死刑執行
五十一、死刑執行
「それではゲームスタート!」
ユーエンはどこからか大きなカニンヘン家の家紋入りの旗を取り出し、大きく振り出した。
フギンは小型のナイフを、ムギンは鎖鎌を手にマニたちの方へ向かって飛んで来た。
「ココアちゃん、バリアで時間を稼いで」
そう言ってヘレンがスカートの下のガーターベルトから小型ナイフを数本取り出す。
「……」
レオは目のやり場に困った。
「バリアよりも吹き飛ばした方が早い」
そう言ってココアは杖を掲げ、飛んでくる二人に向かって光線を放つ。
しかしその光線は二人に届く前に霧散した。
「そんな……」
あっけに取られているうちにムギンが投げたナイフを反射的に後ろに飛び退いて避けたが、フギンの放り投げた鎖がココアの首に巻き付いた。
杖から手を放し、両手で鎖を外そうとするが巻き付いた鎖は離れない。
「どういうことだ?」
「この土地は魔力が少ないの。だから他の土地で使うようないつも通りの魔法を使うことはできないわ。特に広範囲攻撃魔法なんてすぐに拡散して薄まってしまうから」
ヘレンは自分のナイフを浮かせた周りに魔術を発動させた。
半透明のオレンジ色に光る線が空中に引かれていく。
「この地では少ない魔力で効率の良い魔法を発動させる精密な魔術を編まなければならないのよ」
ムギンが再び投げたナイフがココアの的に当たる。
「はい、ココア選手失格でーす!竜の血が入っているとはいえ、力を発揮できなきゃだめですね」
ユーエンが一人で実況していた。
「とどめだ」
的に当たったのにも関わらず、フギンがココアめがけて鎌を振り上げる。
このままじゃ殺される。
見かねたレオが腰の収納ケースからダガーを引き抜き、助けに行こうとした。
間一髪でマニが飛び出し、両手で引っ張って鎖を引きちぎり、ココアと一緒に地面を転がって鎌を避けた。
「ごめんなさい」
「僕の方こそボーっとしていてごめん」
上からナイフが降り注ぎ、マニの服は破れてボロボロになった。
「お前たち、早く奴らを葬り去るのだ」
メネラウスが前で盾になってくれているタンの陰から叫んでいる。
「メネラウス様、竜に大きな傷が残っては価値が下がってしまいます」
「構わん。瀕死だろうが死刑の直前に回復魔法で傷を消せば良い」
「はっ」
再びフギンとムギンがマニに襲い掛かった。
二人の武器に炎の糸が絡みついた。
「熱っ!」
熱伝導率の高い金属製だったらしく、二人は熱さに耐えかねて武器を落とした。
「ふうん。魔力の精密な制御か……」
二人に魔法を放ったマニはなんとかうまくいったと安心していた。
「くそ!タン、こうなったらお前が全員やれ」
メネラウスが命じるとタンはモップのような毛玉が宝物殿から運んで来た槍を受けとる。
毛玉は従業員にはカウントされていないようである。
彼が片手に突進すると、その速さで風が起き、髪がなびき、周りの木々の葉が揺れる。
中庭にあるテーブルセットの上を飛び越え、マニを空いている拳で殴り倒し、そのままヘレンの方へと向かう。
ヘレンは全く動じた様子を見せず、レオの指定した軌道通りに魔法でナイフを4本飛ばす。
4本は全て的の中心に当たった。
それでも勢いが止まらない槍を持ったタンをレオが体を張って何とか方向をずらし、ヘレンにぶつかることを回避した。
「侵入者チームが勝利してしまったので、従業員チームを一人死刑にしまーす」
ユーエンは大きな弓を構える。
メネラウスは走ってムギンの後ろに隠れた。
「おい、こいつを死刑にしろ」
そう喚いて彼女を杖で前に押しやった。
弓矢はムギンの心臓の方を向いて引き絞られる。
哀れな女は黙ってうつむいている。
次の瞬間、メネラウスは背後から胸を貫かれ血を吐いて倒れた。
その背後にはレイピアを握った天使が立っていた。
最初にマニたちが見た祈りを捧げる天使像が動いてメネラウスを背後から刺したのだ。




