて来たぞ」
ステファノの顔は知れ渡っているらしく、すぐに援軍が押し寄せた。
マニは切りかかってくる兵士たちに必死に応戦した。
「来ないでくださーい」
炎の魔法くらいはマイナーではないだろうと踏んで、剣でガードしながら炎を自分の周囲に出し、兵たちを追い払おうとした。
「なんだ。こいつ新たなメンバーか!」
兵士たちが混乱したのも一瞬で兵の向こうから大柄の鎧をまとった剣士が現れた。
強い人来た!
マニは泣きそうになりながら、ステファノの様子をちらりと見る。
ステファノは兵士たちを次々斬り捨てていたが、彼の方にも杖に座ったベテランそうな魔術師が近づいてきていた。
「ちっ」
それを見たジェイドの顔は曇っていた。
詰んだなあ。
「マニ君、気を付けて。その人強いよ」
後ろではジェイドが結界を張りながら待機している。
もし、僕が逃げたらステファノだけで彼女を守れるのかな?
いやいや、だめだ、今は自分のことに集中しないと。
この二人は今までも戦いを生き残ってきたんだから大丈夫だ。
マニが考えている間にも大柄な剣士は大振りの剣を振ってきた。
逃げなきゃ。
マニは思い切り力を込めて炎を剣士に放った。
炎に包まれた剣士が少しぐらついたが、退かずに一撃を放った。
次の瞬間、マニの横腹に衝撃が走って体が吹っ飛んだ。
スローモーションで視界が回転し、ジェイドの涙をこらえる顔が見えた。




