大ピンチにファンタジーの神降臨
脱獄三人組を頭脳プレーで撃退。ようやく楽しめると思ったら今度は化け物。
今日は本当にツイてないな。
「きゃああ! 」
お姉さんに釣られる形でテルファーが引っ付いて来る。
だから僕はただの世話役であり交渉役であって強くない。僕では何もできない。
なぜこんなことを思わないといけないんだよ。自覚してるからって辛いぜ。
「こいつはまさか…… 」
父さんは化け物の正体に気づいたらしい。
「そうみたいだな。ジャックが見たことがあると自慢してた奴だぜ」
冷静なテルファー。すると僕に引っ付いたのはわざと? 何一つ怖くないのか?
とんでもない。僕だってできるなら誰かに引っ付きたいよ。
やっぱりここは親子だし父さんだろうけど。
恐怖で己を失えばどうにもならなくなる。
目の前には刀を持った髭もじゃのまるで侍のような化け物が降臨。
その大きさと言ったら自己紹介してもらわないと分からない。
六百三十四キロだとそのとんでもない巨体に言葉もない。
でかいし怖いし迫力満点。これは本当にとんでもないのに出くわしたぞ。
もはや倒せる気がしない。ここは思い切って現実逃避するか?
ゾークのように気を失う手もあるな。
とにかくまともに戦って勝てる相手でないのは確か。
「すごい迫力だ。きっと観光の目玉になりますよ」
一応はプラス面を強調。ネガティブに考えるよりいいだろう。
ただそうすると倒すのが惜しい気も。ここは相手の気力を喪失させる方がいい?
そんな風な甘い考えが結果的に相手の攻撃を受けることに。
刀を一振りするとロープウェイから外れ箱が地面に思いっきり叩きつけられる。
うわああ!
「クソ! 何をしやがる化け物! 」
「父さん武蔵だってさ。自己紹介してたから」
危うく炎上して大災害になるところだったが運よく助かった。
まともに受けていたら全滅させられていた。
父さんがどうにか衝撃を抑えたのでギリギリ助かったのだろう。被害は最小限に。
それでもお姉さんは意識を失ってる。その下にゾークが巻き込まれた形。
どうやらお姉さんはゾークをクッションにして運よく危機を免れた様子。
うん悪くない僕も一度ぐらいなら…… できるならお姉さんの下でのびたいぜ。
おっといけない。こんな情けないこと想像したらまたテルファーに睨まれる。
急いで回復系アイテムを使用し二人をどうにかしないと。
とにかく一秒でも早く脱出しないといつ爆発してもおかしくない。
中間地点を超えたところで叩きつけられるも炎上せずに助かったのは奇跡。
急いで外へ。
ゾークをテルファーに任せてまだ回復途中のお姉さんを抱えて木の陰に隠れる。
「一体何者なんだ? 俺たちに何の恨みがあるんだまったく! 」
父さんは首を捻ったらしい。肩も腕もおかしいと回す。
痛いと言いながらも笑ってるとこを見ると大したことはなさそう。
ゾークはテルファーに抱えられて無事。ハイは呆然としてる。
「ハイ! ハイってば! 早くしろ! 」
いくら叫んでも反応しない。大丈夫か?
おかしいな。確かにとんでもなくでかいし恐ろしいけど棒立ちするか?
待てよ…… もっととんでもない化け物を目撃した?
そうとしか考えられない。でもこれ以上は勘弁してよ。付き合ってられない。
「カズあれ…… 」
恐怖のあまり放心状態。それほどの強敵…… 化け物だろう。
そう六百三十四キロの武蔵とは別に太陽の化け物が出現。
これこそがここ最近の異常気象を引き起こしている元凶。
一気に化け物が二体。とてもじゃないが戦えない。
だからって逃げれるかと言うとそれもまた難しい。
「うわあどうしよう? 」
ゾークが意識を取り戻すと大騒ぎ。これではパニックになるぞ。
もう実際そんな感じだが。
どうやらこいつらはこの辺りを縄張りにしてるらしい。
なぜこんなに大きい? 巨大化の意味は? 考えてもまったく何も思いつかない。
だって…… 僕ってまだ子供だし頭だってそこまでいい方でもない。
レアアイテムと合成と回復系関連には強いけどね。
後はゾークの影響で汚い系にも詳しいかな。
「へへへ…… 的が大きいから当てやすいぜ。よし覚悟しろよ! 」
父さん得意の弓攻撃。そんなんでうまく行くか?
まずは父さんの攻撃。軽く引くとシュッと音がしたと思ったら到達。
だがまったく手応えがないよう。どうやらこの大きさでは無理らしい。
まずい。徐々に世界が浸食されていくぞ。どうしよう?
「ここは祈るしかない! 誰か英雄に来てもらうんだ! 」
「そんな…… 」
化け物退治ができる英雄なんて想像もつかない。
英雄って言っても知り合いなど……
一人だけ思いつくがたぶん駆け付けてくれないだろうな。
だってただの爺さんだし。そもそも肩書も嘘くさいし。
ファンタジー世界を守ると言っておきながらただ覗いて鼻血出してる爺だからな。
つい悪口が出てしまうがこれもあの爺さんの日頃の行いが悪いから。
それで今度のことはたぶん父さんの日頃の行いが悪いからだろうし。
きっと神が怒り狂って天罰を与えたに違いない。
うん? これは…… あの三人組が置いて行った不吉なアイテムが転がっていた。
化け物に投げる訳にも行かないのでクーリングオフでもするか。
「これもう使えないから別のと交換して! 」
そう言ってセーフティゴーグルを掲げる。
するとどこからか声がする。
「フォフォフォ…… まさか返品したいとはな」
ついに爺さん登場。昨日宿屋にいたのだから道は同じでもおかしくない。
「おお神よ! 」
「どうしたカズ。このファンタジーの神に何か用か? 」
呑気に歩いてるお爺さん。一体どこに隠れていたんだか。
それとも引き寄せられるようにやって来たのか?
口周りと白髭についたあんこからすると呑気に団子でも食ってたんだろう。
まったく緊張感のない神様だぜ。串が落ちてるっての。
「神様! ファンタジーの神様どうぞお助け下さい! 」
「ならん! それはルール違反だ! それよりも茶を」
どうやら人間の味方はしないよう。
あくまでファンタジーに反することをさせないようにしてるらしい。
のんびり茶まで要求してくるところを見るとまだ余裕がありそうだ。
ファンタジーの神と化け物二体の壮絶な戦いが間もなく始まる。
続く




