これが最後のチャンス!
最終目的地・ベネット。
魅惑の町ベネットでテルファーと二人っきり。
ロマンチックに行こうとしたがテルファーはどうやらもう我慢の限界らしい。
でもだからってファンタジーの神の許しもなく強行するつもりか?
コンプラ様だって黙ってないだろう。
「ほらカズ…… 」
いつになく優しく誘うテルファー。つい興奮してしまう。
でもダメだよ。初めてで屋外はいくらなんでもハードルが高過ぎるよ。
「いや…… 無茶言うなよ。真昼間にこんなところで? 」
まだ心の準備ができてない。そもそも何をやるかイマイチ聞かされてないのに。
テルファーが勝手に進めるんだもんな。どうしよう。もう逃げたくなったぞ。
「うるせえ! いいから文句言うな! これが最後のチャンスかもしれないんだ」
そう言うと茂みに隠れて服を脱ぎ始める。大胆で恐れ知らず。
爺さんの教えを守れば邪魔が入らないのはもう二人とも理解している。
でもこれはさすがにまずいんじゃないか? 最後のチャンスは間違いないが。
ウジウジしてどうしても決めきれない。ここに来てだから相当だな。
それとやっぱり邪魔が入らないと燃えないし雰囲気もで出ない。
どうしても超積極的なテルファーを受け入れられない。
こう言うところがよくないんだろうな。分かってるんだけどさ。
でもこれはやっぱりファンタジーだから。
「ほら行くぞ! 」
「待ってよテルファー。まずは手順を踏もうよ」
大人っぽかったかな? 僕だった多少は成長してるのさ。
大体テルファーはそればっかりで大事なことを見失ってるんだよな。
こう言うのは相手の気持ちが大事でしょう。
「ははは! 古風な奴だな。よしだったら早く言え! 」
恥ずかしいのか面倒なのかテルファーはおかしなテンション。
それだとこっちがやり辛いんですが。
告白か…… 突然のことだから気の利いた言葉などまったく思いつかない。
頭が真っ白。ただ固まってしまう。情けないな。
「おいおい固まるのは体全体でなくていい。一部でいいんだよ」
おかしなことを言う。どうしたんだろう? 我慢できないのか?
強烈な下ネタを挟まなくたっていいじゃないか。
「テルファー。今までありがとう。もうお別れだと思うと辛いし悲しいよ」
テルファーが男っぽいところもあり愛情よりも友情が勝る。
僕の望みはただテルファーのすべてが見たかっただけ。
テルファーはそれ以上を求めるけど僕はただ手を繋ぐ程度でよかったんだ。
おかしいな。今になって怖気づいているようだ。
「おい何を言ってやがる! 好きじゃねのか? 」
もはや脅しだ。でも事実は事実としてきちんと言わないと伝わらない。
「好きだよ。今だって変わらない」
「一つになりたいんじゃねえのか? 」
「なりたいよ。でも僕には自信がないんだ…… 」
つい正直に答えてしまう。と言うか揺れ動いてるが正しいんだろうな。
「お前は最低だよ! ここまでされて何も感じないのか? 怖気づきやがって!」
テルファーの挑発にもう我慢の限界。
「僕は怖気づいてない! ただこんなところでさ…… 」
「もう時間がねえって言ってるだろう? 馬鹿野郎! 」
一歩も引かないテルファーについ流される自分がいる。
「もう分かったよ。テルファーってば強引なんだから」
ついに折れてしまう。
「おいおい折れるなよな。よしカズ勝負だ! 」
「望むところ! 」
こうして男と女の戦いが始まる。
「ほほほ…… どうやら始まったらしいの。いやお二人さん構わんでくれ。
私は通りすがりの神。決して覗きが趣味な訳ではない。
続けるんだ。コンプラ様にも目をつけられてないようだしの。
こっちも何かと忙しい。心配して様子を見に来たがどうやら問題ないようだ。
では誰に構うことなく戦うがいい。それが勇者の生き様」
格好つけておかしなことを言い去っていく心配性の爺さん。
では邪魔者も消えすべての問題が解決した。
もはや僕たちが結ばれない理由はない。
「カズ。ほら早く」
「いやいや激し過ぎるって」
こうして二人は茂みで最後の挨拶を交わす。
レベルアップ!
