港町・ドラクリオ
現在・昼過ぎ。第二の山を下山中。
お腹空いたな…… もうこんな時間じゃないか。
この戦いが終わったら昼飯を食おうと思う。
そんなのんびりした展開ではないが三食きちんと食べないと体がもたない。
山登りでもう体力の限界さ。お腹もさっきから鳴りっぱなし。
朝あれだけ食べても二山も越えればそんなもの。
おっとまずい。今はそんな呑気なこと考えてる時ではなかった。
「どうした? 急がなければもうカウントは始まっているぞ。残り八分だ。
一秒で遅れたら追加料金十万が発生するぞ。もちろん現金のみ」
爺さんが急かす。こう言う時は必ず何かある。
相手に考える時間を与えないのがその道のプロだ。
うーん。どうする? セーフティゴーグル改は絶対に危険な気がする。
臭うんだよな。でも時間がないし…… だけど完全装備を試してもみたい。
「おい何を躊躇ってやがる! ほら爺さん一万だ。それでどうやって着ける? 」
父さんが急いで金を渡す。これで助かるだろう。でもな……
爺さんの仕掛けが気になって動けずにいる。
特にセーフティゴーグル改はどう考えてもトラップだし。
「済まんがそれは子供用でな。ほれカズ。お前がつけるのだ」
爺さんが言えばすぐに父さんが無理やり。有無を言わせない。
「ちょっと…… 」
「いいから早く倒してこい! 勇者カズ! 」
適当でいい加減なことを言う父さん。これできっと爺さんにいいようにされるぞ。
「もう分かったよ。強引なんだから父さんは」
セーフティゴーグル改装着。まるで装着してないような感じ。
改ってそう言うことか? これなら問題ない。
防具を完全装備して巨大アリクイと戦うとしよう。
本来ならレベルマックス時の装備。それを一万で試せるのはお得。
急いで無敵剣を手に巨大アリクイに立ち向かう。
しかしいくら装備を固め必殺の無敵剣を手にしても怖いものは怖い。
そもそもドラゴンアイランドに行くのに心配しないように回復系を集めてた訳で。
修行もせず武器の扱いもまったくの素人。初めてのこと。
これまでほとんど大人が守ってくれたか仲間と力を合わせたか助けが来たかした。
自分の力だけで戦ったことなどほとんどない。そもそも僕はまだ子供だから。
保護者の父さんがいるのが何よりの証拠。僕は強くない。でも情けなくもない。
いくら装備と武器が完璧でもそれを扱う者がダメでは意味がない。
やはり心・技・体が揃ってこそ。
精神的に未熟な僕ではあの巨大アリクイを撃破するなど不可能では?
どうしよう? 切り込む勇気はないぞ。やっぱりここは皆に相談して逃げようか。
「おら! どうした? いい加減逃げるな! 」
痺れを切らした巨大アリクイが挑発をし隙だらけとなる。
「行くぞ! 」
「へへへ…… 震えてるぞ。情けない奴め! 」
アリクイは掛かって来れないと無防備に口を開け近づいて来る。
その勢いも利用して必殺剣で一発勝負に出る。
こうしてノロノロ巨大アリクイを切り刻み絶体絶命のピンチを乗り切る。
レベルアップ!
巨大アリクイを倒したことで三人のレベルが8となった。
ゾークの集中力が1上がった。
ハイのハッタリが1上がった。
カズの判断力が1上がった。
テルファーのカップが1上がった。
アンナイ―ドのカップが1下がった。
巨大アリクイは秘宝・海賊たちの忘れ物を落として行った。
「おいこんなところに十万分の買物券が! どうやら隠し持ってたらしいな」
ハイの大発見。これは凄い。
「よしお前たちここにある服を売ってやろう。好きなのを持って行くといい」
爺さんが欲をかく。しかしこのまま三人が裸でいるのは確かにまずい。
「がめつい爺さんだぜ。よしそれで手を打とう。消えな! 」
父さんは人数分の上下を購入すると言われるまま十万分の買い物券を渡す。
こうして僕たちは休憩を挟みながら二時間かけようやく港町へ。
ついに港町・ドラクリオ到着!
さあここから船で最終目的地のベネットへ。
疲れたがどうにか予定通り午後にはドラクリオにたどり着いた。
では船に乗るかな。
「お前たちは何者だ? ここに何の用がある? 」
ガキが店番をするように道に突っ立っていた。まるで大人の真似事。
たぶん僕たちよりも下だろう。背も低いし細い。
「ああん? お前こそ何者だよ? 」
元通りになったハイがつっかかる。
父さんが止めればいいのに知らない振り。
「私は隊長から誰も通すなと言われている。お前らは脱走者じゃないのか? 」
隊長? 脱走者? どうも警戒が厳しい。一体この辺りで何が起きてるんだ?
テルファーを見るが分からないと首を振る。
詳しい彼女がこうだと僕たちではどうにも。
「私って柄かよ? 食い物をやるからどっかで遊んで来い! 」
テルファーがまるで父さんのように振る舞う。相当舐めているな。
「ふざけやがって! そこまでするとはやはり脱走者だな? 」
ハイとテルファーが余計なこと言って怒らすから逆に疑われることに。
「それで脱走者って何? どう言うこと? 君は何でここに?
僕はカズ。こっちは父さんで他は僕の家来だ」
面倒なのでいい加減な自己紹介で済ます。
「自分の胸に当てて考えてみろ! 脱走者のくせしやがって! 」
どうやらまだ疑ってるらしい。困ったな。早くしないと船が出てっちゃうよ。
「このクソガキが! 生意気言いやがって。それで胸がどうって? 」
「ほらダメだってハイ。これ以上はまずいよ」
ゾークがハイを説得。きちんと話を聞こうとする。
まあ僕としてはどっちでもいいけどね。
「何だと! これ以上反抗するなら隊長に来てもらう事になるぞ。いいのか? 」
「そうしろ。ガキじゃ話にならない」
ハイがからかう。すると分かる大人を呼ぼうともせず無視し始める。
「おいガキ! こっちは忙しんだよ! さっさと通せ! 」
子供の喧嘩を見せられて我慢できずに父さんがキレる。
もちろん演技だとは思うが効果はあった。
「ふざけるな! 脱走者は入れられない。お前らも隣町ヘドロから来た罪人だろ?
その面を見れば分かる。大人しく帰るがいい」
「もうしつこい! 」
テルファーまで我慢の限界。口を出す。
「何をやってるの! 」
ついにアンまでもが厳しく叱りつける。
これはまずいぞ。止める役が僕とゾークではどうにもならない。
続く




