ついに二人は……
最後の夜。
ついにファンタジーの神の許しを得た。
きちんと守りさえすればもう邪魔する理由もないと姿を消す。
意外にもあっさりだったからどうも物足りない感じがする。
まさか神からも見放された? それは祝福を受けられないことを意味する。
「ほら再開するぞ! 」
テルファーは邪魔な爺がいなくなったとしか思ってない。
それは僕だっていつでも現れるからうっとうしいとは思っていたよ。
だけどテルファーには尊敬の念が一つもない。
本当にいいのか? 神からの祝福を受けられなくなるんだぞ。
「でも…… 」
まだどうしてもその気になれない。どうしたんだろう?
「でもじゃねえ! いいから早く…… そうそれでいい」
強引なテルファーに促されつい唇を重ねてしまう。
「やればできるじゃねえか! よし次は…… 」
そこで止まってしまう。まさかテルファーも初めてなのか?
だとしたらもうやめたっていいんだぞ?
無理することない。情けないがまた今度にすればいい。
ただ最後の夜になるだろうから今度はいつになるか分からないが。
「どうしたのテルファー? 次は抱き合うんだろう? 」
「そうだそう。分かるなら口に出さずに早くしろ! 」
もう照れが隠せずに赤くなっている。これがテルファーのかわいいところ。
アンだったらどうなってたんだろう?
「おいカズ! こんな時に他の奴のこと考えるとはいい度胸してるな! 」
怒りのテルファー。もう知らないといじけて見せる。
「ごめん。ちょっとアンで妄想してたんだ」
「正直に言うな! だがゾークやハイでなくてよかったぜ」
おかしなことを言う。僕がそんな風に見えるなんて酷いな。
テルファーには僕がどんな風に映ってるんだろう?
やっぱり格好いいと思ってくれてるのかな?
そうだといいな。怖くて直接は聞けないけど。
ドンドン
ドンドン
ダメだ。放っておこうと思ったけどうるさくて堪らない。
ようやくテルファーと真剣に向き合えたのに今度は何?
トラブルはごめんだ。もう我慢の限界だよ。
音のする方を見るとカーテンから人影が。
誰かいる。訪問者? でもここは宿の三階で普通の奴は窓から訪問してこない。
するとまともじゃない奴が上って来たか? すると爺さんが戻って来た?
忘れものでも取りに戻って来たとしたら最悪だ。
雰囲気ぶち壊しもいいところだよ。
「開けて! 叩き割るよ! 」
どうも訪問者と言うより侵入者。声から女性だと判明する。しかも女の子だ。
知り合いの女の子と言ったら真っ先に上がるのはアンだけど今は父さんといる。
すると妹ぐらいだけど。まだソラは一人では何もできない。
ここに来ててそんなことができる常識知らずの人間。それは……
「何だようるせいな! 人が楽しんでる時によ! 」
ギリギリセーフの格好のテルファーが無防備に招き入れる。
「失礼! お邪魔します! 」
その声と顔には見覚えがある。
「お前は…… ドラコ? ドラコじゃないか! 」
「ああん? ドラコって誰だよ? 」
テルファーの鋭い目つきが早く話せと言ってるよう。
「ドラコって言うのは僕の生き別れの妹で最近居場所が分かったんだ」
大体これで合ってるだろう。テルファーにきちんと説明するのは面倒だから。
それに父さんの件もあるからあまり触れたくない。
「嘘つけ! お前の妹は空を飛ぶのか? 」
常識的に考えればあり得ないが父さんも僕も竜人と言うのを忘れてはいけない。
そう。人間ではなく竜人だと言うところがポイント。
「お前もおっさんもそう言えば竜人だったな。
まあいいや。その妹がなぜこんなんところにいる? 窓からガンガンやる? 」
テルファーが疑問を口にするが僕だって知る訳がない。だから驚いてる。
「待てよ? 妹は嘘ってこともあるな」
「何を言ってるんだよ。ドラコは僕の妹さ」
「本当だな? ただの恋人じゃねえだろうな? 」
テルファーが疑いの目を向ける。いやどう見ても恋人に見えないだろうが。
と言うか人間にも見えないと思うが。
ジャックからだって聞いてるはずなんだけど。
「お兄ちゃん? 」
「どうしたんだよドラコ? なぜお前がこんなところに? 」
「呼んどいて何その態度? 急いで来てあげたんだからね! 」
ドラコは旅行から帰ってすぐに僕が呼んでることに気づいたと。
「呼んだっけ? 」
「呼んだでしょう! 飛べないから来てくれって」
「思い出した! 離れ小島行くのにドラコ呼び出そうとしたけど出掛けてるって。
父さんが無駄だからよせと。それっきり」
「だから急いで駆け付けたんでしょう! 」
どうやらドラコは悪くない。忘れていた僕たちが悪いんだ。
「それでこんなところで二人っきりで何をやってるのお兄ちゃん? 」
追及者現れる。その名もドラコ。困ったぞこれは。どうしよう?
テルファーが下着姿のまま。とは言えこれで通用するかな?
「テルファーと遊んでいたんだよ」
どうにか急いで言い訳を考えるが何も浮かばない。
今更隠せないし。クローゼットもないだろう?
「遊んでた? へええ…… 」
どうやらドラコは僕よりもその手のことに詳しい。
義理の妹とは言えお兄ちゃん悲しいぞ。
「だって他の奴がいないからテルファー君と遊ぶしかないだろう?
テルファー君はがさつで暴れるタイプだから。今もふざけ合っていたんだ」
どうにかごまかす。
「ああんテルファー君? そうそう。だからカズをぶちのめしていたのさ。
お前が消えたら再開するからそれまで休憩な」
テルファーは意外にも僕の滅茶苦茶な設定に付き合ってくれた。
「あなた女の子でしょう? だって胸だって膨らんでるし下着だって…… 」
さすがにこの格好では言い訳は無理か。
「うるせい! これは爺さんの趣味だ。とにかく変態なんだ。爺さんもカズも」
どうにかごまかそうとするが逆に変になって行く。
もうワザとにしか思えないよな。
「そうだぞドラコ。爺さんだけじゃなくコンプラ様のお墨付きもある。
だから心配するな! 」
「もう分かった。だったら帰ればいいんでしょう? 」
「物分かりのいい妹で兄としても助かるよ」
「もう馬鹿なんだから! お父さんによろしくね」
そう言うと行ってしまった。
続く




