ハイの幼虫がカチコチ
三つの箱から好きなものを選ぶ。
ファンタジーの神の爺さんを信じて小さな箱を開けるとそこにはまた箱が。
時が来たら開くと言う箱。中にはイベントアイテムがあるらしいのだが。
本当かな? どうも信用できない。爺さんを見るがただ首を振るだけ。
これだけではさすがに可哀想だからとセーフティゴーグルを渡される。
不吉だからいらないと言うのにもしもの時に持ってなさいと強引だ。
お風呂以外でも役に立つ優れものだからと無理やり押し付けられた形。
まあいいか。下手に掛けなければ昨夜のようなことにはならないさ。
「おいカズどこだ? 」
父さんが探しに来た。どうやらもうそろそろ出発らしい。
これは急いで支度しなくちゃ。
「では行くがいい勇者よ。この世界はお前の力に懸かっている! 」
大げさな爺さんだ。でも勇者と言われて悪くない。へへへ…… 困っちゃうな。
さあでは出発するとしよう。
ついに山登り開始!
まずは第一の山。標高はざっくり三百三十三メートル。
どっかで聞いたような高さ…… まあいいか細かいことは。
一時間かけて登る。登りはきついが登り切れば下りは比較的楽らしい。
気をつけないといけないのは落石だ。この辺りは多いそう。
ぼうっとしてるとすぐに落石地獄に嵌ることになる。
父さんが大声を上げハイが呼応する。どうやら落石が発生したみたいだ。
「大丈夫かお前たち? 」
「ゾークが…… 」
「問題ないよ。足をちょっと挫いただけだから。さあ行こう! 」
ハイもそうだけどゾークが成長した気がする。これも父さんのお陰?
いや違うな。きっとテルファーがいるからだな。単純だよな二人とも。
そのテルファーは僕をからかうことに必死。何を考えてるんだか。
頼りになる素敵なお姉さんはどこに行ったんだろう?
「よしついて来い! 」
張り切る父さんに単純なハイとゾーク。楽でいいな。
レッドロードと呼ばれるマグマが噴火した時に固まった赤っぽい道。
そこを円を描くように迂回して歩く。
中級者コースは先月の大雨の影響で現在通行禁止。
今は初心者コースを歩いている。
どうしたんだろう? ゾークが何かを恐れている。
「あそこ…… 」
とんでもなく臆病だが目はいい。毛虫でもいたか?
蜂の巣があるのだとか。でもミツバチだから問題ないと勝手に納得。
それでも凄く嫌がるゾーク。見かけたのは獰猛なスズメバチだと。
そいつらが集団でミツバチを襲おうとしている。
「おいトイレってないか? 」
蜂に気を取られているとハイがおしっこがしたいと騒ぎ出す。
父さんは何も気にせずその辺でしろと。
でもここにはテルファーだってミツバチだってスズメバチだっている。
どうもせっかちなテルファーは蜂に気づかずに先に行ってしまったらしい。
まずいぞ。間違ってハイのかわいらしい幼虫を攻撃されたらどうにもならない。
確かに痛み止めはあるしレアアイテムはあるが刺されたらお終い。
アナフィラキシーショックを起こせば命に関わる。
血清などあるはずない。レアアイテム項目に付け加えておくかな。
でもこんな時に役に立つのがレアアイテムで合成したカチコチ。
一瞬で何でもカチコチにする優れもの。
ようやく蜂に気づいたハイは大慌て。隠すか隠さないかで迷っている。
それくらいなら早く大事な幼虫を隠せっての。
だが慌てるばかり。仕方なくカチコチを投げる。
「ハイそれを急いでかけろ! 」
「オウ! 」
何を血迷ったのかハイはカチコチを自分の幼虫にかけてしまう。
うわあ…… 嘘だろう?
今は大声を上げられない。反応してこっちに向かって来る恐れもある。
それに最悪そうしておけば幼虫は守られるからな。
「よし駆除するぞ! 」
父さんがスズメバチに突撃!
ただのスズメバチが現れた。
父さんのライターファイヤーボール攻撃でスズメバチ五匹が戦意を喪失。
残り十匹が一気に父さんへ襲い掛かる。
カチコチで他のスズメバチを駆除。
「おお助かったぞ。人間様を舐めやがって! まったくただじゃおかねえ! 」
こうして僕たちはスズメバチを駆除しどうにか危機を乗り切った。
「おいどうしたんだよお前たち? 」
テルファーはようやく異変に気づいた。らしくないな。
父さんはスズメバチの集中攻撃のせいで半裸に。
ハイはカチコチなものをそのままにして呆然とする。
「きゃあああ! 」
堪らずにテルファーが大声を上げ走っていく。
よくやるよ。昨夜ちっとも気にしてなかったくせによ。どう言うつもりだ?
まあ僕にはどうでもいいけど。それよりもハイだよな。どうやって元に戻す?
それが難問。まあでもどうにかなるでしょう。
三十分が経過。
ようやくハイの体が元に戻った。
世話係の僕がそばについて元気づけどうにか元通り。
その間父さんが作った試薬を飲まされたりはちみつで実験したりと大変だったな。
山登りも本番。今度の敵はどうやらそこまで甘くなさそう。
「おい! 入っちゃならねえ! 」
ようやく歩き出したところで鬼出現かと思いきや爺さんだ。
どうやらこの山の所有者らしい。立ち入りを禁止されてしまう。
「しかしお爺さん…… 」
「誰がくそ爺だ! 」
僕が丁寧に尋ねたのに勝手に誤変換する困ったお爺さん。
ハイにでも任せるか。
「頼むぜ爺さん。俺たち山を登って港町まで行きたいんだ」
正直者のハイは通される?
だが杖を振り回し一歩も前に進ませてくれない。
ではゾークは無理だから父さんが。
「おい爺! 」
「何だお前は? 無礼な奴め! 家族連れで油断させてもそうは行かん! 」
怒ってしまった。最初が肝心。ハイに父さんでは逆効果か。
でも僕は司令塔でただ後ろから眺めるのが好きだし。
手足になってくれる者がいないと。
「違うって! 俺たちはただの旅行客さ。旅行客!
だからそこを通してくれ。ここは公道だろう? 」
父さんがまともに交渉する。うん以外にも冷静だ。
「うるさい! ここは私道! それにお前たちにこの土地を明け渡すものか! 」
どうやら本気らしい。困ったな。
杖攻撃で隙はない。放っておけば疲れてお終いだけど時間をロスしたくない。
ここは交渉上手のテルファーに頼みますか。
続く




