お楽しみ
占い師のフェイの勧めで泉近くの温泉施設へ。
明日皆で行くつもりが予定を前倒ししてなぜか四人で。
すべてはテルファーの計画。きっと何かとんでもないことを企んでるんだろう。
でも僕が誘いに乗らないと三人で行こうとするからもはや断れない。
「いいのか? お前だって楽しみたいんだろう? 」
そんな風に脅される。でも僕としてはこの臭いを早く取りたいだけ。
もうこれ以上誰にも迷惑掛けられない。なぜそれが分かってくれないんだ?
僕にはそれ以上ないのにまるで僕のためだと言ってるようで悔しい。
「もう充分だ! 神様だってもういいって言ってるんだから」
つい爺さんのオーダーを漏らしてしまう。
正確にはテルファーを切りアンともう一人の女の子が見たいと。
これはファンタジーの神の偽らざる気持ち。
「何だとあの爺! 人の裸二回も覗いておきながら何を抜かす!
よしこっちにも考えがある。一緒に入るぞ! 」
テルファーはもうその気だ。元からずっとその気だったような……
二回ともファンタジーの神を自称する爺さんにうまく阻まれたに過ぎない。
もうテルファーは止められない。できるならアンだけでも何とかしてあげたい。
「ああん? 今お前酷いこと考えてなかったか? 」
女の勘だろうか? とんでもなく鋭いんですけど。
それともドッポのようにハッタリなのか?
どっちにしても今はテルファーだけを考えないと。これはこれで窮屈。
アンとだってもう少しゆっくり時間を掛けて関係を深めていきたい。
「酷いも何もテルファーのことを…… 」
「ははは! やっぱりお前も男だな! そうでなくちゃ」
そう言うと思いっきり肩を叩かれる。手加減なしなので痛くて仕方がない。
「どうしたのカズ君? 急ごうよ」
僕たちが盛り上がってるのを知ってかゾークが気を使って前を歩く。
ゾークは真面目だ。地図を片手に先導。
「悪いゾーク。あったか? 」
「それがたぶんこの先の道を曲がったところにあると思うんだよね」
一人黙々と温泉施設を探すいい奴ゾーク。
「ははは! ゾークも今日は付き合えよ! 」
「いや僕は…… 大丈夫? 」
テルファーの悪だくみに恐怖するゾークだった。
これはたぶん神をも恐れぬテルファーの復讐に違いない。
何を考えてるんだろう? 想像もしたくないな。
「父さんたちしっかりやってるかな? 」
町はフィールドと違い平和だからめったにモンスターが現れないので気が抜ける。
ただの悪党かまたは獰猛な動物ぐらいだが今は夜でもないから。
「監視だけなら誰にでもできる。問題は町長がそれに気づいて逃亡しないかだけ」
テルファーは随分と気にしてる。アンも前の町長とはどこか違うと感じてるよう。
「ゾークはどう思う? 」
一番冷静で町長と無関係のゾークに聞く。
「そうだねカズ君。僕たちが依頼されてからおかしくなったとは考えにくい。
だってその間に町長に接触して何の意味が?
町長を操っても巻物は手に入らない。相手はトップターたちだろう?
それとも他にいる? アニマ博士もいるけど接触してる暇はなかったでしょう?
どうであれ撃退されてから戻るのは考えづらい。
あるとすれば新たな敵だけど…… 」
ゾークによれば新たな敵が現れた。そいつが町長と接触したと。しかも事前に。
これは前々から町長によって計画されたもの?
するとあの武蔵と太陽の化け物は自作自演。依頼をしやすくするためにやった?
でももしそうなら無関係なアンやこの町の住人を巻き込んだことになる。
まさか町長は人の心を失ったのか? そう考えるのが自然か。
「おいおい! それは面白いけどよ無理がねえか? 」
テルファーが噛みつく。
「いや初めからおかしいと思ってたんだ。なぜ僕たちの活躍を見ていたのか? 」
「そう言えばそうだな。なあカズ? 」
「アンは伝えたの? 」
「いえ。でもあの戦いを見てたんだと思って…… 気にも留めてなかった」
「だがあの戦いはファンタジーの神の活躍で僕たちは何も……
だからそもそも分かるはずがない」
「まあ細かいことはそのうち分かるさ。ほら着いたみたいだぞ! 」
こうして僕たちは町はずれにある温泉施設へ。
「いらっしゃいませ! どうぞごゆっくり。女性は右に男性は左に。
ここはご存じのように混浴でして…… 」
どうもこの辺りの文化なのか混浴らしい。
別に僕はどちらでもいいが問題はゾークだよな。
緊張で発狂するか戻すかするに違いない。
「まずいよカズ君…… これはいくらなんでもまずいよ」
動揺するゾーク。でもこれも僕たちのためにテルファーがしたこと。
まさかそれを断るのはまずいだろう。
「いいから着替えようゾーク」
今更帰ると言う選択肢はない。僕たちは何としても臭いを落とさないとならない。
ゾークには悪いけど付き合ってもらうぜ。
「でもカズ君…… 」
まだ葛藤してるゾーク。僕だってずっと葛藤してるんだぞ。
ゾークは知らないんだろうが。
「おい! 落とし物だぞ! 」
親切な男が拾ってくれた。どうやら緊張からタオルでも落としたのだろう。
いや着替えか? それだと恥ずかしいかな。
「ありがとうございます。あなたもここに…… 」
髪がふさふさでとても筋肉質な男の人。初めて見る顔で当然知らないはず。
でもどこか違和感がある。思いっきり若作りしてる感じが違和感の正体だろう。
「悪いゾーク。ちょっと先に行っててくれないか。僕はこの人に用があるから」
「無理だよ…… 一人で行くだなんて…… 」
この段階になって怖気づくゾーク。
気持ちは分かるけど仲間を待たせる訳にも行かない。
「大丈夫。きっとすぐ慣れるさ。無理だったらスローを使えばいいから」
とんでもないアドバイスだが納得してくれた。
でもスローはもしもの時の秘密兵器だぞ。
さあ行くんだゾーク。
でも待てよ…… もしかして初めてはゾークが? それはまずいかもしれない。
まあいいか。アンだって今回は完全防備してるだろうし問題ないさ。
ガラガラと音がするとゾークが姿を消した。
まあゾークもあれで本気で嫌がってる訳でもないだろう。
では誰もいなくなったところで話をつけますか。
続く