カズがレベル15に一気にジャンプアップ。
テルファーもレベル15に。
カズは竜人として覚醒。羽が完成し飛空能力を得た。
テルファーは品位が向上した。
ガサガサ
ガサガサ
二人っきりを楽しんでいたところにいきなり怪しげな音。
どうやら隣の隣の茂みから何かが動き出したようだ。
「おい覗きだ! 誰かいるぞ」
テルファーが叫ぶがどうも様子がおかしい。
大体昼間っから堂々と覗く奴などいないさ。
恐らく僕たちより前にいたんだろう。
でも何で? とにかく困ってるみたいだから助けてやるか。
「大丈夫? 大丈夫ですか? 」
恐る恐る手を伸ばすと引っ張られる。どうやら本当に困っていたらしい。
「危ねえぞカズ! そいつに触れない方が…… 」
「きっと茂みに押し込まれたんだと思う」
「ありがとう。助かったよ」
感謝の言葉を述べるその声に顔に格好には覚えがある。
うん? どこかで。いや忘れるはずがない。
だってこの人は僕たち家族の幸せを奪った張本人。
忘れようと思っても忘れられるはずがないんだ。
「まさか王子? 王子なのですか? 」
「済まんな愚民よ…… ってカズか! 」
茂みから引っ張り出して王子を無事に救出。
「王子はここで隠れんぼでもしていたと? 」
「バカを抜かせ! 悪人共に連れ去られてここに隠されたんだ」
「あれは昨日の事。国王の代わりにベネットへ。朝目覚めると護衛が倒れていた。
急襲があったのだろう。逃げる暇もなく連れ去られた。
待ち合わせまでここに隠れてろと。
そいつらはお前たちが来たから慌ててその場を離れた。
きっと奴らは金で雇われただけの半端者。
大切な人質である王子の私を置いて行った」
事情を聞いては王子を助けない訳ないは行かない。安全なところまで届ける事に。
「おいお前が例の王子か? 」
テルファーもジャックたちからいろいろ聞かされている。
だからあの時のことも当然把握している。
「何だこの無礼者は? まさか刺客か? 」
王子は狙われてることもあって敏感。
でもここは芸術の街であり魅惑の都市・ベネット。
のんびり楽しく行こうよ。
「どうなんだカズ? 」
「いえ王子。旅を共にする仲間です」
「ああん? 仲間じゃねえだろう? もう夫婦だろうが! 」
テルファー暴走。
「ああ…… だから隠れて…… こっちとしては音のみだから。変だなと…… 」
王子はある意味目撃者。これは口封じした方がいい?
「それでは改めて王子。こちらは旅仲間で恋人のテルファーです」
うわ…… 言ってしまった。でも間違いじゃないよね?
テルファーなど夫婦って言うぐらいだからな。恋人などかわいいもの。
「うむ。男っぽいし度胸もある。いい護衛になりそうだ」
王子はテルファーを高く評価する。
「褒めてくれたぞテルファー。どうだ王子の誘いに乗ってみたら? 」
「バカにするな! お前だってこいつに酷い目に遭わされたんだろう? 」
テルファーの言う通り。父さんのミスで家も工房も没収&取り壊し。
一か月以内に出て行けとのお達しが。
その期限は昨日まで。とは言え僕たちが帰って来るまでは延ばしてくれるはず。
予定よりも随分遅れた。それでも新たなアトリエが見つかればそれでいい。
ベネットでは都会過ぎるし金も掛かりそうだけど何とかなるさ。たぶん。
まあいいや。とにかく父さんに報告しよう。
交渉中のネモのアトリエへ。
続く




