帰還
一章はここで終わりです。
次回から二章の予定です。
二十九、帰還
一晩たって夜が明けるとマニの怪我も徐々に快方に向かっていた。
魔力も回復し、人型に変身することもできるようになったので森の神殿に帰ることにした。
キャスは遠い西の地域に帰るクェンティンを故郷まで送っていくという。
マニたちは農村の人が牛車を出してくれるというのでそれに乗って帰ることにした。
速度は遅いが怪我を負ったマニとココアの負担を減らすためだった。
神殿を手伝うことになったベリータ、従者と合流したいシアンも同乗することになった。
草原を荷車がゆっくり進んでいく。
ココアは古着の子ども服を譲ってもらったようだった。
荷車の上で日傘をさして座っているベリータが口を開いた。
「ねえ、シアン。これからどうするの?あなた家に帰っても居場所ないんでしょ?」
「あいつら、俺が戻ってきたら驚くだろうな」
シアンは面白そうににやにやしていた。
「あいつらって、誰?」
「叔父一家とその取り巻きだよ」
マニの記憶にある親戚たちは自分をいなくなってほしいとは思っているようには見えなかったので驚いた。
「いっそ出家して、神殿の信者になればいいじゃない。煩わしい跡目争いに巻き込まれることもなくなるわよ」
「うーん。別に貴族じゃなくてもいいけど、こいつの後輩だけは嫌だぜ」
シアンはそう言ってマニの方を指さした。
「指ささないでよ。それに僕、信者じゃないし」
「私たちはまだ参拝者レベル」
ココアはいつの間にか難しい言葉を覚えていたようだ。
その日の夕暮れには牛車は北の森に着いた。
牛を杭につないでから、獣道を歩いて、長い階段を登りきると神殿が見える。
掃除をしていた巫女たちが慌てて呼びに行くと、中からサンサが出てきた。
「マニ君、おかえりなさい」
笑顔で駆け出してくるサンサに向かってマニは言った。
「ただいま」
「マニ君、生きて帰ってくれて本当に良かった」
「サンサさん、もう、この森を狙ってくる人たちはいないよ」
「……本当にありがとう」
涙ぐみながらサンサは僕の傷だらけの手を両手で握ってくれた。
シアンは駆け付けた従者たちに囲まれて照れながらも嬉しそうにしていた。
マニたちは食堂で今までの話をして、ベリータを紹介した。
農村から来てくれた御者係の農村の人は神殿に一泊してから帰ることになった。
シアンも一泊してから従者たちと実家に寄りその後、彼の国の皇帝のいる都に遊びに行くと言って出て行った。
数日後、キャスが帰って来てからは全快したマニの修行はより厳しいものになっていった。
ベリータの回復魔法の賜物である。
魔導書は焼けてしまったが、彼女が記憶している範囲でサンサを始め、神殿の魔術師たちに簡単な回復魔法を伝授しているらしい。
マニは今日も神殿に続く長い階段の駆け上がりダッシュを何セットもやった後、ココアと山中で鬼ごっこをして体力向上に努めている。
フラフラになってマニが石段に腰かけていると、キャスがやって来た。
「マニ君、君が竜だということは広く知られてしまいます。農村の方々、逃亡したダークキャンドルの構成員たちから噂が広まるでしょう。こうなったら強くなって自分の身を守ることは急がねばなりませんよ」
「はい、師匠」
大変なことになってしまったが、まだこれは序の口にしか過ぎなかったのである。
読んでいただきありがとうございました。
これからも頑張ります。




