焚火
二十八、焚火
マニはあちこちぶつけて打撲や捻挫、骨折までしていたらしい。
目を覚ますとベリータが回復魔法で治療をしてくれていた。
「いたた」
体中が痛くて寝返りもうつことはできそうになかった。
「目を覚ましたわ」
「ありがとうございます。ベリータさんは少し休んでください」
「はいっ」
彼女は上ずった声で師匠に返事をしていた。
あたりは暗くもう夜のようであるが、近くに焚火がたかれていた。
天井を見ると長い枝を組み合わせたものに布がかけられ、仮設の休憩所になっているようだ。
「これは師匠が作ったんですか?」
「いえ。無理矢理働かされていた人たちが近くの農村の人たちだったので、解放してくれたお礼に資材などで組み立ててくれたのです」
「よかった。みんな助かって」
星空の下、焚火の周りで農村の人たちが持ってきてくれたサンドイッチを起きれないマニ以外はみんなで食べていた。
重傷の彼は安定するまでは森の神殿に移動することが難しかったのだ。
ベリータは農村の人たちに謝り、身につけていた宝石を謝罪として渡していた。
いままで見栄にこだわり、お金に目がくらんでいたと反省していた。
レオが乗ってきた飛行物体は設計したクェンティンによると、魔力のほとんどないレオが人力で高速で歯車をまわす動力だったらしく、この中に使える筋力と持久力を持つ人はいないということで、使用を断念した。
「クェンティン君、森の神殿に来て一緒に魔法道具の開発をしてくれませんか?」
師匠が彼を勧誘していた。
「すみませ~ん。自分は故郷のじいじの所にかえりたいので。自分だけは西の国から設計者として連れて来られたんで」
「そうですか。それなら、君の故郷に私のおばさんが教えてもらいにいくのはいいですか?」
「それならいいですよ~」
ココアは師匠におばさんいたんだと思いながら、黙って紅茶に口をつけた。
「司祭様~。いえキャスタノプシス様~私、森の神殿にお手伝いに行きます!」
ベリータが二人の会話に割って入った。
「長いのでキャスでいいですよ。回復魔法を教えてもらえるとありがたいです」
「キャス様。回復魔法の貴重な魔導書もありますのよ、私の部屋に……あの城の壊れた城のがれきを掘り返せば……」
「あ!」
クェンティンが急に声を上げる。
「もしかして、あの重くて大きな本なら~焚火の燃料にしてしまいました~」
一同はパチパチとはぜる焚火を見つめた。
沈黙の中、くっくっくと声を殺してシアンだけは笑っていた。
「もーっ、どうしてくれんのよー!」
その後、怒り狂ったベリータがクェンティンにつかみかかるのを師匠が必死に止めた。




