陽炎
二十、陽炎
扇子からゆらゆらとしたものが立ち上る。
ゆらゆらとしたものはやがて形をはっきりさせていく。
それは無数の蛇の姿となり、こちらに向かい地を這い出した。
「この蛇に咬まれたら最後、毒が全身に回って苦しみながら死ぬのよ」
ベリータは口元を扇子で隠して、目を細めている。
マニは飛んで逃げようとするが、突然あたりが黒い天井に覆われ飛び立つこともできない。
近づく蛇を焼払っても、次々出てくるのでキリがなかった。
ドサッと音がする方を見るとココアが倒れていた。
「ココア!」
もう咬まれて毒にやられたのだろうか。
マニは急にめまいがしてしゃがみこんだ。
まだ咬まれてはいないはずなのに何かがおかしい。
「本当にしぶといわね。私がとどめを刺してあげる」
ベリータが扇子を持つ手と反対側の方の手で杖を握ると、杖の先から鋭い棘が出てきた。
なんで毒蛇がいるのに、わざわざとどめを彼女自身で刺す必要があるんだろう?
何かがおかしい。
マニは力をふりしぼり、蛇たちは無視してベリータの杖をめがけてやっと出した一つの爪の刃をぶつけた。
ガンと音がしてベリータの手から杖が離れた。
「もう」
その隙に扇子を手から強引に奪う。
すると蛇や天井は消え、マニの呼吸も楽になった。
「幻だったのか」
マニがベリータを睨む。
「なんてずぶとい子なの?もう、知らない」
捨てゼリフを残し、彼女は陽炎のように消えていった。
マニは慌ててココアの元に駆け寄る。
「ココアちゃん、起きて」
声をかけるとココアは目を覚ました。
「蛇は?」
「全部、あの女の人の魔法でできた偽物だったんだよ」
「恐ろしい魔法だったね」
ココアは特に異常も無く無事なようだった。
門番たちは全く目を覚まさないようだ。
あのままマニも気を失っていたら、その間に殺されていたかもしれないと思うと本当に恐ろしかった。




