こんな浴場アリ?
泉近くの温泉施設。
ついに三度目の正直なるか?
期待が高まるもののゾークを巻き込む訳には行かない。
ここは大人しく臭いと泥と疲れを取るとしますか。
ただ混浴なんだよな。もしものことが起きないとも限らない。
最悪なのはゾークだけが見れて僕が見れないパターン。
それが一番あり得るから嫌なんだよな。
あるいはテルファーのだけが見えてアンのが拝めないパターンもあり得る。
ただそれは決して悪いことじゃない。愛を確かめ合えるのだから。
一番いいのは二人のがきちんと見えること。
おっと…… 僕は一体何を考えてるんだろう?
混浴とあって相当興奮してるんだろうな。
「ぼうっとしてどうした? 」
「ありがとう…… あれ? 」
どこか違和感。でも追及しづらい。だって証拠がないから。
でもこのおじさんどこかで見たことがあるんだよな。
ゾークも行ったことだしそろそろ正体を暴くか。
「そうだ。お前にこれをやろう! 」
そう言うとメガネを渡される。ちょっとおかしな人に遭遇したらしい。
たぶんこの人は悪い人じゃない。ただ強欲でエッチな爺と言うだけ。
「でも父さんが知らない人からもらっちゃダメだって…… 」
「何を固いことを! もう仲間じゃないか! 」
しつこくする不審者。こう言う人が一番危険で面倒臭い。
絶対に近づいてもついて行っても二人きりになってもいけない。
うわ…… そう言いながら二人きり。
「でも僕…… 」
「うるさい! このセーフティーゴーグルを使え! それが神のお導きだ! 」
そう言うと爺さんが変装を解く。
「やっぱり…… いつも邪魔して。もうその手は喰いませんよ神様」
「ダメだ! これもファンタジーの世界を守るためだ! 崇高な目的があるのだ」
「だったらゾークは? もう先に行っちゃったよ」
「何? お前だけではないのか? どうしようもないなこのクソガキどもは! 」
「はいはい。静かに頼みます」
慌てる爺さんを急いで更衣室から追い出し鍵を掛ける。
これでようやく邪魔者がいなくなった。
今回はどうしても邪魔されたくない。これが最後のチャンスかもしれないから。
でもそれだとゾークを巻き込むことになるんだよな。
ドンドン
ドンドン
「開けろ馬鹿者! 何をする? 神をも恐れぬ愚か者めが! 」
怒り狂う爺さんはこれ以上手出しできない。意外にも弱点があるもの。
ではそろそろ入るかな。うわ…… 緊張してきたぞ。
しかしあの爺さんファンタジーの神を名乗る割に好き勝手に出現できないらしい。
意外にも制限があるのか? それとファンタジーの神は嘘でただの爺と言う事も。
いやそれはないか。実際に太陽の化け物と武蔵を倒した訳で。
まあいいよ。どっちにしろ僕は誘われるままお風呂に入るのさ。
だってそうしないと臭いが取れない。仕方ないよね。これは僕のせいじゃない。
あの小さな箱がとんでもない悪臭を放ったせいだから。
するとこれもあの爺さんのせい。もっと大げさに言えばすべて神の思し召し?
では行ってみますか。
それでは魅惑の世界へ。
最終確認。セーフティゴーグルは掛けてないよな?
うん大丈夫。目の周りを特に触って…… よし問題なし。
あれがあると何かと面倒だからな。
そして辺りを見回すが爺の影はない。後ろにも当然前にもいない。
声だけが聞こえる。まだ鍵を突破できてないのだろう。
「改めてお邪魔します」
爺さんもテルファーを嫌がらなければ連れて来てあげたのに。
それをもう一人別のがいいと我がまま言うから。
テルファーの怒りようと言ったらない。
「何だカズ来ちゃったんだ…… 」
意外にもテルファーは後悔してるよう。どうしたんだろう?
僕が失敗する姿を見て大笑いしてたからそれが見れないのが寂しいのかも。
ついに僕たちは困難を乗り越えて結ばれる。まあそこまででもないか。
ただテルファーのすべてを目撃できると言うだけ。そしてアンのすべても。
「ゾークは? 」
湯煙で人は確認できてもそれ以上は無理。どうやらまだ試練があるらしい。
とりあえず軽く体を洗って中へ。それがマナーで常識だろう。
「カズ君…… 僕もう恥ずかしくて」
どうやらゾークもサプライズにもう限界らしい。
「おいゾーク! ダメだぞ! 吐いたらお終いだ」
ついでにできるならテルファーのもアンのも見ないで欲しい。
ではそろそろ入るか。これで嫌でも見ることになる。
しかもテルファーの奴は行儀が悪いから立ってる。
それでは見てくれと言ってるようなもの。
それだと僕だって立っちゃう訳で…… おっと違う違う。さあゆっくりしよう。
「カズ君いらっしゃい」
どこからかアンの声が。どうやらまだ恥ずかしいのだろう? 決心がつかない?
でもアンはどのみち爺さんに見られてるんだから気にすることないさ。
「アン…… どう湯加減は? 」
どうにか冷静さを保とうとするが…… いつ鼻血が出てもおかしくない。
「ふふふ…… ぬるいよ。でもそのうち慣れるよ。さあお姉さんのところに」
まるで夢を見てるよう。いや夢でないなら一体何だと?
ああどうして今度ばかりはこんなにうまく行くのか?
アンは恥ずかしがり屋でしっかり肩まで浸かり大事なところが見えやしない。
「何だアンもやっぱり恥ずかしいんだ? 」
挑発してみる。でも当然恥ずかしいに決まってる。隠したいだろうさ。
そうじゃないテルファーが異常なだけ。僕だって凄く恥ずかしいんだから。
「カズ君…… まずはテルファーを見てあげて」
おかしな気遣いをするアン。さすがはアンだけどそれはもったいぶり過ぎだろう?
「ホラこっちだってカズ! 」
大胆なテルファーは堂々と晒す。かわいいし格好いいけど何か変だ。
線があると言うかよく見えないと言うか…… どこか不自然。
「テルファー? 」
「どうしたカズ? 」
「何だか着てるように見えるんだけど。気のせい? 」
「悪いなカズ。ここ混浴だから裸は禁止なんだ」
そう言って貸し出し用でフル装備。前回よりも遥かに見えない。
セーフティゴーグルはギリギリ見えない代物。
大事なところはブロックされているがそれ以外は問題ない。
だが今回の混浴用の装備では見えるところは限られている。
嘘だろう? そんなのアリ?
一体今までの僕の努力と我慢は何だったんだ?
どうやら三度目の正直とはならなかったらしい。
いや別にそれはいいさ。
これがファンタジー世界を守ることになるなら仕方ない。
ほんの僅かでも貢献できたならそれは光栄なこと。
諦めて大人しく汗を流して臭いを落とすかな。
続く




