六巻目を探せ!
一見どこにでもある海の幸をふんだんに使った魚料理のお店。
しかしその実態は怪しげな商売に手を染める恐ろしい男。
ついにその本性を現した。
「ここから臭うしお前からプンプン臭うんだよ! 隠し持ってる巻物を寄越せ!」
ついに強盗を始める父さん。これはあまりにも短絡的で危険な行為。
子供だって見てるんだからもっと穏便に話し合いでも。
もし何も悪さしてないただの善良な巻物の持ち主だったらどうするつもり?
謝っただけではさすがに済まされないだろうな。
「ダメです! たとえ何を持っていようとあなた方には関係ないこと。
用がないなら会計して早く出て行ってもらいましょう」
怒ってしまう。しかしこれでもう後には引けないぞ。
次の手を打つことにしよう。
「テルファー行け! 」
「またかよ? 人使いの荒いおっさんだな。ただの案内係だろうが」
文句ばかりのテルファー。でもやる時はやるので敵に回したくないタイプ。
「ほら早くしろ! 逃げちまうだろうが! 」
「うるせえな! 出口塞げばどうしようもないっての」
そんな風に甘い考えではきっと相手の思うつぼ。
何て言っても裏口がある。そこには今僕の指示でハイに行ってもらっている。
もしもの場合に備える。それが僕のやり方さ。
「クソ! これでも喰らえ! 」
そう言うと店主が包丁を投げつける。これはとんでもないことになったぞ。
こいつは料理人の命とも言える包丁を投げつけたんだ。
それは到底許されることじゃない。
「おいゾーク! 」
父さんの指示でゾークはスローを発動。
アンとゾークは魔法が使えるようになったが攻撃魔法まだで回復魔法も少しだけ。
ただ補助魔法は制限がない。ただ教わらない限りは無理だが。
離れ小島で博士と一緒にいた時にコツを教えてもらったと。
スローを習得。こうしてゾークはスローを操るようになった。
だからスロー発動はこれが初めて。最初だけに上手く行くかどうか心配。
「スロー! おえええ! 」
ゾークの独特の掛け声は誰にも真似できない。したくもない。
こうして店主は気づかないうちにゆっくり。
だから攻撃も包丁投げもスロー。あの離れ小島の決戦で起きた事が繰り返される。
立場が逆なので楽でいいがあの店主はなぜ避けられるのかと不思議そう。
「こら危ねえだろうが! 」
テルファーは服を掴むと豪快に投げる。本当に派手だ。
容赦がないテルファー。相手はスローのカメなのだから少しは手加減しなきゃ。
相手に怪我でも負わせたらどうする気だ?
簡単だからこそ怪我をしないしさせない。
こうして店主は観念。だが難しいのむしろこれからだ。
「巻物はどこだ? 持ってるんだろう? 大人しく吐け! 」
テルファーは早くしろと脅す。まるで強盗団の一味だ。
このままだと通報されても不思議はない。
「持ってないね。勝手に探せばいいだろう」
この間五分。スローに加え口が重い男はゆっくり話すから五分掛かる。
「おいゾーク! 元に戻せ! 」
テルファーに続き父さんまでがイライラ。
気持ちは分かるけどもう少しゆっくりでもいいと思うけど。
「それが三十分経たないと無理…… 僕の能力ではスロー解除は高度過ぎて」
そんな風に笑うがどうも二人は我慢できないらしい。
仕方ないな。僕が動くとしよう。
「よし皆で手分けして探すぞ。こっちかな? 」
まずは中央に立って前を見る。
だがここで男を見たりはしない。目を伏せることもあるのでなるべく自然に。
「うーん。やっぱりこっちがいいか」
優柔不断にやってみる。
「うわああ! あっちから臭うぞ! 」
今度は左に向いて鼻を嗅ぐ。これでいい。相当プレッシャーに感じてるはずだ。
焦って仕出かしそうだが何と言ってもスローだから未然に防ぐ事ができるだろう。
男を見ることなく最初の駆け引きを終える。
「どうだったアン? 」
一番冷静で真面目なアンに男の動きを観察してもらっていた。
騒いでいた父さんやテルファーの影に隠れて警戒が薄れてるはずだから。
しかしどうもよく分からないと言う。
うーん。どうやら男はその手には引っ掛からないポーカーフェイスらしい。
これはとんでもない。相手に不足はないができるなら戦いたくないな。
意外だが…… 待てよスローだから読み取るのが難しい? でも一瞬でもないし。
これはもしかして右にあるのか?
「おいカズ! 」
テルファーが急かす。一応はここの司令塔。
皆が僕の指示を待っている。でも指示待ち人間で本当にいいのか?
少しは自分の頭で考えた方がいい。
「よし一気に右側を探れ! 」
特に店の右中央辺りを徹底的に探る。
「おいあったぞ! 」
裏口を張っていた宝探し大好きなハイが一番奥の箱を探って巻物をゲット。
「偉いぞハイ! 」
テルファーのいつもの喜びのケリが強烈に入る。
「へへへ…… 俺を気に入ってくれたのか? 」
そうやってテルファーにも気があるハイはアンからのご褒美を貰え損ねる。
嘘だろう? これではただの罰ゲームだ。それでもハイは嬉しそう。
だったらいいのか。本人が文句ないなら僕が口を出すことでもないし。
「クソ! やられた! しかし貸すだけだぞ。これは我が家の家宝だからな」
負け惜しみを言うが確かにこの人は別に悪い訳じゃない。
強盗したのは僕たちの方だ。言い訳されると弱い。
「だったら最初に大人しく出せばいいだろうが?
見つからないと思ったんだろう?包丁を投げておいてよく言うよ」
テルファーの怒りは収まらない。
包丁をお客に放り投げた時点で最低な料理人は決定していた。
これで罪悪感が薄れるだろう。
「そうだな。もう後十分はスローの効果がある。それが罰だと思え! 」
父さんも店主が悪いと強引。
まあいいか。何であれ目的の巻物は手に入った。
六巻目ゲット! 残すは一巻のみ。
「おい行くぜお前ら! 邪魔したな! 」
父さんが格好をつけテルファーがまたなと脅す。
ゾークは満足げ。どうやらスロー成功に気分がいいのだろう。
ハイは何も考えずについて行く。
僕とアンだけが悪いなと思いながら後にする。
ついに六巻目。
残り一巻でコンプリート。
明日にも…… いや今日にもミッションコンプリート。
続く




