害する雨
三十八、害する雨
不思議な夢を見たマニはキャスとチャーリーが泊まっている部屋に行き、相談することにした。
昨日見た夢はキャスの伝達魔法で見せたものだった。
彼の記憶と後から聞いたサンサの話を合わせて制作したドキュメンタリーだとういう。
「今、君にサンサのことを知っていてほしかったのです。彼女の長い人生の中で抱えるものは大きくいのです。あの頃から私は成長していますが、彼女の拾った体は全く変わっていないでしょう。あれも永久の時を生きることを定められた彼女の宿命なのです。今回は村を襲った獣の手がかりを調べるのに集中してもらって、無理してサンサのことに深いりしなくてもいいのですよ」
「僕はサンサに出会ってここまで来られたので、シアンを止めたいです。シアンのお父さんをこの世界に帰す方法も他にないか探したいです」
「……わかりました。一緒に頑張りましょうと言いたいところですが、今朝から体調不良で私は西へは向かえないのです」
「キャス様、毎日忙しくて疲れていましたからねー」
チャーリーが困ったように肩をすくめる。
マニはチャーリーと二人でサンサのいる所へ向かうことになった。
チャーリーは詳しい場所と行き方を教えてもらっているという。
キャスはこの宿場町の医者に診てもらうそうだ。
空を飛び続け、大きな川を越えると景色が草原から山に変わっていった。
山の中腹にいくつかの建物が見えた。
「あれが魔女様のいる小屋のはずです」
二人は小屋の前に降り立った。
急いでドアをノックすると、少しして老人が出て来た。
「こんにちは、僕はサンサの知り合いのマニです。サンサはどこにいますか?」
「サンサちゃんなら隣の工房に孫と魔法道具を作ってますよ」
「ありがとうございます」
返事をして、急いで工房へと向かう。
工房の古びた扉を開けると中にはサンサとクェンティンが作業着で炉に薪をくべている所だった。
「あれ、マニ君。どうしてここへ?」
サンサが立ち上がってこちらを見る。
まだ無事だ、間に合ったと思った瞬間、背後から人影が飛び出しあっという間にサンサの銅を横に切り裂いた。
「……つ。シアン⁈」
マニとサンサの間は振りぬいた剣を握ったシアンが立っていた。
確実に斬られたはずのサンサの傷は衣服ごと再生され、何事もなかったように元に戻っている。
「物理攻撃は効かないか」
「シアン君、理由はわからないけど、私を殺すつもりなのね。マニ君の後についてこんな遠くまで来てくれたのだから」
そうだったのか。
今は後悔よりもシアンを止める方が先だ。
マニは背後からシアンにつかみかかる。
もみ合いながら工房の外へ何とか引きずりだした。
「逃げるんだ、サンサ」
マニは叫んだ。
その隙にシアンに蹴り飛ばされてしまった。
フラフラと工房の外に出て来たサンサは目が虚ろで異様だった。
「私を終わらせてくれるのね。そんなことができるのか、楽しみ」
「抵抗しねーならこっちも都合がいい」
シアンは懐から黒い宝石のついた短剣を取り出した。
「あれはおそらく呪いの剣です」
チャーリーが蹴られて傷む肋骨を回復魔法で治してくれた。
マニは立ち上がり、シアンに向かって爪の剣を飛ばす。
しかしそれは長剣によって弾かれてしまった。
「長距離攻撃のできるお前の方が有利だが、俺もあれから魔法を身につけたんだぜ」
次々と飛ばす爪の剣を跳躍しすべてかわしながら、シアンが呪文を唱え終えると辺り
が暗くなり、一帯に雨が降り始めた。
冷たい雨を浴びるとマニの力がどんどん抜けていった。
「マニさん、この雨は浴びた相手の魔力を奪います」
急いで工房の中に避難したチャーリーが叫んでいる。
「くそっ」
爪の剣を飛ばすもまるで遅くシアンに届く前に落ちてしまう。
雲の上に出れば雨は当たらないが、視界が遮られてしまうし、工房の中からでは死角が大きい。
どうすれば……。




