深夜の決戦! ファンタジーの神×テルファー軍団
深夜のシャワー室。
いつの間にか周りは血の海。まさか惨劇でも起きたか? いやこれは爺の鼻血だ。
「まったく刺激が強すぎて行かん。そこの者たちは勝手に振り向くでない!
心の準備ができなければこのような最悪な結果を招く」
テルファーは慣れてるのでまだ呆れてない。
それに対してアンは飽き気味。大胆にも声のする方へ振り向く。
「ちょっとお爺さん! 覗かないで! 」
アンの怒りが鼻血爺さんに直撃。
僕を心配してかただ覗きの常習犯なのかいつも通りのベストポジション。
たぶんどっちもなんだろうさ。心配性で最低な爺さんだからな。
「ああん何だ爺さん! 」
遅れてテルファーが振り向く。
後ろからお尻を覗いていた爺さんを捉えるテルファー。怖いもの知らず。
「待て! お前のはもう充分じゃ! はっきり言って飽きたわ!
もうよい! その言葉遣い何とかならんのか! 」
覗いてると言うのに反省もせず逃げもしない大胆な爺さん。
それではテルファーからお仕置きを喰らうに決まってるだろう。
大体テルファーに対して失礼。僕にはとてもありがたい存在なんだからさ。
ああこのセーフティゴーグルさえ外せたら…… 僕もあの爺さんみたいになるの?
クソ! ファンタジーの世界を守るって何だよ?
自分ばかりいい思いしてさ…… もう嫌になる。冒険続ける気力がなくなるよ。
「寄るな! 汚らわしい! 」
覗いた上でだから爺さんの考えてることがもう分からない。
そんなに嫌なら戻って来るなよな。
「何だと爺! 」
怒り狂うテルファー。それもそのはずプライドを傷つけられた訳だからな。
自分は相手にされずにアンだけが特別扱い。我慢も限界だろう。
テルファーからしたら面白くないだろうさ。
父さんたちだって昨日までと扱いが全然違う。
一気にアンがメインヒロインに躍り出た。
それが分かるものだからイライラが溜まりそれでも僕をからかうことでどうにか。
いくら爺でもファンタジーの神だからダメージは大きいはずだ。
ただでさえ離脱危機があったのにこれではテルファーが立ち直れない。
あまりに可哀想で見てられないよ。格好いい女の子はダメですか?
「おいカズも何とか言ってくれ! 」
あそこまでしてまだ何とか頼み込もうとする爺さん。さすがに真似できない。
爺さんにはまともな感覚がないのか?
「でも…… 」
「何を言ってるの? カズは私たちの味方でしょう? 」
テルファーが迫る。まだ彼女だけならどうにでもなったけどアンもだからな。
「カズ君! 」
「カズ! 」
ダメだ。巻き込まれた。もうここは逃走しよう。
もう何も考えられずパニックになったので逃げることにした。
爺の世話と処分を二人に任せて僕はベッドへ潜り込む。
今夜のことは忘れよう。なかったことにしよう。それがいいさ。
すべては疲れが見せた悪い夢。
翌日。寝不足気味に朝の散歩をする。
日課ってほどではないが今日は爽やかだったから。
ハイもゾークも誘ったが疲れてるからいいやと興味がない。
うん? 何だこれ?
古井戸に人影が。まさか死体?
しかしここまで分かりやすいのは逆におかしい。まさかモンスターの襲来か?
でも今は町長のクエスト中だしな…… 第一発見者になるのも嫌だもんな。
ここは見なかったことにして通り過ぎますか。
「おーい! 」
ダメだ。気づかれた。
もしこのまま放置すれば僕の華麗な勇者と合成師人生が終わってしまう。
するとやはりここは口封じ。または止めを刺すしかなそうだ。
「おーい! 聞こえてるだろうカズ? カズやい! 」
うわ面倒なことに知り合いの爺さんだ。これは仕方ないか。
井戸に逆さまになって吊るされてる爺さんを救助。
僕って基本的にいい人だから。世話係もしてるしね。
「あなたはファンタジーの神? このようなところで何を? まさか修行? 」
いつもこの爺に騙されてロクなことにならない。
ただ昨夜の件は事前にきちんと言ってた気もするので許すが。
それでも僕の楽しみの邪魔を二日連続でしてることに変りない。
「済まんなカズよ。実は昨日のお仕置き…… ではなく井戸に変なものが…… 」
言い訳するがきっと裸を覗いたのでボコボコにされ吊るされたのだろう。
武蔵と太陽の化け物を倒した実力がありながら何と言うザマ。
人間には手が出せないのかただ女に弱いのか?
「まったくよくやるよ」
「それはお前もだろう? 毎晩ファンタジー世界を壊すような真似しおって。
お節介とは思うがこれも健全なファンタジーの世界を守るためだ。
そうしないと面倒な処置させられる。例えば指定を受けるとか。
それで本当に良いのか? お前それで本当に良いのか? 恥ずかしくないのか?」
朝っぱらから爺さんの小言と言うか説教が始まる。もう勘弁はしてよ。
確かにファンタジーの神からのありがたいお言葉は受け取りたいけどさ。
テルファーとの楽しみがなくなるなんて嫌だ。
何のために父さんたちと冒険してたのか分からなくなる。
もちろん僕たちの家兼アトリエ探しのためだけどさ。
「うん! 分かっておるな? 」
厳しいファンタジーの神のお言葉を頂く。
これは仕方ないか。二日続けてはさすがに言い訳できない。
でも二日ともこの爺さんが邪魔してなければすべてうまく行っていた。
それだけにもったいないと言うか悔しい。テルファーにも悪いしね。
「ハイ。もう二度と…… 」
これ以上長引くと嫌なので大人しく従う。
「いや…… 神はそこまでを求めない。後は気づきだ。お前がいかに気づくかだ」
そんな風に格好よく終わろうとするが爺さんも結局覗いてるしバッチリ見てる。
いいよなとは言えないがでも僕だって少しはテルファーの願いを叶えてあげたい。
「気づきですね? これを機に必ずや立派な人間になってみせます! 」
決意を述べる。これできっと納得してくれるはずだ。
「そう気づきだ。できれば別の子がいい…… それとテルファーは外して欲しい」
神の要望が聞こえた気がする。まさか本気なのか?
それともこれは心が勝手にそう言わせてるだけの幻聴?
「神様! 」
心にそっと呼びかける。
「いいから神の命令に背くな! 」
どうやら爺さんは二日続けての流血でもうそのことしか考えられなくなったよう。
哀れだがただの爺さんならそれもあり得るか。
続く




