港町で優雅に一泊
二山超えてようやくたどり着いたと思ったのに……
港町・ドラクリオでもトラブル発生!
「だからお前たち…… 」
「ダメでしょうユベル! お客様には丁寧に対応しなさいと言ってるでしょう?」
今まで一番後ろで様子を見ていたアンが叱りつける。意外にも厳しくて怖い。
ただのきれいなお姉さんではない。もしかして僕も? それは嫌だな。
「何だアン姉ちゃんか。どうしてこんな奴らと? まさか誘拐されたの? 」
ガキがとんでもないこと言う。ただのパーティーの一員なだけだろうが。
どうやらこの生意気なガキがユベル。
「ほらもう少し抑えて。言葉遣いも全然なってない」
「もう分かったって」
「アン? 」
「済みません皆さん。この子は小さい頃からの知り合いで……
お父さんは今日どうしたの? もしかしてまた近所のバー? 」
「それがさ…… 悪いって無理やり押し付けらて代わりをしてるところ。
それでアン姉ちゃんはこの人たちとは知り合いなの? 」
「もう! こんな幼い子に代わりをさせるんだから! 」
非常識だと頭に血が上るアン。気持ちは分かるけど落ち着いて。
「ははは…… そこまで怒らなくてもいいさ。なあそうだろうユベル? 」
いつの間に親しくなったんだよ? なぜかあの子の味方する父さん。
きっと酒好きでどうしようもないところが自分に似てるからだろう。
「そうっすね。親方の言う通りだわ。いつもの親方みたいなものだから」
「ハイもはっきり言うな。きっとそうだよ。僕も苦労してるし」
「こらカズ何を言ってやがる! 父さんを尊敬しないか! なあゾーク? 」
父さんはゾークを頼る。
「どっちでもいいよ。それより脱走者と出港時間の話をを聞かなきゃ」
ゾークは冷静だ。ずっと体調が悪かったがどうやらもう大丈夫らしい。
でもきっと船に乗ったらまた気持ち悪くなるんだろうな。
「それで脱走者と言うのはですね…… 」
「姉ちゃんはいいよ。脱走者ってのは隣町から逃れて来た罪人のこと。
船で密航しようとして大変なんだから。船に乗るには厳しくチェックされるのさ。
知りたいようだから教えてやる。出航はあと三十分後だ。それが最終便さ。
これ乗れないと明日になる。今からだと急いでもチェックしてる間に出るだろう。
残念でしたお前らよそ者は明日の朝に出る船に乗るんだな。ははは! 」
「こらダメでしょうユベル! また失礼な事言って…… きちんと謝りなさい!」
アンはユベルに厳しいが信頼関係があるからか素直に聞き入れる。
どうやらこの港町で一泊するしかなさそう。
困ったぞ。どうしよう? 今日中に着けると思ったのに。余計な邪魔が入った。
密航者の取り締まり強化によって船どころか街にも自由に入れない。
厳重なチェックを終えてようやく解放されたのが夕方。
高級旅館をアンの紹介で安く泊まらせてもらえることに。
海の見える港町で優雅に一泊することにした。
何でも彼女はこの港町出身であのくそ生意気なガキとも幼い頃からの付き合い。
子供からも姉のように親しまれて大人からも人気が高いアン。
さすがはロープウェイでガイドをやるだけのことはある。
あれ…… そのアンがどこかに消えた。そう言えば父さんがしつこかったな。
まさかまたアンに手を出す気か? もう本当にいい加減にしてよね。
「なあテルファーを知らないか? 」
ハイがまたしつこく…… すると二人とも突然消えたことになる。
「さあ…… ジャックに手紙でも書いてるんじゃないか?
あんな怖い奴でもアンにとってはおじで今回の依頼主でもあるからな」
「そうか! それでゾークはどうしてる? 」
「今まで大人しくしていたんだがどこに行ったのか…… 」
もう夕暮れが近いのにどこまで遊ぶつもりだよ。
テルファーとアンは別の部屋だから監視できないけどそれ以外は大人しくしてよ。
ハイがソワソワして気になるので後を付けることに。
それにしても皆一斉に出掛けることない。部屋は僕一人だもんな。
何だか僕だけ仲間外れになったみたい。いい気分はしない。
こう言う時は大体サプライズで僕の記念日を祝う流れのはず。
でも誕生日はまだ先なんだけどな。それとも父さんが覚えていて……
それだったら少しは父さんを見直すんだけど…… まずあり得ない。
ハイを追跡するが一瞬で巻かれる。気づかれたと言うよりはただ急いでるみたい。
「ああそこの人。済まないがこの壺を持っていてくれないか? 」
そう言って謎の商人に出会う。怪しげだが困ってるなら手伝ってあげるか。
クエストで資金を稼がないと。それにはこの街でするのがいい。一日一善ってね。
「いいですよ」
十分ほど待ってろと言われて大人しくしてると壺から水が漏れる。
冷たいな。何てもの持たせるんだよ。これはもう壊れかけで使い物にならない。
早く捨てるのがいい。そうしないとせっかくの中身が全部漏れちゃうよ。
五分すると例の商人らしき人物が驚いた表情で騒ぎ立てる。
もううるさいな。善行ってこんなに難しく大変なものなのか嫌になるぜ。
「何をしてるんだ! 大切な壺を割りやがって!
お前が不注意で落としたかぶつけたかしたんだろう? 」
一歩だって動いてないのにその言いぐさ。それはいくらなんでも酷い。
大体そんな簡単に壊れないし。それで壊れるようなら欠陥品。
そう言えば欠陥品と言えば爺さんがくれたあれも……
あれをどこに仕舞ったか忘れたな。もしかして…… でも着けてる感じはしない。
「初めから割れてたみたいだよ。水が漏れてたから分かるんだ」
一応は正直に言うが全然納得してない。弁償しろと滅茶苦茶言う。
「でもただ持っていただけで…… 僕は何もしてない」
「その壺はハンツ地方の高級な壺で百万はくだらないもの。お前が弁償しろ! 」
ついに本性を現した。脅す。まさかこれは初めから仕組まれてたこと。
でもそんな金ないし。
「おいどうしたどうした? 」
男が数名集まって騒ぎ出すとあっという間に大勢の野次馬が。
無責任に騒いで弁償しろとうるさい。でも僕はまだ子供だし。
仮に弁償するとしても父さんが代わりに払うことになる。
だから問題ないけどここは自分でどうにかしたい。
続く




