四人で行ってみよう!
巻物集めを終えクエスト完了。
一度追い出された宿に戻り体を休めることに。
大丈夫。臭っていた大元の箱は町長宅で処分してもらった。
クエストの経費も面倒事も押し付けた。
これでいい。いくらクエストでもこれくらいしてもらわないと困る。
「おいカズ。どうしたんだよ元気ないな? 町長みたいな暗い顔しやがってよ」
テルファーがからかう。しかし今はそんなこと言ってる時か?
その町長の様子がおかしい。明らかに何かある。
それでも僕たちにはどうすることもできないから悩んでいる。
「テルファーだって分かってるだろう? 」
「ああ…… お前の臭いだろう? だから心配するなって」
「違うって町長! 僕の臭いもあるけどそれはもう宝箱を開けて解決…… 」
つい臭いを嗅ぐと鼻がひん曲がりそうに。いくら自分のでも気づかないもの?
せっかく忘れていたのにテルファーが思い出してくれるんだから。余計なことを。
それでも仲間か? からかい過ぎだよ。もう嫌になる。
だがその呪いからも解放された。あの箱さえ処分すれば臭いは薄れていく。
ゆっくりと時間を掛けてだけど。ゾークの言う通りなら一週間できれいさっぱり。
「その件だけどよ…… フェイからもらった地図がここにある。
おっさんが預かってろと。なあカズ。今すぐ行ってみないか? 」
テルファーの強引な誘い。まさか本気なのか?
別にそれは構わないさ。早くこの臭いからオサラバできるならそうしたい。
でもそこへは明日にでもって話。勝手に計画を変更していいのか?
「でも父さんたちが…… 」
「大丈夫。ハイと二人で町長を見張ってる。交代時間の前に行こうぜ」
テルファーの独断。
「ちょっと待ってくれ。誰と? 」
「もちろん二人は一緒に決まってるだろう? 運命共同体。実際夫婦だし」
戯言を抜かす。あれは魚顔を欺くためにやったことで事実ではない。
テルファーは知らないけど僕はまだ子供だから結婚には父さんの許しが必要。
だから夫婦でもない。なるのだって難しい。はっきり言う? でも傷つくしな。
「ほら行くぞ二人を待たせたら悪いだろう? 」
そう言って無理やり連れて行かれる。
すべては僕のためだと白々しい嘘を吐く。どう見ても何か企みがあるに違いない。
それが分からない限りむやみについて行かない方がいい。でも断ると怖いし……
「二人って? アンだけじゃないの? 」
てっきりアンと三人でと思っていたがどうやらもう一人行くらしい。
「ほらゾークも臭いだろう? だからこの機会にちょうどいいかと」
何て酷いことを…… いつものように吐くか漏らすかのゾーク。
趣味の汚物収集でも分かるように異常行動で常に臭いと決めつけている。
それは僕も思わないことはないけど……
「ゾークは行くって? 」
「ああ。僕も行ってみたいって無邪気な奴だろう? 」
「そうだね」
うわ…… 本当に何を企んでいる? ゾークを道連れにするつもりらしい。
まさか興味がゾークに移ったなんて言わないよな?
僕にはテルファーしか見えないんだからさ。今はだけどね。
「よし行くぞ! 」
そう言って返事を待たずに連れて行こうとする。もう強引なんだから。
せっかくなら二人きりで行きたかったな。アンはいいとしてゾークは余計では?
「でもゾークは魔法習得に忙しいと思うんだよね」
「いいから行くぞカズ! 」
ゾークを巻き込まないようにするつもりがちっとも聞きゃしない。
こうして四人でフェイの勧めた幻の泉近くの温泉施設へ。
迷ったのか一時間近く歩いた気がする。
「着いたぞ。おいアン! ついでにゾークも」
オマケ扱いのゾーク。何だか可哀想に思えてくる。
「臭いを消してやるからなゾーク」
一応はゾークのためにやってることを強調。
「何を言ってるんだよ! 僕じゃなくてカズ君でしょう? ねえアン? 」
生意気にもアンと呼び捨て。こう言う時はアンお姉さんと呼ぶべきだ。
まさかそれほど親密な関係じゃないよな?
何だか最近ずっとこんな感じ。仲間を疑ってはいけないがこれも仕方ないこと。
「ほらカズもゾークもノロノロしてないで行こうぜ」
テルファーはマイペース。
こうして港町・ドラクリオにある温泉施設へ。
ここで一汗流せばきれいさっぱり邪気も臭いも取り除かれるそう。
うーん。本当にこんなことしてていいのかな?
町長の様子がおかしいのにあの二人に任せる? 任せられるのか?
大体臭いって言うけど父さんとハイの方が臭い。普段は僕の何倍も臭いのに……
今たまたま臭い僕と汚物採取とよく戻すゾークを連れて行くんだから嫌になる。
これでは一生臭いと言われ続けないか心配。
「どうしたのカズ? 」
「テルファーには悪いけどあまり乗り気がしないんだ。
臭いって言われても自分はそんな気がしなくて。皆でからかってるとしか」
適当なことを言ってみる。
「ごめんなさいカズ君。あなたは臭いわ! 」
アンが事実をありのままに。それはあまりにもストレート過ぎる。
もっとふんわりと優しく包み込んで欲しい。
傷つくじゃないか。僕にはどうすることもできないんだぞ。
「ごめんなさいカズ君。でもこれは仕方ないことなの。
最後の巻物を得るにはある程度仕方ないこと。代償とでも言えばいいのかしら。
あなたはそれでもめげずによくやってくれました。これで私たちの町が救われた。
あと一週間もすればきっと臭いも治まる。でも今の内に直しておこうねカズ君」
そんな風に諭すアンは本当にいい人だ。僕の恋人にはもってこい。
ついそんな邪な考えを持ってしまう。これっていいのか?
「うん。分かったアン」
「おいおいカズは単純だからアンに騙されたんじゃねえの? 」
常に言葉遣いの悪いテルファーが笑うがこれはお互い笑いごとで済む話?
「アンは本当に素敵な女性。尊敬しちゃうな」
つい褒めるとアンは照れて何も喋れなくなる。
本当に昼間はいいな。夜はちょっとどこかおかしいけど。
「おいカズ! いい加減にしろ! アンが本気にするだろう? 」
自分から仕掛けておいてよく言うよ。
「そんなこと言われても…… 」
「いいのか? お前の願いを叶えなくてもよ。お前も期待してるんだろう? 」
テルファーが耳元で囁くように脅す。
続く




