巨大アリクイ
アンと楽しくお喋りしてると嫉妬したテルファーが絡んでくる。
「父さんがどうしたって? へへへ…… アンお姉さん」
「ほらダメだよカズ君。きちんとテルファーの話を聞いてあげなくちゃ。
何かあったんだと思うから」
「へへへ…… 大丈夫。父さんは元気だって。それでどうしたのテルファー? 」
つい調子に乗ってしまう。でもアンも嬉しそうだからいいよな。
「だから消えたんだよ。早くしろって! イチャイチャしやがって見てられねえ」
テルファーの言い方は悪いが確かに父さんが見当らない。
それどころかあいつらまでいない。
どうしてこう勝手なんだ? こっちの迷惑も少しは考えろよ。
今はアンとの大事なひと時。緊張してるアンを優しく迎えるのが僕の役割。
勝手にそう思ってるけどアンだってきっと求めてるはず。
「父さん! ハーイ! ついでにゾークもカムバック! 」
どこに行ったんだ? 僕たちを置いていつも勝手なんだから。
「だからそこの穴に落ちたんだろうが! 何度言えばいいんだよ? 」
テルファーが教えてくれなかったらそのまま笑いながら通り過ぎるところだった。
急いで三人を救出。さあ泥だらけの三人をどうするかな?
どうやら怪我もしてないので天日干しでもしておく?
「カズ…… 助かったぜ! 」
「どうしたんだよ三人とも? 勝手にいなくなったら心配するだろう? 」
実際のところはまったく気にしてないがそれでもいないと困るのは事実。
「おいカズ! 着替えはねえのか? 」
そう言うと父さんは二人がいるのも構わず脱ぎだす。
大事なところまで。仕方なく隠すが今は非常時だと男らしい。
真似してハイも。ただゾークは緊張と恥ずかしさで下を向いてしまう。
そこまでするなら無理しないで大人しくしてればと思うが。
誰だよ? こんなところに落とし穴を掘ったイカレタ野郎は?
まさかラッカマン? 前回倒したはずだがまだ生き残ってたのか?
「くくく…… 親子だね。そしてお前らは本当に仲のいい友だちさ」
そんな風にからかうテルファー。昨夜のことを言ってるに違いない。
「ダメだってテルファー! 」
「いいだろう? 誰も気にしてねえよ」
元気でいい加減で大胆で正直者のテルファーの余計な一言。
「きゃああ! 」
アンが大騒ぎ。恥ずかしくて後ろを向くと余計に叫び出す。
「どうしたんだ姉ちゃん」
父さんは遠慮がない。裸で迫る。と言っても服が砂だらけでは仕方ないか。
できるならアンが砂まみれになってくれたらな……
うわ…… とんでもないことを考えてしまう僕って最低だな。でも正直でもある。
「おいカズ。今お前いやらしいこと考えてたろ? 分かるぞ! 」
テルファーは何でもお見通しらしい。昨夜のことで僕の動きを読み切ったか?
それとも最初から? 僕って単純だから? 男ってそうなるよな。
でも僕だけは…… 違うと思ってたけどテルファーから言わせれば同じだと。
ちょっとショック。村では神童と呼ばれ将来を期待されていた天才。
大げさ過ぎたけど大体合ってるはず。
「もう嫌! 」
父さんだけでなくハイまでもだから…… いや違う。アンの叫びは別にある。
化け物を目撃したと叫び続けている。
だがあの武蔵と太陽のセットに比べたら何てことはない。
全然怖くはないさ。ただ不気味で気持ち悪いだけさ。
だからって僕たちが敵うかと言えばそうじゃない。
さっきのだって結局切れたファンタジーの神にすべて任せた。
無力な僕たちでは相手にならなかっただろう。だから今回だって楽勝なはずない。
巨大アリクイが現れた。
しかしこの辺にアリはいないと思うけどな。
まさかとは思うけど僕たちがアリなのか? あいつに美味しく喰われちまうのか?
いやでも父さんはどちらかと言うとキリギリスの方だしそれはハイだって。
仮に僕とゾークがアリっぽくても…… ダメだ。テルファーは真面目でアリだ。
それはアンも同じ。結局四対二でアリが多いことになる。
これではアリクイの餌にされてしまう。
「ギュルギュル…… 大人しく喰われるがいい! シャア! 」
不気味な音を立てて僕たちを一気に食い尽くそうと言う頭の悪い巨大アリクイ。
まるでネズミのような見た目だが凶暴でもなくおっとりしたタイプ。
説得すればもしかして見逃してくれる?
「おおアリクイ様! どうぞお静まりください! 」
父さんが説得を試みるが理解してるようには見えない。
ボケっとしてて今すぐ逃げてもいいかもな?
一歩ずつゆっくりと後退。バックします。バックします。
しかし奴もそこまで間抜けじゃない。一歩下がれば一歩進む。
まるでからかって遊んでいるかのよう。
これは温厚だな。だったら遊びのつもりで……
「ストップ! そこで止まって! 攻撃はこっちからだから」
そう言ってゆっくり後退を続ける。どうやら奴は防御姿勢を取ってる様子。
さあこのまま逃走しよう。だがゾークが緊張のあまり特技を披露してしまう。
「うわゾーク。ほらしっかりしろ! 気持ち悪いなら無理しないで座ってろ」
それでもどうにか笑いながら続けるがきれい好きな巨大アリクイが怒り出す。
我を忘れて捕獲し始める。
すぐにゾークが捕えらえてしまう。まずい。これは終わったか?
仕方ない。ここは装備したばかりの剣の試し切りと行きますか。
「必殺! 」
しかし剣はまともに入ったのに切り刻むこともなくバラバラに折れてしまう。
せっかくの剣がまったく役に立たなかった。
これはもう爺さんに頼ろう。
「ファンタジーの神様! お願いです! 」
こうして絶体絶命の危機にしつこく僕たちの前に現れる爺さんを頼る。
ある意味救世主。ただの爺さんだけどな。
「うむ。よかろう。これをお前に授ける」
そう言って世界お宝コレクションから盗んで来たであろう一振りを手渡す。
ついでに最強防具もプレゼント。
「よいか。この二つがあれば無敵。その名も無敵剣だ。
どんなものでも切り刻める。試すがいい。ちなみにこっちのは改良版だ。
安心して使うがいい。セットで十分一万。
ちなみに無敵剣だけだと五万だから気をつけろ」
あげるのでもなくただ貸すだけ。しかも十分一万? それはあまりにも強欲。
もう少し何とかならないかな。
続く




