昼は豪華に
残り二巻となりコンプリート間近。
そう言えば七つ揃えたらどうなるんだっけ?
急に空が真っ暗になる?
巻物が共鳴して光るなんてことないよね?
僕に分かるのはクエスト達成したら依頼人の町長が大喜びすることだけ。
安心させるためにもできるだけ早く残り二つを見つけてあげたいな。
待てよ…… 巻物と言えばまさか……
「へいらっしゃい! 」
港町・ドラクリオで新鮮でおいしいと評判の魚料理のお店に。
クエスト成功の前祝だそう。好きなだけ食ってくれと言っていたが大丈夫かな?
ドラゴンカードは結局返しそびれたから。もしそれを当てにしていたら……
まあいいか。どうせ町長からボーナスでも出たんだろうし僕が心配する必要ない。
「まずはそのトロっとした奴を一つ! 」
言われた通り遠慮せずに注文する。
「こらカズ! お前は好きなものから喰えっての! それは初めてだろう? 」
父さんは意外にも僕をコントロールしている。
冒険して初めてに手を出すなと言われたら従うしかない。
だったら父さんと同じものでいいや。
「そうかそうか。カズは父さん似だからな。ははは! 」
上機嫌な父さん。だったらこれも頼むかな。
「お酒! 」
「こらカズ! ガキが何を抜かす! とんでもない奴だ」
「でも父さんと同じにするって…… 」
一応は正論だけど屁理屈だと言って相手にしてくれない。
困るよな。都合が悪くなるとこれだ。いつものこととは言え嫌になるぜ。
「もう分かったよ。だったらジュース」
「ははは! それでいい。対象外は避けろ。
どうしたゾーク? 食べてないようだぞ」
「生ものはちょっと…… 」
神経質なゾークが拒否。
「何だゾーク。だらしねえな! 」
父さんがご機嫌だ。いくらでも食っていいぞと。何と食べ放題プランらしい。
さすがは父さんセコイ。だが魚をあんなに食われて店はやってられるのか?
ゆっくり食べる僕とアンに対して味わずにただ流し込むようなテルファーとハイ。
豪快だが見ていて決して気持ちのいいものではない。
「おい急ぐなってお前ら! 落ち着いて静かに食えっての」
父さんはゆっくりお酒を飲みながら。
「親方。これは美味い! でもこっちはもっと! 」
本当か怪しいがハイは味の違いが分かると格好をつける。
それはそうさ。全部似てるがどれも新鮮でよく噛みしめれば微妙な差だって。
どうであれ美味いのは間違いない。
「こらカズお前はしっかり最後まで食え! それとハイは抑えろ。急ぎ過ぎだぞ。
ゾークはどうしてる? 」
「大丈夫です親方! 巻物を頂いてます」
ゾークの口には全体的に合わない。可哀想だな。
誰にでも好き嫌いはあるがゾークの場合は嫌いではなく食べれないよう。
店選びを間違えたか? でも仕方ないよね。僕たちはただ食べに来たのではない。
「うまい! どれだけだよ? 喰ったことねえぞこれ! 」
テルファーは止まらない。無尽蔵の胃袋。前も思ったけど凄い食う。
アンがそれを見て呆れる。でも旅を続ければこれくらいでないとへばってしまう。
いくら僕の作った合成アイテムでもすぐには回復しないからな。
それにただの吐き気や体調不良ではなかなか使えない。
もっとモンスターに囲まれて即死状態ぐらいでないと使い辛い。
「お客さんたちよく食うね。あと十五分だよ。注文どうぞ」
この男はこの町で生魚を提供する店の店主。
元はシーフードレストラン。ライバル店に敗れて店を変えてから繁盛している。
過去には悪さもしてると噂の組織に所属してることも分かった。
そう何度も言うが僕たちはただ食事に来たのではない。
あの臭い反応機でここにたどり着いた。
恐らく彼がここのどこかに巻物を隠してるのは間違いない。
それがどこかはまだ分からない。聞くにもどう聞けばいいか迷う。
警戒されては逃げられる恐れもあるので慎重に動いている。
現在お店は昼休憩まで三十分。
食べ放題も間もなく終了。そんな時に父さんが仕掛ける。
「おいあんた。昔ワルだったんだって? 」
父さんが絡む。するとよしてくださいよと苦笑い。
これはどうやらこの男で間違いない。
「きゃあ! 格好いい! 」
アンには煽ててもらうように父さんから指示が出てる。
こんな面倒なことせずに踏み込めばいいんだけど証拠もないしただ臭うではね。
だからどうにかこの男から聞き出すしかない。
ただ一人だけ父さんの命を受けずに自由にしていいと言われたのがゾーク。
まだ本調子ではないしすぐに気持ち悪くなるので無理して食うなと。
こんなにおいしいのにもったいないと思うが仕方ないか。
「なあおっさん? ここに読むものないか? 待ってるのは飽きてさ」
残り十分でテルファーはフィニッシュ。だから暇だと。
「申し訳ございません。当店ではそのようなものはご用意しておりません」
そんな風に丁寧に対応されると悪い気もする。
「あの…… 巻物を一つ」
ゾークはまだ食べている。ゆっくり食べるにしても遅すぎる気もするが。
「何を? きゅうりを使ったものですかそれともツナを使ったものですか? 」
「うーん。違うのは? 何だか飽きてしまって」
グルメなゾークは我がままを言う。あるはずないだろう?
「それでしたらスペシャル巻きなどいかがでしょう? 」
店主はそう言うとエビとタコを使った魚介巻きなるものを提供。
これはまだ試作品で常連さん以外には出してないと。
「うわ豪華! 美味そうだな」
ゾークは大喜び。生ものは苦手と言うのはどうした? この店で克服したか?
「それはそれは…… 」
「お代わり! 」
ゾークはまだ食う気らしい。無尽蔵だな。意外にも皆に追いつく勢い。
「ただ今お作り致します」
「よしだったら俺も頼もうかな」
父さんも釣られて注文。それにしてもよく食うな皆。見てるだけでお腹が一杯。
どれだけ食う気だよ? さすがに恥ずかしくなってきたぞ。
「そちらさんもスペシャル巻きでよろしいでしょうか? 」
笑顔の店主。だがその笑顔が崩れる事態に。
「いや違う。お前の持ってる巻物を頂く! 」
何だか言い方としてはまるで強盗のよう。
それとも金を忘れて青くなった食い逃げ犯か?
「はあ? ここは生魚を食わせるところだ! 巻物など知らん! 」
ついに本性を現した店主。
果たして六巻目の巻物を手に入れることができるのか?
続く




