謁見
三十二、謁見
マニたちは謁見の間に通された。
玉座には年若い皇帝が座っており、近くには護衛たちがいた。
皇帝の前に一同はひざまずいた。
「キャスタノプシスよ。この度はご苦労であった。これからも、神殿とは良好な関係を保ちたい」
「はい」
キャスよると北の森の神殿勢力はサンサを中心として大きな権限を持ち、独立した自治が認められているらしい。
「そして、マニよ。子爵位を与える。マニ・ドレイク子爵として我に仕えよ」
「はい」
姓も与えられ、帝国貴族の一員となった。
「ココアよ。兄とともにドレイク領を頼む」
マニとキャスは一瞬固まり、お互い横目で視線を交わした。
妹って何ですか?とキャスの叫びの幻聴が聞こえるような気がする。
「はい。兄と共に陛下にお仕えします」
ココアが平然と答え、謁見は終了した。
謁見が終わった後、控室でキャスに詰められたマニはとっさにシアンたちにココアが異母妹だと言い訳したことを説明した。
おそらくそれが誤った情報として伝わったのだと。
「母親が違うと言ったなら、ココアが竜ではなくてもつじつまは合わせられますが……。」
「ごめんね。ココアちゃん」
「私は大丈夫」
その後、マニはお手洗いに行くと言い、控室を出た。
お手洗いの洗面所の鏡の前でマニは座り込んだ。
ココアは出会った頃から他の同じ年ごろの町の子どもたちより、はるかに大人びていた。
幼い頃に親族を亡くした彼女はそうしなければ生きてこられなかったのだろう。
自分の親がいなくなった時より、小さな時期から一人で生きて来たんだ。
そう思うと目頭が熱くなり、涙がこぼれた。
「おい、なにしてんだ?」
背後から声をかけられ、マニは急いで涙を拭いて立ちあがった。
振り向くと、正装したシアンがいた。
「シアン?別に何も」
「……馬子にも衣装だな」
少しの間をおいてシアンがからかってきた。
それはシアンの方がおしゃれだし、ヘアセットも決まってるけど。
「何だよ!」
「やるか?お前」
二人がいがみあっていると、シアンの従者がやってきて何とか場を収めた。
シアンも皇帝に呼ばれて、古城のあった付近の場所をシアンのベクトル家の領地に編入されると言われたらしい。
「ちょうど良かった。お前に紹介したい奴がいるんだよ」
シアンにそう言われ、マニたちは城を出た後、街中の広場へ案内された。
広場の噴水の前に角刈りで体格の良い男がいた。
「レオ⁉生きてたんだ」
とっさにマニはココアの前に出る。
生き延びていたなんて彼は体が丈夫なんだろう。
「こいつがお前に雇ってもらいたいんだって。元貴族だったらしくて俺のことも知ってたし、これから色々役にたつんじゃね?」
「でも、レオはココアに怪我を負わせたんだよ」
そこでレオが頭を下げた。
「俺の妻の入院費用がどうしても必要なんです。どうか俺を雇ってください」
キャスはココアの方を見た。
「彼も仕事だったとは言え、ココアは嫌ですよね?」
「私は平気。回復魔法で跡も残らなかったし」
「良かった。それじゃあな」
シアンと従者たちは逃げるように走り去って行った。
これは押し付けられたんじゃ……。




