お茶会
三十四、お茶会
マニたちは帝都からドレイク領へと飛びながら帰って来た。
今回は旅の荷物があったので、レオを連れて飛ぶことはできず、彼は陸路で向かい遅れて合流することになった。
北の森の近くの復興中の町フラッタスにマニとココアは住むことにした。
小さい領内で唯一の町だった。
領地内は周りに農村部の村がいくつかある程度だ。
領内の各地で挨拶周りをした後、町の外れの2階建ての木造の建物にマニとココアは暮らすことにした。
そこに住む人々はマニたちを歓迎してくれた。
町の人々は自警団を結成していたので、一緒にパトロールをすることになった。
繁忙期は農村部の仕事を手伝うこともあった。
何かルールを決めたり、話し合いがある時は町の集会所を利用した。
時々、神殿からレオが来て領地運営について教えてくれた。
レオは町の集会で謝罪した後、神殿の仕事の合間に復興の手伝いも頑張っていた。
最初は警戒していた人たちも火をつけろと命令したのはウルピーだったことも広まり、少しずつ打ち解けていった。
ベクトル領の領主の屋敷にシアンは呼び出されていた。
普段、シアンは領地が広くなった地域に慕ってくれる部下たちと住み、鍛錬をしながらその地域を守っていた。
前領主であった父が行方不明になってからは、今はシアンの叔父が領主である。
何かしら言い訳をつけて呼び出しを断っても良かったが、屋敷のある地域の様子も気になるので久しぶり行くことにした。
屋敷に通され、お茶会の席に案内される。
席には叔父、叔母、従兄弟たち2人が座っていた。
テーブルの近くに眼鏡をかけた一人の見知らぬ男性が立っていた。
「誰だ、こいつ?」
「お初にお目にかかります。執事のカールと申します。シアン様、よろしくお願いいたします」
カールはそう言ってお辞儀をした。
「まったく、お前は本当に口の利き方がなってないな。兄さんの教育が悪かったんだろう」
「まあまあ、今に始まったことではないわ。それでね、カールはね、あの東の華流の魔術師でもあるのよ」
叔母は言う東の華流の魔法の歴史は浅いものの、現在では一番メジャーな流派だった。
二人の話を聞き流してシアンは席につく。
テーブルには紅茶と焼き菓子が並べられていた。
紅茶を一口飲むと舌が痺れた。
「おじさん、また紅茶に毒が入っているぜ」
「そうかい。カール、紅茶を新しい物に取り換えてやってくれ」
「かしこまりました」
カールが飲みかけの紅茶を下げて、厨房へと向かった。
「はあ、本当、あんたって母親に似てしぶといわね。まあ、義姉さんは病気で亡くなったけどね」
「おい!」
「あら、ごめんなさい。間違って毒物を混入させたメイドは解雇するから」
こんなやり取りは何回目だろうか。
従兄弟たちはクスクス笑っている。
だいたい毎回俺の紅茶だけに毒が入っているのがおかしい。
母親譲りの毒の効きづらい体でなければ死んでいただろう。
その体質のことを知らない叔父たちは毎回毒を混入させて来るのだった。
「で、今日の要件は何だよ」
シアンは叔父を睨みつけながら言った。
「君の父である兄さんのことなのだけどね、戻ってくるかもしれないんだ」
「何だって?」
シアンは思わず椅子から立ち上がった。
「結論から言うと、湖の魔女を殺せば帰ってくるらしい。それでお前にその任務を頼みたいんだ」
「……どういうことだ?」
そこへ厨房から新しい紅茶を持ったカールが現れた。
「私から説明させていただきます」
そう言ってカールは熱い紅茶をカップに注いだ。




