初めてのレベルアップ
ついに旅立ったカズとハイとゾークの三人組。
まずは隣村を目指すことに。
「おいこっちに行こうぜ! 」
ハイが野生の勘で行き先を探る。目的地がある訳でもないから好きでいいんだが。
「ダメだよ。地図では右に行くのがいい」
ゾークは地図が読める。ただこの地図は大雑把でいい加減。当てになるかどうか。
「よしこっちだ! 」
ゾークに賛成。東進することに。
「げげ…… ここはまずいって! 」
隣村まで最短ルートのはず。
「どうしたハイ? 」
「いや…… あの辺はきっと…… 」
ハイがおかしい。一体あそこに何があるんだ? まさか刺客でもいるのか?
村外れの陰気臭いところ。ここにハイが恐れる何かがあるのは間違いない。
あれほど嫌がるのだから危険…… でもまだ故郷を出てないんだけどな。
いくら何でも気にし過ぎじゃないか? もっとのんびり楽しく行こうぜ。
「あれお前はハイじゃないか? ははは! 逃げ切れずに来たのか? 」
そんなこと言ってるのは近所のガリ兄弟。二人とも太ってるがガリと言われてる。
何でも好物が二人ともガリだからだとかそんな感じ。決して貧しいとかじゃない。
「いや違う…… 」
「こいつバカだからよ! 」
「そうそう。何か言ってみろって! 」
二人でハイをからかう。最低な奴らだ。ハイより頭がいいからって見下している。
待てよ…… すると僕たちまで見下されてるのか? それは問題だぞ。
「おいハイってば! ここに何があるんだ? 」
「そう言えば頭の悪い子を閉じ込めて煮て食べるって噂聞いたことあるよ」
そんな恐ろしくイカレた噂があるとゾークは漏らす。
「俺は知らない! こんなところ見たことも聞いたこともない! 」
震えるハイ。これは相当だぞ。
そこまでハイを追い詰める何かがある。一体何だろう? 余計に興味が増す。
いやいやそんなこと言ってられない。今は一日でも早くアトリエを見つけないと。
ここは構わずに一気に突撃だ。
「待てよカズ! そこはお前でも無理だって! 」
弱気のハイ。戻れと忠告する。違うルートで行こうと情けないことを言う。
らしくない。あのハイが怯えている。
「おいおい僕たちは冒険者だぜ? 何ものにも恐れず立ち向かう。
そうじゃないのか? 」
ちょっとだけ格好をつけてみる。一度は言ってみたかったセリフなんだよね。
隣村の境にあるぽつんと一軒家。そこには一体何があるのか?
気にせずに突っ込む。どうせ初めの方の敵はスライムみたいな雑魚だろうからさ。
大体相手は一応は人間だろう? 村の奴らさ。だったら怖くないし問題ないはず。
中に入るとそこにはメガネをきらめかせた謎の男。男を取り囲むように子供らが。
まさか人さらい? それともマインドコントロールして操る気か?
うん? 笛を吹き始めたぞ。それに誘われるように子供らが後を追いかける。
僕たちは決定的な瞬間を目撃してしまった。どうしよう? 放っておけない。
ただ冒険と言うより事件に近いかな。
「何をしてるんだお前? 」
果敢に立ち向かう。序盤だから大して強くないはずと信じてるが不安は隠せない。
「ああん? こらどこから入ってきたお前ら? 見ない顔だな…… 新入りか?」
どうも僕たちもあのおかしな集団に混じれと命令しているよう。
とんでもない。誰がそんなことするものか。
「そいつらを解放しろ! 」
そう言って木の棒を振りまわす。
これは父さんが暇な時に孫の手として使っているアートだ。
父さんから譲り受けたこのアートで成敗してやる。
「待て! お前は物凄い勘違いをしているぞ。そこに座りなさい! 」
さすがは大人だ。まるでこっちが悪いかのように振る舞う。
しかし待ったも話すも逃げるも選択肢にはない。
戦う以外あり得ないのさ。それが冒険者であり勇者。
「うおおお! 消え失せろ! 」
「おいやめろ。やめなさい! 」
木の棒を振り回し無抵抗のダークメガネを成敗する。
あっと言う間。しかしどうもおかしい。何かが変だ。
「痛い! 痛い! 何をする? お前の親に言いつけるぞ! 」
負けたからって告げ口するとは情けない。それでも大人なのか?
「こいつはハイの仲間だよ先生」
ガリ兄弟が裏切る。仲間だと思ったのに…… でも先生とは何だろう?
「ハイ君! また君は迷惑を掛けて! 次やったら承知しないと言ったよね?
それになぜ来ない? 君の親に言いつけるぞ! 」
脅しをかけるダークメガネ。
「済みませんでした! また来週来ますので勘弁してください! 」
そう言うと走って行ってしまう。
肝心のダークメガネはピンピンしている。どうやら木の棒は効果が薄いらしい。
うーん。これは引き分けでいいかもしれないな。
レベルアップ!
レベルが2になった。
速さと強さが1上がった。
逆に協調性が1下がった。
個別のレベルアップは面倒なのでチームレベルアップを採用。
ただしその影響で困難にぶち当たることもあり得る。
「うわあ! レベルアップだってよカズ君! 凄いね」
ゾークは大喜びだがハイはレベルアップしたことに気づいてない。
僕だって初めての経験。嬉しくないはずがない。
初のレベルアップ記念に何か記憶に残るようなことしたいな。
でも肝心のハイがどうも様子がおかしい。
「どうしたんだよハイ? さっきからおかしいぞ! 」
急いで追いかける。そして知ってることを吐いてもらう。
「あそこは俺みたいな奴を閉じ込める牢獄だ。
親に無理やり入れられて困ってたんだ。でもだからって襲うことないだろう? 」
文句を言い出したハイ。するとあそこは悪人でなく落ちこぼれが多く存在すると?
どうやら僕たちは村の秘密に一歩近づいたらしい。
こうして村を出ることに。
続く




