神官チャーリー
三十六、神官チャーリー
サンサのいる西方は遠いため、キャスはいったん神殿に準備に戻った。
マニもいったん家に戻り、町長に状況を説明し、各村長に獣の出現に注意するよう伝えてもらった。
次の日の朝、キャスはドレイク領の戦力としてレオを、旅に同行させるヒーラーとして神殿の神官を連れて来た。
「初めまして、マニさん。私はチャーリーです。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
二人は握手をした。
チャーリーはマニよりおそらく少し年上くらいの褐色の肌をした青年だ。
「今回の旅の同行の報酬は100万ザイです」
そう言ってチャーリーは笑顔でマニに向かって手を差し出した。
「ええっ?」
「冗談です」
冗談だったのか、きっと場を和ませようとしているんだ。
キャスは生暖かい目で二人を見守っているだけだった。
レオとココアが見送りに来てくれた。
「若!行ってらっしゃい!」
「うん、領地とココアを頼んだよ」
「お嬢のことは任せてください」
若って、レオは本当に元貴族だったのかな……
まあ、彼の人生は色々あったんだろう。
「お兄様、気を付けて」
「ありがとう、ココアもね」
町の人たちに別れを告げ、三人は飛び立った。
途中、水場で休憩しながらひたすら西へ飛び続けた。
少しあたりが暗くなった夕暮れ時に宿場町についた。
ダークキャンドルの会が無くなってから、西方の国と帝国は交易が盛んになり、宿場町を発展していた。
「今晩はここに一泊しましょう」
「師匠、ゆっくりしていていいんですか?今もサンサが狙われているかもしれないのに」
「焦る気持ちもわかりますが、先は長いので休むことも大切ですよ」
「そうですよね」
「それにサンサのいる詳しい場所はクェンティンを家まで送った私にしかわかりません。シアンがそう簡単に見つけるとは思えません」
「はい」
以前、迷っていたシアンを思い出し、そういえば彼は方向音痴なのかもしれないと自分を落ち着かせた。
宿屋でキャスたちと別の部屋に泊まったマニはどっと一日の疲れが出て、ベッドの上で転がっていた。
ノックの音がしてキャスが部屋に入って来た。
マニは急いで起き上がる。
「お休みのところすみません、マニ君、サンサについてお話しておきたいことがあります」
「お願いします!」
「彼女は湖の魔女と呼ばれますが、その正体は水の精霊ウンディーネなのです」
「水の精霊って、師匠もそうなんですか!」
「いえ、私は水の精霊と植物の精霊の間に生まれた子孫です」
「そういうことがあるんですね」
「それはともかくウンディーネたちの中でもサンサは四大精霊の一人として、闇の神に選ばれ、永い時を生き続けているのです」
師匠の話によると、サンサは自分の意思では制御できないほどの強い力の加護を受けているという。
そのため、ほとんどの攻撃は通用せず、結果襲ってきた相手を返り討ちにしてしまうということだった。
「マニ君は神殿で来る旅の途中でそのようなことはありませんでしたか?」
「うーん。あっ」
以前、荒野で強盗に襲われた時もサンサは結局無事だった。
まさかあれも加護の力だったというのか。
彼女はワープができるのも、運命が彼女を生かそうと最終的には空間を捻じ曲げてしまうことが原因なのだという。
戦争中に近くに居合わせたシアンの父親たちはワープの際にできた空間の歪みに消えたと考えられるらしい。
マニたちが住む世界にもわかっているだけで、他に2つの世界があり、そこに彼らが飛ばされた可能性があるという。
「昔は他の世界とつながっている場所がいくつかあったんですよ」
「僕、他の世界のことは全然知らなかったです」
キャスは窓の外を見た。
「今夜は雨が降りそうですね。では私は部屋に戻ります」
一人残された部屋でマニは再びベッドに転がり、色々考えていた。
雨が降り出し、そのザーザーという音を聞いているといつの間にか眠ってしまった




