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07 決意

「ありがとう、フォルクくん!」


 ゲルト侯爵は何度も礼を言って、フォルクの肩を叩いた。

 その隣には、元気になったカティアが寄り添っていた。

 一ヶ月のレベリングで、カティアはレベル[10]まで上がった。フォルクはレベル[20]まで八年もかかったのだから、高速と言って良いだろう。


「ひとまずは東方の領地に戻って、そこから時計回りに帝国を一周するつもりだ」


 と、ゲルト侯爵が言った。

 外の世界を知らないカティアのために、ゲルト侯爵は休暇を取って旅行を計画していた。

 ところがカティアは、


「フォルクさんに恩返しをしたい」


 と言って、旅行に行くのを渋っていた。

 これを聞いたゲルト侯爵は、この世の終わりかというような顔をしていた。あまりにもいたたまれなかったので、フォルクは助け船を出した。


「気持ちは嬉しいけど、せっかく元気になったのだから、いろんなところに行ってみた方が良いよ」

「じゃあ、フォルクさんも一緒に来てください!」


 これを聞いたゲルト侯爵は、この世を滅ぼそうとするかのような形相をしていた。命の危険を感じたので、フォルクは鄭重にお断りをした。


「今回は親孝行だと思って、水入らずで行った方が良い」

「……わかりました。フォルクさんがそう言うなら」


 少し不満そうながらも、カティアは頷いた。

 ゲルト侯爵の顔が、ようやく優しい父親に戻った。


「でも帰ってきたら、全身全霊で……その、ええと……」


 カティアは言葉を探していた。フォルクは嫌な予感がした。


「ご、御奉仕するので、どこにも行かないで待っていてくだ――」

「フォルクくん、ちょっと良い――」

「楽しんで来てくださいね!」


 いろいろな意味で危険を感じたフォルクは、明日に向かって転進したのであった。



 **



 自宅に戻ったフォルクは、颯爽と寝台に寝転んだ。その表情には、満足げな笑みが浮かんでいた。


――このスキルも悪くないかもしれない。


 フォルクは充実感を覚えていた。騎士の位を剥奪され、泣きそうになっていた頃が嘘のようであった。

 働きながら八年もかけてレベル上げをしたのだから、騎士になりたいという想いが弱かった訳ではない。

 しかし、フォルクは思い出していた。「貴族の義務を果たせ」とは、騎士であった父ファルゼンの口癖だった。それを行動で示し、父は戦場に散った。

 そんな父の生き様に憧れて、フォルクは騎士を目指した。騎士になることは目標であって、目的ではなかった。貴族の義務を果たす方法は他にもあるのだ。

 フォルクは新たな夢に向かって、歩き出そうとしていた。

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