ツブレ村の離れ小島
港町・ドラクリオの朝。
井戸に吊るされていたのはファンタジーの神こと変態爺さん。
二日続けてテルファーの裸を覗く最低な爺さんだ。
贅沢にも今夜は別のがいいと我がまま言いやがった。
反省も後悔もしないのがこの爺さんの凄いところであり最低なところでもある。
「それでその手に持ってるものは? 」
濡れた紙? 恐らく白っぽい紙が濡れて変色した?
「これは夢中に掴んだもの。神に触れしもの。必ずや幸運がやって来るだろう。
さあこの水浸しの紙を手に取るのだ! 恐れるでない! 」
朝から興奮しておかしなことばかり言う爺さん。相当迷惑なんですけど。
苦し紛れに取った紙なんかいるかよ。
まずいまずい。ついライラして。
「うんカズよどうした? まさか紙を疑うのか? おっと違った神を疑うのか?」
「いえ…… 頂戴します」
「それでこの紙は何だ…… 巻物みたいだぞ」
「さあってまさかこれが例の巻物? 散らばってると言ってたがまさかここに?」
一応は事の経緯を大雑把に伝える。神だから当然知ってるだろうが。
「そうか。お前たちはそれを集めとるんだな。
確かここは民家をぶっ壊して作った建物だったはず。
そうか。処分に困り面倒だと思った家主が古井戸に捨てた?
あるいは古井戸に隠したとも言えるかもしれん」
「はあ? それは…… 」
「龍神様が記された書物と言うか巻物だ。
これを全巻集めればきっと竜神様のところへ行けるであろう。
よし。お前にこの貴重な巻物を与える! 」
また格好つけて。ただ溺れる者が藁を掴んだだけだろう。
「うん…… 濡れていると思ったら少しだけらしい。これは防水加工?
すると魔の手から逃れるためにここに隠したかもしれんな」
「神様! それでどうすればいいのでしょう? 」
縋ってみる。単純だからな。それでうまく行くならこっちのものさ。
相手を気持ちよくさせてコントロールするのが僕の得意技の一つ。
でもだからってテルファーの裸を独り占めするのはずるいよな。
「ふふふ…… まさか二つもサービスするとはな。私も甘い」
そんな風におかしなことを言う。一つのはずだけど。
井戸に頭をぶつけておかしくなったか?
「一つでは? 」
「まあどっちでもよい ただし今のことは後で重要になるからメモしておけ。
その巻物にでも適当にな」
そんな風に言うがこれは竜神様を呼び出すのに必要な巻物。下手にメモできない。
だから頭でしっかり記憶しておこう。アイテム合成で鍛えられてるからな。
でも爺さんがやる気なら助かる。ここは協力してもらいましょうか。
「うん? 何だその顔は? 心の声が漏れておるぞ。神を見くびるでない! 」
どうやら完全に見破られたらしい。本当に困る…… ぐらい立派な神様だ。
危ない危ない。あれ? 何が危ないのかな?
「どうぞお力を! お手伝い願います神様! 」
「悪いがそれはできない」
丁寧に願い頭まで下げたのに即拒否する無慈悲な神様。
「やはり不公平だからですか? 自分たちの手でやり遂げろと? 」
「それもあるがどうも昨日から腹の調子がな。ゾークではないが漏らしそうじゃ。
だから代わりにこの臭い反応機を貸し与える。一時間一万で手を打つぞ。
その程度なら今日中に回収できるはずだから。どうだ? 」
有料で訳の分からない臭い反応機なるものを借りる。
ありがたいけどこの人絶対くれないんだよな。商売してるからな。
ケチと言うか商売上手と言うか基本的に困った爺さんだから。
「よしそうと決まったら善は急げ! 大体の使い方は以上。健闘を祈るぞ! 」
「はい神様! 」
「それと今夜も頼むぞ…… 」
「はいはい」
おかしな神様を残してクエスト再開!
まずはこっちの方角だな。
急いで皆を集めこの胡散臭い神からのギフトで巻物を探す。
隣のツブレ村から臭う。凄まじい臭いだ。
「おいカズ? 」
爺さんにおかしなのを貸し与えられ狂ったと皆に思われてるらしい。
「ははは…… 僕はカズ君を信じるよ」
誰もが疑いの目を向けてる中でゾークだけは信じてくれた。
ありがたい。そうゾークだけは僕を最後まで信じてくれる真の仲間さ。
いや待てよ。そうだ奴はおかしな収集癖が。これでは僕まで同類にされる。
だからって信頼できる仲間に変わらない。一緒におかしなものを集めるとしよう。
「いいからついて来てって。きっとその村のどこかにあるはずだから」
今回は手分けして探すのはやめた。ただ闇雲に探しても見つかるはずがない。
この臭い反応機で的確に巻物をゲットする。
現在巻物は今朝の含めて四つ。
町長から一つ。アンから一つ。バーで父さんが一つ。井戸で発見されたのが一つ。
これで合計四つで残り三つ。できれば今日中にすべて揃えたい。
全巻コンプリートするんだ。欲張り過ぎだが町長の依頼だからな。
急がないとまた化け物が暴れ出す。
「臭いはこっちみたい」
より臭いに敏感なゾークに先導してもらう。
ツブレ村の離れ小島にどうやらあるらしいことが分かった。
では行く前にツブレ村で情報収集するか。
それにしても人が少ない。元々そうだろうが今日は特に少ない感じがする。
「あの済みません…… 」
「うるさい! 今忙しんだ」
村から脱出しようとしてる人たちの集団に遭遇。
ノロノロ最後に歩く二人組から話が聞けた。
「そこの人。あの島には近づかない方がいいよ。おかしなのが居座ってるんだ。
今朝見たって奴が騒いでね。何でも書物を探してるんだとか。
この当たりの村々を荒し回ってる連中がいて…… 気をつけるんだよ坊やたち」
優しい老夫婦に行き方を教わる。
船は出てないから泳いで行くか飛んで行くかだそう。
「おい飛ぶって? 」
父さんが睨むとドリンクをくれた。
何でもこれを飲むと翼が授かると言う代物。本当かゾークで確かめる。
「あの…… おやめになった方がよろしいかと」
アンが心配する。
「大丈夫だって。ただのドリンクだろう? 喉乾いたから飲みてえな」
相変わらず口が悪いテルファー。
「どうだゾーク? 」
「それがカズ君…… 一口飲むのがやっと。独特の味でどうしてもこれ以上無理」
ゲップして腹をさする。どうやら本当みたい。
「だったらハイ! 」
「だから俺にも無理だって。違う方法を考えようぜ」
「おいいつまでもノロノロしてられねえぞ! 」
父さんが痺れを切らす。
まずいなこれは。仕方ない。ここはドラコでも呼ぶか。
続く




