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竜のマニ  作者: ぼんにゃん
3章
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博愛の医者の反応速度

五十八、博愛の医者の反応速度




川を渡る港についたマニたちは客船に乗り込もうとしていた。

突然、シアンに声をかけられた。


「おい、マニ。妹が来てるぞ」

「え?」


振り返るとココアが立っていた。


「お見送りに来てくれたの?ありがとう」

「私も行きたい。ラムダ様に魔法をまだ習ってない」

「そうか、ココアもわがまま言えるようになったんだね」


マニが感動で泣きそうになっていると、シアンに肘でつつかれた。


「甘やかすのはいいけど、これは正式な任務だからわがままはだめだぜ」

「うん。そういうことだから今回は連れていけないんだ。後でラムダに頼んでみるから……」

「わかった。帰る」


妹はイケメンには素直なんだ……。

結局、ラムダが荷物から紙とペンを出して、フギンにココアに魔法を教えるようにと手紙を書いてくれた。

なんて優しい悪魔なんだろうか。


「ありがとうございます」

「いつ帰って来られるかわからないし、我慢ばかりもストレスになるからね」


ココアはその紙を丁寧に折って、大事そうにポシェットにしまった。


シアンが自分の従者にココアを領地まで送らせるように指示した。

彼のわがままに慣れているのか、反対していた従者は結局折れた。

従者たちは空を飛べないので帰りはゆっくり陸路で行くのだろう。


「シアン、そっちだって従者たちがいないから何でも好き勝手できないからね!ジャックさんがいるんだから」

「そっか。監督役も兼ねているのか……」


そうだ、皇帝に後日報告がいくだろうから、色々気を付けよう。




出航した船は無事、川を渡り、対岸にたどり着いた。

一行は上陸し町に着いた。

これからは山脈を迂回しカルカッシに向かう予定だ。


「ここからは次の町まで徒歩で移動します」

「そんな!きつい。体力温存したい」


ジャックの提案にラムダは不満を述べた。


「荷馬車は借りられないんですか?」

「すみませんが、予算に限りがありまして」

「それなら、私が準備してきます」




ラムダは町の通りを歩きながら、声をあげて宣伝を始めた。

町の人々が噂をしながらその様子を見ている。


「私はさすらいの博愛主義の医者です。どなたでもお支払いさえいただければ怪我を治療します!お値段は100万ミョウからです!!」

「高いな」


だが、最先端の医療にはそれなりの対価が必要なのだろう。

すると一人の住民が目の前に走りながら飛び出してきた。


「すみません。お医者様、うちの主人を治してください!」




町の高級住宅地の中でも一番大きなレンガ造りの御殿に案内され、主人の怪我を治したラムダは報酬に大金を受け取り、それで荷馬車を借りて次の町へいくことになった。

川沿いの町を出ると、荒野が広がっていた。

出発してしばらくすると、川沿いの町がある方角から馬をとばして来た武装集団に荷馬車は囲まれてしまった。

雇った御者は慌てて馬車を止めた。


「おい、お前ら。金を全部よこせ」


顔を布で隠した男たちに刃物を向けられ脅される。


「わあ、盗賊に目をつけられちゃったよー」


ジャックとシアンは腰から下げている剣を取った。

マニは御者と馬の近くにかけより、爪の盾を出現させ、二人を守るように周りを囲った。

荷馬車から降りたラムダが翼をたたんで、空気抵抗を減らした上で、身をかがめると足を踏み込んだ反動で跳び上がった。

そのまま、盗賊たちに次々と殴りかかり、抵抗する間も無く地に倒れていく。

速い!

その一つ一つの無駄の無い動きが速すぎて目で追うのがやっとだった。

相手が反応する前に、死角から防具の弱い所をついて一人一人殴り倒していった。

自分があれだけ速く動けたとしても完全に見切りながら、正確な攻撃を繰り出すのは無理だなと思った。




「へー、やるなお前」


シアンたちが剣をしまった。

ラムダの服の長い裾から光る金属製のような物が見えた。

おそらく手に小さな武器を持っていて、それで威力を増したのだろう。


「疲れた」


そう言ってラムダは荷台登り、横になって丸まった。

マニは初日から盗賊に狙われ、先が思いやられた。


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