引き止め作戦
絶体絶命の危機を逃れた。
「ふう疲れた。カズよ茶のおかわりだ! 」
武蔵と太陽の化け物を破った爺さん。ファンタジーの神は伊達じゃないらしい。
だからって評価が変わることはない。ただの爺さんだ。
それも僕の野望を阻止した最低最悪の爺さんだ。
「あの…… 」
お茶を近くの団子屋のお婆さんから……
「何…… 感謝されるようなことでもない。
これは昨夜のお詫びだから気にせんでくれ」
どうやらセーフティゴーグルを貸したことを反省してるよう。
確かにあれには困った。もう二度とあんなことあってはいけない。
「悪いと思ってるんでしたらいいんです」
一応は下手に出る。こうしておかないと機嫌を損ねるから。
何を考えてるかよく分からない爺さんだしな。
「覗いた訳ではないのだ。お前を心配してだな。つい鼻血の海に…… 」
どうやら爺さんは僕に貸したことも覗いたことも何とも思ってないらしい。
ただ血の海にしたことを悔やんでるらしい。
さすがに呆れた。ちっとも反省してないじゃないか。これはまた繰り返すぞ。
「済みませんお茶はハイが…… 代わりにこのタンサン毒水をお飲みください」
「何でもいい。喉が渇いている」
そう言うと神のくせに見抜けずに一気飲み。
「うむ。これは美味い! では取り換えようか。これを掛けてみよ」
爺さんから新しいセーフティゴーグルを授かる。
最新式だと豪語する。本当かな? たとえそうでもいらねえや。
「あれ装着感がない? まるで着けてないみたい。凄い! 凄い! 」
嘘くさいが本当の話。重くて圧迫感があって邪魔だったものが改善されている。
これだと着けてるのを忘れそうだ。逆にそれが問題になる場合もある。
「フォフォフォ…… そうだろう。そうだろう。軽量化に成功したからな。
とにかく掛けて損はない。だが気をつけろ。効果は半日だ。
それからは返すなり売るなりすればいいさ。これはお前にやる」
こうしてファンタジーの神の太っ腹に感謝し別れる。
「うぐぐぐ…… 何だか無性にクソが…… 」
どうしたんだろう爺さんの気分が悪そう。まるでゾーク。
そう言えばゾークはどうしたっけ? いや今はそんなことよりもテルファーだ。
急いで父さんを説得しないとまずい。
「おいハイも何とか言ってくれ」
父さんがハイの頼みを聞くはずないがそれでも全員で説得すればどうにか……
「しかしよ…… 」
ハイはどうも乗り気じゃない。どうしたんだ? もうお姉さんに夢中か?
確かにお姉さんは素敵な女性だと思う。優しくて頭もいい。
だけどテルファーだっていいところはある。例えば大胆で適当なところ。
どうしてもテルファーを引き留めたい。
「まあいいよ。でもこれで約束は果たしたからな。
二人以上の素敵な女性を仲間にするって」
「そうだったな。カズは立派だよ。約束を守ったんだからよ」
ハイの催促はこれでなくなった。たぶん忘れていた気もする。
テルファーに会ったその日にもう。でもそのテルファーを失うのか?
本人も嫌がってないからどうにもならない。
「残念だよ。まだ何人も仲間にできたのに。
そうすればきっとハイを気に入ってくれる素敵な子だっていただろう」
適当なことを言ってみる。
「おいそれ本気か? 」
「当たり前だろう! きっと運命の出会いをするよ。だからテルファーを助けて。
そうすればテルファーにだって感謝されるぞ。そして二人は…… 」
ハイをその気にさせる。夢の実現に向けて単純なハイは動き出した。
「ねえカズ君何の話? 」
ゾークも興味津々。体調不良なのによくやるぜ。
「ゾークもテルファーを助けてあげてくれ。きっと見直すさ。
それに今回はお世話になりっぱなしだろう? 」
「そうだ…… 僕だってテルファーを失いたくない! 」
こうして二人を焚きつけて反対するように仕向ける。
何か悪い気もするがこれもテルファーのため。仲間を救うのは当然だ。
コソコソするのもこれでお終い。さあ行動開始と行こう。
「親方! テルファーは幸運の女神ですよ。それに誰よりも強いし力持ちだ。
ここで別れたらきっと俺たちはたどり着けない! 」
「そうですよ親方。僕のテルファーは僕のもの! 」
二人が反対する。ゾークは若干気持ち悪いがそれくらい情熱的なのだろう。
「そうだよ父さん。翼で飛んでいくなら簡単だけどそうは行かないでしょう? 」
「うわー! カズ何度言ったら分かる? 俺はただの人間。
それからお前またドラゴンカードを勝手に持ち出したろう?
まったく本当にどうしようもないな。どうせロクなの買わないんだからよ」
うわバレてる。でも今はそんなことどうでもいい。
「それでどうするんだよおっさん? お別れか? 継続か? 」
テルファーが迫る。
「確かにお前は役に立つし戦力にもなるからな…… よし引き続き頼む! 」
「仕方ないな。あんたの息子の世話を中心にしてやるよ。くくく…… 」
そう言ってご機嫌なテルファー。
まずいって。おかしなこと言ったら気づかれるだろうが。
こうしてアンことアンナイ―ドを仲間に加え合計で六名の集団となった。
では魅惑の都市・ベネットへ! 山下り再開!
うわああ!
先頭を引っ張るハイに異変。
釣られて父さんとゾークまでもが。
「大丈夫? えっと…… 」
「ガイドのアンナイ―ドですよ。ふふふ…… もう忘れた? 」
お姉さんは笑ってるがどうせ僕のことだって覚えてないさ。
「そうだそうだ。アンナイ―ドだった。ははは! ちなみに僕の名前は? 」
「何を言ってるのカズ? 忘れるはずないでしょう! 」
笑顔のお姉さん。すぐにでも虜になりそう。何だかテルファーとは正反対だよな。
上品と言うかきれいと言うか優しいと言うか。
「アンナイ―ドだと長いからアンでいい? 」
ふざけて言ってみる。するといいですよと。
「ではカズ君で」
「だったらこっちはアンお姉さんで」
そう言って互いに笑い合う。
「お前らつまらないこと言ってんじゃねえよ! 」
アンがいるとどうしてもテルファーの下品さが目立つ。
「おい邪魔するなよテルファー! 」
「うるさい! そんなくだらない話してないで早く助けてやれよ」
何を言ってるのかと思えばそう言えば父さんたちが見当らない。
ワイワイ楽しく旅をしていたのにどこに行ったんだ?
続く




