竜人の翼
ツブレ村の離れ小島。
親切な老人から赤だか青だかのドリンクを頂く。
これは奇跡のドリンクと呼ばれていて翼が生えて来るそう。
でもちっとも効果が現れてこない。痺れを切らした父さんは我慢の限界。
「何が翼を授けるだ馬鹿野郎! 」
怒りを爆発させる。でもあれは個人差があるものだから。
当然誰もが飛べるようになる訳じゃない。
そもそも母さんが作れないものを誰が作れると言うんだ。
もちろん僕だって無理。レアアイテムが豊富に揃ってれば別だけどね。
「そうだ。ドラコを呼ぼうよ父さん。それが一番手っ取り早いよ」
こんな時のためのドラコ。
「いやそれは無理だ! ドラコは今村にいない。どう言う訳か母親と旅に出てる。
勝手に手紙を送りつけるから家に届いてないかハラハラするぜ」
どうやらドラコとはうまくやってるらしい。
それはよかった…… いやこっちには迷惑なことでしかない。
ドラコと母親ね。仲のいい親子だ。
そうだ。今母さんはどうしてるかな? ソラも元気にしてるかな?
ベネットまでの長旅もありつい家族のことが頭に浮かぶ。
「おいカズ…… お前の気持ちも分かるがここは余計なこと考えずに行くぞ! 」
そんなこと言ってドラコを巻き込んだのは父さんじゃないか。
ツブレ村の外れにやって来た。ここから船で十分もすれば目的地。
だがその船がないから困ってる。自分たちで作るしかないのか?
やっぱり神様に相談する?
臭いが強烈になってるとゾークが。どうやら本当に離れ小島に巻物があるようだ。
「あそこ! 」
目のいいテルファーが影を捉える。
「どうも。ようこそいらっしゃいました」
笑顔のいかにも怪しげな男が近づいて来た。普通の人間だとは思えない。
だってあれは間違いなく……
「あんたは誰だ? 」
父さんが警戒する。
「ツブレ村は間もなく限界集落に。そうならないためにも若い人の力が必要。
どうですここに引っ越しませんか? 」
ツブレ村は二十年もすれば消滅するらしい。これは大ごと。
でも僕たちではどうすることもできない。自然なことだからただ見守るだけ。
「いいっすよ。それでアトリエはあるの? 」
ハイは軽い。本当に理解できてるのか?
この中で一番ふさわしくない気もする。でも父さんも僕も疲れたし気になる事も。
ゾークは苦手でアンは怖がってる。テルファーは別料金だと。
「アトリエ…… 申し訳ない。そのようなお洒落なのはありません。
ですが山もあって自然も豊かで水もきれいで過ごしやすいですよ」
「悪い。俺たちアトリエを探してるんだわ。頼むよ」
さっそく暴走を始めるハイ。誰がこんなところでアトリエを開くんだよ?
もっと都会に開かないと客が来ないだろう。
仮にぴったりのアトリエがあっても田舎の村では引っ越す意味がない。
そもそも間もなく消滅する村に引っ越すバカがどこにいる?
「あの…… 僕たちはあの離れ小島に用が。どうやって行けば? 」
仕方なく代わる。初めからそうすればいいが男がこちらを気にしてる感じがして。
様子見していたがやはりハイには最後まで任せられない。
「離れ小島ですね。あれ…… あなたは竜人ではありませんか? 」
見抜かれた。一瞬で僕の正体に気づくとは。嫌な予感が的中した。
「竜人? 」
白々しく聞き返すがどうやら確証があるらしい。
「おい! お前は俺の息子に言いがかりをつける気か? 」
父さんがまずいと一歩前に出る。
「いえそうではなく…… まさかあなたも竜人? いや親子で竜人なのか」
勝手に納得するがそうとは一言も言ってない。困ったな。
竜人は竜人を感じ取ってしまうらしい。
「違う! 」
「そうですか。お仲間でないなら正規の料金でお乗せすることになりますが。
そうでなく竜人だと認めるなら皆さん無料でお送りしますがどうします? 」
男は離れ小島に連れて行ってくれるそう。
竜人だからお近付きの印にと全員タダで乗っけて行ってくれるそう。
だったら認めてもいいか。どうせこの村には人は来ない訳で。
僕たち親子が変な噂を立てられるこもないだろう。大体仲間だし。
「父さん? 」
「だから無理言うな! 認められるか! 」
タダでも嫌だと。竜人だと思われたくないらしい。
「もう早くしろよ! この竜人親子はよ! どっちでもいいだろう? 」
テルファーはすべて知っている。ジャックから聞かされていたようだ。
この中で知らないのは新加入のアンのみ。ゾークもハイもドラコから聞いてる。
「うわ! テルファー? 」
どうにかごまかすがアンをごまかせない。
「まさかお二人は竜人ですか? いえ竜人様ですか? 格好いい! 」
この辺りには龍神伝説もあり僕ら竜人はその使いと言うことで尊敬されていると。
「そうかアン…… 俺たちは竜人さ。今まで隠していて悪かった。
さあ話もついたことだ連れて行ってくれ! 」
こうしてタダ乗り。何か悪い気も怖い気もするな。
「ではお乗りください」
男は翼を広げる。
うわ格好いい! これが竜人なのか?
つい見惚れてしまう。父さんだって言葉が出ないとずっと震えてる。
ハイもゾークも目を輝かせている。
六人なので三人ずつ二回にわたって運んでくれるそう。
「約五分の飛空ですのでその間お楽しみください」
そう言うとまずは空高く雲に迫るほどの上昇を始める。
「おいおい! 落ちるぜ! 」
ハイが興奮して騒ぐので大人しくするようにテルファーが注意する。
「そう言えばカズ。お前だって竜人だろう? 確か薄っすらと翼が生えたとか」
「おいハイ! 」
「おおそれは素晴らしい。竜人レベルによって飛ぶ距離も高さも違うんだよ。
きっと君はとんでもない潜在能力がありそうだから楽しみだ。
そうだ。島に行ったら竜頭がいるから。その能力を引き出してもらうといいよ」
男は嬉しそう。
そんな風にしてるとあっという間に到着。
「あれが? 早いっすね」
「実は自分は高いところから落下することで飛んでるんだ。
多少翼も動かしてるけど落下頼り。これではね…… 」
どうやら自分の能力が低いのを嘆いてるよう。でも凄いことだと思うけど。
ドラコと比べたら遅いけどこれはこれでいい。
こうして離れ小島に到着。
さっそく臭いを頼りに五巻目の巻物を探す。
続く




