作戦会議
五十七、作戦会議
都への空の旅は結局、マニが竜の姿に戻りラムダを背中の上に乗った。
ラムダは持久力と体力があまりなく、飛んでいくと指定の日にちに間に合うか危なくなったためだった。
乗り物として使われる悪い予想が当たったなと思う反面、最強無敵だと思っていた存在にも弱点があったことに少し安心した。
この国には竜の貴族がいることは一般に知られたことなので、正体をさらしたところで大騒ぎにならなかった。
それに強力な兵器を背負っているようなものなので、狙われても大丈夫だろうという安心感があった。
「この世界は乗り物がまだまだ少ないな」
「うーん、馬車なら出せるけど、南端からだとこの間の竜巻の被害で、まだ街道の修復が追い付いてないところもあるし……」
「空を飛ぶやつはある?」
「うん、前に見たのは人力で帆みたいなのを回して飛ばしていたのは見たことあるけど」
前にレオが乗っていた乗り物だ。
「体力的に厳しいかな」
「だよね」
夜に宿屋に泊まる時に町に寄った時、景色や料理や動物を見て、ハイテンションで喜ぶ姿を見て、本当は色々なところに旅行に行きたかったんだなと思った。
数日後、帝都にある城についた。
謁見の間で二人は皇帝から話を聞くことになった。
「久しぶりだな、カニンヘン辺境伯。隣の悪魔は初めて見るな」
「お初にお目にかかります。ラムダと申します。ヒーラーとして着いてきました。」
「それは頼もしいな」
長い髪をスカーフで縛ってまとめたラムダがまともな受け答えをしていてほっとした。
「先遣隊の調査によると西の国々で魔王降臨の実験を行っているらしいのだ。その資金集めに我が国に違法な薬物が売られている。輸入品の中に隠して入ってくるのでなかなか防ぎきれないのだ。西の国の一つカルカッシと同盟を組んだので協力して、違法薬物作りを止めさせてほしい」
「わかりました」
マニが答えると、皇帝の隣に控えていた老人が一人の騎士を紹介した。
「この皇帝直属の騎士がお前たちの任務を手伝うことになっている」
「ジャックと言います。よろしくお願いします」
マニはジャックと握手を交わした。
明日、帝都を発つことになりマニたちは城の客室に泊めてもらうことになった。
部屋に来た秘書にこれからの予定を説明するということで、会議室に呼ばれた。
案内された扉を開けると、先ほど謁見の間で会った老人とジャックが席に座ってテーブル上の地図を眺めていた。
他にシアンと従者も座っていた。
「シアン、なんでここにいるの?」
「俺も呼ばれたんだよ。久しぶりだし、とりあえず握手しようぜ」
シアンが近づいてきて手を差し出した。
彼の手を取ると急にシアンが手を握ったまま腕をひねって来た。
「痛たたっ!」
なんとか腕を振り払う。
「もう、負けず嫌いがすぎるよ?」
「あははっ」
シアンは笑いを抑えられないようだった。
「すみません。今から会議を始めたいので席についてください」
「はい」
ジャックに注意されてしまった。
シアンと関わるといつもこうなのだ。
会議では船で河を渡って西の国に着いたら、素性を隠して行動するように言われた。
ラムダは各地で怪我人を治して回る博愛精神のある医者の設定で行くらしい。
僕はその助手ということにした。
シアンとその従者は大道芸人で行くと意気込んでいた。
ジャックは旅のガイドということにするらしい。
西に着いたらまずはカルカッシを目指すことになった。
作戦会議は終了し、マニは部屋に帰って休んだ。
翌日、港へ向かう荷馬車の中でまたもやシアンに絡まれた。
「なあなあ、その悪魔。お前の生き別れの姉ちゃんか?」
「違うよ。もともとカニンヘン領にいた悪魔だよ」
マニは正直ラムダが男か女かさえ、はっきりわからなかった。
姿を変えることが得意なのだ。
性別だって自由自在に変えている可能性はある。
ユーエンに至ってはなんとなく雄かなと思うぐらいで確証はない。
それにしても皇帝の言っていた魔王降臨のための実験が気になる。
サンサが予言を外した魔王の降臨はこれから起こることなのだろうか。




