スローの恐怖
ツブレ村の離れ小島。
うん…… 臭うぞ。この近くにあるのは間違いない。でも前よりも強くない。
なぜ? 動かした? とりあえず一周してみるか。
巻物探しは父さんたちが来てからでいい。
「待てよカズ! 」
「ははは! 行くぞ! テルファーも走れ! 」
つい初めてのところなので興奮している。
「もうカズったら…… 」
三人で自由に駆け回る。
小さな離れ小島だから走れば一時間もあれば一周できるとハイが適当抜かす。
「よしお前はそっち。俺はこっちからな」
ハイが左回り僕たちは右回り。
父さんたちが後十分もすれば来る。それまでに思いっ切り楽しまなくちゃ。
こうしてテルファーと手を繋ぎゆっくり走る。
悪くない。つい積極的になる。
これが初めてのところに来たことによる解放感だろうか。
「もうカズ早いよ! 」
「そうかな? いいだろう? 」
「もうカズってば子どもなんだから。ふふふ…… 」
「ねえここで昨夜の続きをするのはどう? 」
つい口が滑る。昼間っから僕は何を考えてるんだ?
うわ…… テルファーが赤くなってる。
やっぱりそうだ。テルファーは昼と夜とでは積極性が違う。
夜はあんな積極的で大胆なくせに昼はちっとも乗って来ない。口だけ。
当然ではあるが意外な感じがする。すると僕からもっと仕掛けてもいい?
「ほら昨日も一昨日も見れなかったんだ。どうせここには誰もいないよ。
今がチャンスだと思わない? 爺さんもきっとここまでは読めてないと思うし」
「でもカズ…… 」
らしくなく照れて黙るテルファー。いいぜとかふざけるなと格好つけない。
もっと照れてるところを見たいがこれ以上はいい。ふざけ過ぎだ。
「ははは…… 冗談だよテルファー。何をそんなに赤くなってるんだよ? 」
「はあ? 何だとカズ! 舐めやがって! もう絶対に見せてやらないからな!
お前が可哀想だと思って。だがいつもお前が間抜けだから失敗するんだ! 」
元のテルファーに戻りつつある。
「ああごめん。つい…… もういいんだ」
ここは素直に謝る。すると単純だからきっと……
「おいおい何ももう見せないとは言ってない。いつかそのうちな」
「はいはい。家が…… 」
「おい聞いてるのかカズ? 」
特に何もないが家が数件見える程度。
「そうだ。はしゃぎ過ぎて喉が渇いたからあそこでお邪魔になろうぜ」
図々しいテルファー。あまり勝手な真似しない方がいいと思うけどな。
一応は僕たち旅行者で冒険者。
それにしてもモンスターはいつになったら現れるんだ?
フィールドにいればすぐにでも襲い掛かって来そうなのに。
もしかして僕たちのこと恐れてる?
いつの間にか二人組のモンスターに囲まれる。
まずいな。仲間はテルファーだけ。
この必殺無敵剣をお見舞いしてやるか。あの巨大アリクイを倒したように。
あれ? 全然当たらないぞ。遅い? どうやら動きが緩慢になってるらしい。
これまずい。スローな攻撃では当たるものも当たらない。
「逃げようテルファー! 」
敵前逃亡。しかし簡単に捕まってしまう。
さあどうする? とにかくこのおかしな島から脱出しないとまずいぞ。
「カズ! 危ない! 」
テルファーの叫びが耳に残る。
それから一時間近く経ったのだろう。随分寝ていた気もする。
「おはようテルファー。二日続けていろいろあって寝不足気味。
でもよく寝たからすっきりした気がする」
「おはよう…… って呑気なんだからカズは。こいつらは何者なんだ? 」
テルファーに言われ前を見るとおかしな格好をした魚の化け物のよう。
「おいノロマ! ここはトップター様の支配地だ。どのような用で来た? 」
テルファーは首を振るがここは正直に言うしかない。言わないと何されることか。
「実は港町・ドラクリオの町長に頼まれて巻物を集めてる」
うわ…… 言ってしまった。でも奴らには関係ないしな。
「そうか。お前たちもあの巻物を狙って…… 実は俺たちも同じさ。
この島にいる竜頭とか言う奴から巻物を頂こうとしたがどこにもいない。
それで竜頭に会わせろと言ったら拒否しやがった。
頭に来たトップター様が人間どもを八つ裂きにしたのさ。
鈍い奴らで逃げ惑うがすぐに捕まっちまった」
勝ち誇ったようにペラペラと。恐らく相当な間抜けなのだろう。
「なぜ僕たちはこんなに動きが遅い? 」
一応は聞く。
「ははは! カメ人にでもなったのさ可哀想に」
そんな風にからかう。どう考えても嘘。結局こいつは何がしたいんだ?
「お前は使えないな。それだからトップターに信用されないんだぞ」
とりあえず挑発して様子を見る。
「何だと! 生意気な! 」
「そう言われたくなかったらなぜ動きがスローになるのか教えろ! 」
捕らえられてるとは言え強く出ないと。
「ほお生意気言っていいのか? この女がどうなっても知らんぞ」
「どう言うことだ? 」
「まだトップター様はお戻りにならない。その間はお前たちを生かすが…… 」
何と脅迫してやがる。
「別にいいよ。テルファーはそんなの気にしないから」
「ああカズの言う通り。好きにしな」
掛かって来いと挑発するテルファー。
やはり持つべき者はしっかりした信頼できる仲間。弱点になることもないさ。
「ふん。面白みのない奴らだ。どうせトップター様がお戻りになれば始末される。
暇潰しにからかう予定だったが気が変った。願いを叶えてやる。好きに質問しな」
どうやら願いを叶えることで追い詰めようってことらしい。
こっちにとっては好都合。
「名前は? 」
「エイだ」
まるで魚。だが海底人って訳でもなさそう。
「トップター様とは? 」
「俺たちの偉大なる指導者。近づき過ぎると殺されるから気をつけないと」
それほどの野郎だと言うこと。
「それでなぜスローなんだ? 」
「それは…… 」
「おい答えろよ! 教えるって言ったろ? 」
テルファーが容赦ない。どっちが捕えられてるか分かったものじゃない。
「分かった。アニマ博士が作ったスロー薬を撒いてる。効き目は二日間。
その間にここを制圧して目的の巻物を手に入れるつもり」
「それはいつまで? 」
「明日の昼。撒いたのは昨日だから完全に効果が切れるのは明日の昼って訳だ」
男の話ではそのアニマ博士は別のところで待機してるそう。
影響を受けたくないだろうからきっと海上の船の中だろうと親切に教えてくれた。
続く




