テルファー頼り
この山はどうもこの口うるさいお爺さんの持ちものらしい。
「我が山を荒すな! 絶対に売ってやるものか! この地上げ屋が! 」
勘違いしてるよう。家族連れで地上げなどするはずないだろう?
「それはねえって! ここは皆の山で公道だろう? 」
父さんが冷静に対応。意外にも的を得ているのか爺さんは黙ってしまう。
「この山は儂のものじゃ! この道だって私道だ!
どうしても通りたければ通行料を払え! 」
強欲爺が怒ってしまい逆効果。これはまずいぞ。
うーん。ここに来て現実的な問題に直面。もっとファンタジーなトラブルがいい。
仕方ない。僕たちじゃ無理だから交渉上手なテルファーにでも頼みますか。
テルファーが渋々引き受ける。
ここは重要だぞ。すべてがテルファーの腕に懸かっている。
「おじいちゃん。ほら肩をもんであげるから。寂しいんだよねきっと」
そんな風に色気で迫るテルファー。それはいくらなんでもやり過ぎ。
もっと丁寧に頼み込んで欲しかったんだけど……
これはこれで嬉しいけど昨夜から何だかおかしいぞ。
爺に進路を塞がれるが色仕掛けでどうにか突破。
「おいもう行くのか? しかしもっと下が…… 」
爺さんは色ボケしていてどうしようもなくなっている。
これだから成金色ボケ爺などと言われるんだ。
それにしてもさっきからゾークが大人しいような気がする。
まだ体調が万全ではないのか?
「うげ! 」
どうやら盛大に道にばらまいてしまう。
「ごめんねお爺ちゃん。後の始末はよろしく。通行料は次回払うから」
「へへへ…… 任せなさい。すべては人助けじゃ」
耄碌色ボケ爺を撃退した。
こうして頂上に到達するとそこから一気に下る。
「待て危ない! 」
父さんの静止を無視してハイが競うように前へ。
僕も必死に喰らいつこうとするが父さんに一喝される。
「どうしたの父さん? 急がないと日が暮れるよ」
予定では今日中に船に乗る予定。それには少なくても昼過ぎには着かないと。
夕方になればきっと船も動かない。大体三時か四時が最終出港時刻のはずだから。
そんな風な話をテルファーが言っていた気がする。
ただ不確かだ。ほぼテルファーについては昨夜のことでどこかに行ってしまった。
「何を言ってる? 怪我したらお終いだろうが! ゆっくり慎重に行くぞ」
父さんに無謀な走りを止められる。
もしこのまま進んでいたら恐らくハイのようになっていたに違いない。
そのハイは一転がりして脇の茂みに刺さってどうにか止まったが血だらけ。
焦り過ぎな上に何も考えてないのがよく分かる。
「まったく何をやってるんだよハイ? 」
釣られて自分まで巻き込まれるところだった。
一人が動けば他の者だって行きたくなるし安全だと思うもの。
「いや…… つい急ぎ過ぎて。悪いな。ははは! 」
全然反省してないな。それがハイな気もする。
「もう! 私がやってあげる」
そう言うとテルファーが怪我の治療に当たる。
ハイは恥ずかしがってなかなか傷口を見せようとしない。
おいおい格好をつけないで大人しく見せろよ。急がないと傷口から菌が入る。
「大丈夫だって。舐めればその内…… 」
どうやらまずいことを言ったと焦っているハイ。舐めるって誰が?
当然自分で舐めるだろうがこの状況だとテルファーがと考えてもおかしくない。
だがいくらなんでも考え過ぎだろう?
「仕方にないな。ほら見せて。舐めてあげるから」
大喜びのハイ。これで痛みも吹っ飛ぶだろう。
いつの間にか足を擦りむいていた。転がった時に腕からも血が出たと。
頭もぶつけたと全部を舐めさせようとする。魂胆見え見えだぞ。
どうせただのかすり傷さ。そこまでしてやる必要はない。
もちろんこれは嫉妬からくるものではなく冷静な判断によるもの。
ペロペロ
ペロペロ
かわいらしい仕草のゾークがテルファーの代わりにハイの傷を舐める。
こんなことしなくても回復アイテム一つで治るんだけどな。
まあいいか。面白そうだから黙って見守るか。
「おいやめろゾーク! ふざけるな! 」
ゾークの優しさを無視して拒否。何を考えてるんだか。
「でも傷が…… 」
「どうしてテルファーじゃないんだよ! 俺は期待してたんだぞ! 」
情けないハイ。
「ごめん。親友で仲間でしょう? そっちの方がいいかなって」
テルファーはどうにかかわしたよう。そんな甘くないか。
当然こうなるだろうなとは思っていたけど。
「ふふふ…… 」
テルファーがが笑いだすと皆笑い出した。
ハイは自分のことなのに何を笑ってるんだろう?
「ほらハイ。これを飲めばすぐよくなるさ」
ハイは手に取ると一気飲みでむせる。
ここですかさずテルファーが背中を叩いてあげる。
本当は気が利いて優しい子なんだろうな。そうは見えないところがまたいい。
「カズ…… 」
「ハイ…… 」
「ほらお前たちいつまでノロノロしてやがる! 早くついて来い! 」
先に行った父さんがしびれを切らし叫ぶ。だから急ぎ過ぎなんだって。
下りは一人じゃ危ないし急ぎ過ぎもよくない。それは父さんが言ってたこと。
そしてなぜ僕たちを急かそうとするんだ?
ハアハア
ハアハア
どうにか下山成功。
「危なかったぞお前ら。もう少しで落石地獄に嵌るところだったんだからな」
父さんが言うようにこの山は落石が多くあって巻き込まれたらただでは済まない。
ボーっとしていたら巻き込まれていただろう。だからあんなに急いでいたのか。
三百三十三メートルの山を登り次は六百三十四メートルの山を登る。
倍近いがここで片道ロープウェイで頂上付近まで行けることが判明。
どうやらここからはゆっくり遠足気分でもいい。
客は一組だけ。男三人組だ。
ただの登山家だろうがどうも様子が不自然。
「では参ります」
ロープウェイには係の人が笑顔で出迎えた。
きれいなお姉さんとあって三人が隣の席を求めて争う。
「おいハイ何やってる? ゾークも体調が優れないんじゃないのか?
気持ち悪くなっても知らないぞ。父さんもいい加減やめてくれよ! 」
ハイとゾークは恥ずかしがって無口に。本当にどうしようもない連中。
父さんに至っては本気でお姉さんの隣を死守したよう。いい加減にしろよな。
少しはこっちのことも考えてくれよな。恥ずかしくて見てられない。
三人がそうするんだったらこっちは堂々とテルファーと手を繋ぐか。
続く




