フェアリーの使い方
のんびり遠足気分だったがどうもそうは行かないらしい。
ロープウェイ客三人組が本性を現す。
さっきまで静かだったのにいきなりだから手出しができない。
ここは大人しく従うことに。
「ぜひこれもどうぞ」
セーフティゴーグルもセットで渡すことに。
「ほお協力的だな。いいぜいいぜ。それくらいでないと」
あまりに簡単なものだから機嫌がよくなる。
この程度で調子に乗ってるよあいつら。隙だらけだってのに間抜けだな。
せっかくだからとりあえず自己紹介してもらう。
「俺たちは昨日あの山の向こうから脱獄したばかりだ。金がないし腹も空いてる。
だから少々気が荒くなっていて何するか分からねえ。逆らわない方が身のためさ」
ボスらしき男が脅す。
「はいはい。でしたらこれもどうぞ」
面倒だけど恐怖で怯えてる振りをする。ああ本当に面倒。
「へへへ…… レアアイテムとゴーグルを頂くぜ。うん? 何だそれは? 」
律儀な強盗団さんだが意外にも凶暴らしい。
「実はこれ物凄く高いんだよね。合成したらきっと凄いのができるし。
それだけじゃなくて売ればとんでもない値段が…… 」
「うるせい! 早く寄越せ! 」
痺れを切らす影の薄い男。今まで静かにしていたが我慢の限界らしい。
一番危険そうなので大人しく言われた通りにするか。
「どうぞ。フェアリーです。使う時には全員で」
そう言って脱出用のアイテムを投げる。
すると男たちは競うようにフェアリーを奪い合う。
これを売れば相当な金になると知ったからな。一人が持つと醜い争いに発展。
金に目が眩んだ男たちの最後はどうなるのか? ここから見物と行こう。
「俺のだ! 」
「いや俺のだ! 触るな! 」
「お前らみっともないぞ。ほら寄越すんだ! 今は醜い争いしてる時ではない!」
ボスがどうにか収めようとするが金に目が眩んでそれも不可能。
結局三人でフェアリーを取り合う。
「フェアリー! 」
三人が完全に触れたところで唱える。
これでレアイテム・フェアリーで三人組はロープウェイから強制脱出させられる。
要するに外に放りだされる訳だ。
男たちは意味も分からずに落下。
少し可哀想な気もするけど脱走した危険な奴らだから仕方ないよね。
うん。もう姿が見えなくなった。これで危機は去った。
本当だったら戦ってもよかったがこっちには人質がいたから無理しない。
それにロープウェイは戦いには不向きだからな。
それにしてももったいなかった。ドラコがくれたフェアリーをここで使うとは。
ここはプラスに考えよう。無事危機を切り抜けたんだ。それでいいじゃないか。
それにしてもフェアリーがこんな使い方があるとは思わなったな。
もしかしたらうまく行くとは思っていたがここまでとは正直思わなかった。
「ありがとう! 」
そう言ってお姉さんが抱き着いた。
苦しくて息ができないんですけど。でも悪くない。決して悪くないと思う。
怯まずに見事撃退したからこれくらい当然だよね。別にそこまで嬉しくないけど。
「おいカズ! ホラ早くしろ! 」
何だかうるさいなと思ったら自分に代われと父さんが。何を考えてるんだか。
今までの事をまったく反省してない様子。代わる訳ない。僕だって感謝されたい。
超レアアイテムのフェアリーを失ったんだから元を取らないと。
恐らくもう手に入ることはないだろうさ。だってどこにも売ってない。
あの爺さんだって取り揃えてなかった。
「本当に格好よかったよ」
そう言ってお姉さんにキスされる。頬だから大したことはないさ。
でも恨まやしそうなハイに涙さえ流すゾーク。未だに代われとうるさい父さん。
だから代われる訳ないだろう? いい加減しつこいって。
「へへへ…… 」
困ったなと感想を述べてるとテルファーに一発喰らう。
嘘だろう? 僕が何かしたの?
無事事件が解決したのに狭いロープウェイ内で惨劇が起ころうとしている。
いやもう起きてるのかもしれない。
「いや違うんだ…… 僕は何もしてない。そうだよなハイ? 」
「知るかよ! 」
ハイはテルファーが嫉妬してることに嫉妬してる。
「ゾークは復活したろ? 僕をフォローしてくれ」
「悪いねカズ君。僕にも庇いきれない」
どうやらゾークまでテルファーを狙っていたらしい。知ってたけど無理がある。
そう言えばこいつら単純だったっけ。本当に困るんだよな。
「あーあカズのせいで…… だから父さんが代わってやると言ったのに」
とんでもない人だ。どうせお姉さんに嫌われてるから無理だろう。
悲鳴上げられたくせに何言ってるの。
「テルファもー嫉妬するなよ」
もうこれしかない。なぜ僕が責められないといけない。
あれは感謝のキスであって好意のキスとは違う。
僕としてはどっちでもいいけどね。
ただいくらそんな風に言い訳しても無駄なのは分かっている。
きゃあああ!
再びのお姉さんの叫び声。
いや僕はここにいるし何もしてない。するはずがない。
「おいカズ! お前やっちまったな? まったく悪いところばかり似やがる」
どうも誤解されやすいタイプらしい。だから本当に何もしてないんだって。
「見損なったぜカズ! 」
ハイはどうも本気で言ってるっぽい。
あれだけ僕を監視するように見ていただろう?
手の動きだって足の動きだって観察していたはずなのに。
「カズ君は調子に乗ってるよ。おえええ…… 」
ゾークが再び吐き気に襲われた。まさかこれにお姉さんが驚いた?
するとゾークのせいじゃないか。だったら僕はまったく関係ないぞ。
「その手をどかせ! お姉さんが嫌がってる! 」
父さんはもう僕がいやらしいことしてると疑わない。実の父だろう?
なぜ息子の無実を信じないんだ。
「父さんじゃないんだからさ…… それよりお姉さんが腰を抜かしてるよ」
どうやら父さんでも僕たちのせいでもないらしい。
何かとんでもないことが起きたのだろう。
あわあわと声にならない。驚き方が異常だ。一体何が起こった?
お姉さんの指し示した方向には見たことのない化け物が。
「あの…… これって毎日のこと? 」
ううんと首を振るお姉さん。
「もしかして何かの演出なの? サプライズ? 」
「違います! 化け物! 」
ようやく声が出たと思ったら今度は引っ付いて来た。
いや僕はこう見えて三番手。一番強いのは父さんでその次がハイだ。
そして僕でゾークと続くけど本当のとこはテルファーが一番強い気もする。
続く




