すべてはハイに託された
魚顔のエイがボスが戻るまで質問に答えてくれるそう。
ただの親切な人と言うよりは間抜けだな。
暇潰しにはちょうどいいと。これは好都合。付き合ってもらいましょうか。
「まず初めにアニマ博士とは? 」
「さあな。ボスが見つけて来た科学者だ。頭は俺たちとは比べ物にならない。
本物の天才だ。ちょっとおかしいけど立派な科学者様だ」
どうやら相当切れる人物らしい。でもこいつの言ってることだから当てになるか。
いや待てよ…… もしかしたら僕たちのような合成師かも。
それならぜひお近づきになってアトリエを紹介してもらおうかな。
上手く行けばすべて解決だ。
「次の質問。竜頭は見つけられてない? 」
「まだだな。もし見つけていたらこんな島とっくにオサラバしてるさ」
竜頭がこの島にいるとあの竜人も言っていた。
だがまだ見つけられないとするともうこの島を脱出した可能性が高い。
するともう巻物は島の外に? 無駄足だったことになる?
でもそれはただの予測であって確定じゃない。今はあると考えるべきだな。
隠れ家でボスの帰りを待つ哀れな暇人。それがこいつらの正体。
そのボスは今どこにいるんだ? 見た限りいなかったが。
「それでお前たちは何者だ? 」
「間もなく始末される者が知る必要のないこと! 」
「分かった。それでお前たちはなぜ巻物を集めている? 」
同時期に探し始めるなんて偶然とは思えない。あまりに出来過ぎてる。
だからってこいつらが簡単に言うはずないか。
「それはトップター様がこの世界の支配者になるためだ」
「どうやって巻物の存在を知った? 」
「俺が知るかよ。すべてはトップター様のお考えだ」
こうして大事なところは大体聞いた。
さあどうする? 脱出は簡単じゃないぞ。
現在テルファーと仲良く囚われの身。恐らくまだハイは気づいてないはずだ。
どうせのんびりしてるんだろうな。それとも一周し終えたか?
早く僕たちが囚われたことに気づいてくれるといいんだけど……
いつになるか当てにならない。
ただ父さんたちがもう降り立っただろうから異変に気づくはず。
ここはもう少し時間を稼いで粘れれば助けが…… いやダメだ。
スローでは父さんたちだってすぐに捕まってしまう。
だからってどう伝えろと?
「これくらいでいいだろう? それともまだ何かあるか? 」
「最後にいや…… いいんだ! ははは…… 」
「ああん? 妙に聞き分けのいい奴だな。お前何か企んでないか?
いいか? トップター様がお戻りになるまで大人しくしてるんだぞ」
そう言うと一番位の低いであろう魚男に交代。
どうやらここの奴らは皆このような魚面らしい。
区別がつきにくいから何とかしろよな。
「どうしたんだよカズ? 」
「それがこの状況で一人だけ普通に動ける奴がいた」
「はあ? そんな奴いる訳…… 」
監視から逃れるために相手を見ないで囁くように話す。
ただテルファーの声がでかいのですぐにでもバレそう。
「あの…… トイレに? 」
「黙ってろ! 上の指示がないと何もできない。今は大人しくしてろ。いいな?
結局一番下の魚男では交渉の余地がない。ただ面倒と。
気持ちは分かるが僕だって本当にトイレ我慢してるんだから。
「そうだカズ。ハイよりもあのエッチな爺さんを呼べよ。そっちの方が早い」
テルファーは僕がファンタジーの神を降臨できると本気で考えてるらしい。
だがそれは無理だ。僕にはそのような能力はない。だから首を振る。
大丈夫だからと何の根拠もなく適当なことを言うテルファー。だから無理だって。
そもそもそんな優しい神なら捕まる前にどうにかしてくれるはずだ。
それにしてもあの爺さんテルファーからエッチな爺さんと呼ばれてるとはね。
今度会ったら伝えておくかな。怒るだろうなきっと。
「だから勝手にしゃべるな! 」
「だったらトイレに行かせろ! 」
「無茶を言うな! 勝手なことされて堪るか。もう少しだけ我慢しろ。
そうすればきっとトップター様によって新世界に連れて行ってもらえるだろうさ」
くそ! まともに取り合ってくれない。これじゃどうにもならないよ。
ドンドン
ドンドン
その時だった。開けろと激しいノック音。これは間違いなく父さんだ。
ラッキー! さあ早くその扉を! 早く! 早く!
だが願いは虚しくすぐに騒ぎが収まる。
それもそうか…… 僕たちはスローだから勝てるはずがない。
これはどうやっても戦えないし勝てない。
「どうやら助けが来たらしいな。しかし残念だが返り討ちに遭ったらしい」
わざわざ報告してくれる。ただの嫌がらせだけどどうなったか知らないよりマシ。
でもこれでほぼ望みはなくなった。
「ふざけるな! 僕たちを解放しろ! このバカ! 」
もはや感情に任せて喚く。これでいい。もうこれでいいんだ。
どうせハイがいれば大丈夫だから。多少大げさに悔しがらないと。
余裕の表情を見せたら感づいて僕たちを人質に取りかねない。
それでもスローでないなら人数さえ揃えば簡単だがハイ一人だから不安。
父さんたちが連行されてくる。
やはり捕まったか。姿を消したからきっと心配して島中を回ったんだろう。
島とは言え離れ小島。一周するにはさほど時間が掛からない。
竜人もきっと島での異変に察知してないだろうし。
「おい何をしやがる! 俺たちはただ観光に来ただけだ! 」
父さんは観光客だと言って逃れようとしたがこんなところに来る奴はいない。
間もなく消滅する村なんだからさ。その言い訳は通らないって。
「薬が…… おばあちゃんのお薬をもらいに」
アンまで下手な嘘を吐く。
こんなところにお薬がある訳がない。
「あの…… 僕はもう限界なんです」
緊張からかゾークは戻そうとする。
いくら何も気にしない魚顔の奴らでもそれは困るに違いない。
スローだから急げばまだ下に垂れる前にどうにかなるが。
別に心配してやる必要もないか。
さあどうする? 父さんたちが捕まりほぼ全滅。
僕たちの運命はハイに託された。
「おいお前たち! 逃げようとしても無駄だぞ。それから私語も禁止だ。
お前たちは聞かれたことにのみ答えるんだ! 」
魚男は注意を与える。ボスのお帰りまでここを守る使命がある。
でも僕たちだってただ黙ってやられるのは嫌だから。
続く




