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06 レベリング生活

 早速フォルクは、カティアのレベリングを行うことになった。


「よ、よろしくお願いします、先生」


 カティアがか細い声で言った。


「よ、よろしく」


 フォルクは照れていた。

 先生と呼ばれるのは初めてだったし、カティアの容姿があまりにも眩しすぎた。


――平常心、平常心……。


 フォルクは深呼吸した。

 仕事を受けたからには成功させたい。それに彼女の身の上話を聴いて、力になりたいと思わない男はいないだろう。


「始めるよ」

「はい!」


 フォルクは育成スキル『周回』を発動した。


「わっ、こ、ここは……」


 急に辺りが森に変わって、カティアが驚きの声を上げた。


「エルズベリーの森だよ。スキルで再現されたものだけど」

「ほ、本物みたい……。って、私は森の中に入ったことはないんですけど」


 カティアがベッドの上で言った。


――ベッドはそのままなのか。


 森の中に巨大なベッドがある光景とは、このスキルでしか成し得ないものかもしれない。

 それから数十秒後、いつもの場所からブロンズハウンドが飛び出して来た。


「きゃ」


 カティアは悲鳴を上げたが、フォルクが難なく討ち取った。

 そして経験値を取得すると、


《レベルが上がりました》


 天の声によって、カティアのレベルアップが告げられた。


「え? わたし、もうレベルアップしたんですか?」

「したよ」


 レベル[1]のカティアなら、ブロンズハウンド一体の経験値でアップしても不思議ではなかった。


「や、やったあ!」


 喜んだカティアがベッドから身体を起こそうとしたが、


「あう」


 失敗してしまった。


「だ、大丈夫かい?」

「ご、ごめんなさい。わたし、筋力が全然なくて……。自力でなかなか起き上がれないんですけど、レベルアップしたから、もしかしてと思って……」

「レベルが[1]上がっただけでは、そんなに変わらないよ」

「そうですよね……。でも、ありがとうございます! 今までずっとレベル[1]だったのに、こんな簡単にレベルアップできてしまうなんて、何だか夢のようです」


 カティアは興奮しているようだった。


「先生のおかげです。本当に、本当にありがとうございます」

「い、いや、それほどでも……」


 フォルクは目を合わせられなかった。


「よ、よし! それならドンドン行くぞ!」

「はい、先生!」


 こうして、フォルクとカティアのレベリング生活が始まった。



 **



 一日目。館内の案内など、住み込みで働くための準備があったため、スキルを数回使って終了した。レベルは[3]だった。

 二日目。本格的なレベリングを開始した。とはいえ、スキルで再現された森であってもカティアは消耗してしまうようで、都度の休憩が必要だった。結果として、この日はレベル[4]で終わってしまった。

 三日目。この二日間のダメージが祟って、カティアは寝たきりだった。レベリングはできなかった。

 四日目。カティアは元気になった。本人曰く、一日で回復するとは思わなかったそうで、レベルアップの効果があったと嬉し気だった。この日は休憩を挟みながらレベリングを行って、[6]まで上がった。

 五日目。レベルが上がって必要な経験値が増えてきている。終日レベリングを行ったが、[1]しか上がらなかった。

 六日目。レベルが上がると、カティアが抱き着いてくるようになった。体力がついてきた証拠だが、その度に家宰のグリエルが咳払いをする。寿命が縮みそうなので、自重してもらいたい。

 七日目。レベルアップの速度は落ちてきたが、このペースなら一ヵ月でレベル[10]に到達しそうだ。レベル[10]になったら何のスキルを賜りたいか。将来の夢について、カティアと語らうことが多くなった――。

 そんなこんなで、レベリングを開始してから一ヶ月が経過した。


「先生、ありがとうございます!」


 カティアが両手を広げて、飛び込んで来た。フォルクはへっぴり腰で受け止めた。


「ごほん」


 執事のグリエルが咳払いをした。

 フォルクは生き残りをかけて、カティアを自身の身体から引き離した。


「お、おめでとう、カティア。レベル[10]になったけど、どこでスキルを賜るかは決めたのかい?」


 騎士や建築士など一部の職業を除いて、ほとんどのスキルはレベル[10]で賜ることができる。


「やっぱり、治療スキルを賜りたいです。病弱な人たちの力になりたいから」

「そうか。うん、良いと思うよ」


 治療スキルなら、レベル[10]で賜ることができる。ただし、治療の対象が傷なのか病なのか、はたまた精神になるのかは分からなかった。


――願わくば、病の治療スキルを賜りたまえ。


 血色の良くなったカティアの笑顔を見ながら、フォルクは神に願った。

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