お詫びの印
翌日早朝。
「おい起きろって! 」
父さんはすっきりしてる。
そうだろうな昨夜の騒動に巻き込まれたのは僕だけだから。
以外にも三人とも早く寝ちゃったから何も知らない。
僕としても昨夜のことはすべて夢だったような気がする。どうも現実感がない。
「よし急いで支度しろ! 」
飯を食って登山に備える。
父さんが二杯ならハイは三杯。僕だって負けずに二杯。ゾークは無理せずに一杯。
食い過ぎて気持ち悪くなっても腹が痛くなっても困るからな。
テルファーは昨夜のことを忘れてるかのように普通に接する。
どうやらやはり悪い夢だったに違いない。これで僕は救われたか?
大体ファンタジーの神って何だよ?
セーフティゴーグルしたら見えないっておかしいだろう?
そうすべて僕の夢だったのさ。悪くない夢だったが現実にはもう経験したくない。
「眠そうだなカズ! 」
ご機嫌のテルファー。やっぱり昨夜のは本当のこと?
だとしたらここはテルファーを黙らせるしかない。
「テルファーか…… いやあ! 」
つい触れられて変な声を出してしまう。
「おいカズ。何してるんだよ? 驚き過ぎだろう? 」
そんな風に豪快に笑うテルファー。まったく意味が分からない。
「あれカズ君とテルファーちゃんが仲良くなってない? 」
ゾークの気づき。どうでもいいことをペラペラと。
どちらかと言うとテルファーが勝手に絡んでるだけ。
「おいお前たち何かあったのか? 」
「ないよ父さん。ただテルファーがしつこいだけだろう」
これ以上恥ずかしい思いをしたくない。
「そうそう。しつこく見て来るから困るよな。なあカズ? 」
テルファーの奴が余計なことを言って盛り上げる。
他の奴はいいが僕には耐えらえない。
からかいを一切無視して急ぐ。
でもその前にあの爺さんにゴーグルを返さないと。
もう何の価値もないゴーグル。お試し期間も終わり返すのがいいさ。
それにしてもあの爺さん何を考えてるんだか。
「おお…… どうだった? 」
爺さんを捕まえお試し品を返す。当然最悪だったと。他の感想などあるはずない。
もちろん欠陥品とまでは言わないが肝心な時に見えないなら意味がない。
「そうかそうか。これはファンタジーの世界を壊さないようにだから仕方ないさ」
適当に言ってただ僕の欲につけ込んで楽しんでいただけ。
子供をからかって楽しいですか?
しかもテルファーが言うにはあの場にいて逃げたって言うじゃないか。
一体何を考えてるんだ? 自分だけ見て僕に我慢させるなんてあり得ない。
「いいから返すよ。それで他のアイテムは? 」
「ほれどれも一億だ。好きなのを選びなさい! 」
爺さんは昨夜と言ってることが全然違う。
一万だったはず。もちろん一万だって僕からすれば大金。
父さんに買ってもらうにしたって一つが限界。それが一億って何だよう?
ボッタクリにもほどがある。冗談にもならないさ。
「はあ? 一万じゃないの? 昨日そう言ってただろう?
いくら言ったところで爺さんは安くするつもりはないらしい。
「勘違いするな。あれはお近付きの出血サービス。一時間限定価格だ。
それを一秒でも過ぎれば元の価格になる。これは常識」
世界お宝コレクションでも取り扱ってそうな超レアアイテムを見せびらかす。
くそ! 昨日買っておけばよかった。
「それでこの見えない地図ってのは? 」
「これは今自分が欲してる場所への行き方を詳細に記した地図。
これさえ持ってれば完璧だ。冒険者にとってはとんでもなく魅力的に映るはずだ。
だがあまりにチート過ぎるので勧めない。当然これも一億。お前に払えるのか?」
「大丈夫。父さんのカードがあるから。確かドラゴンカードだったと思う」
いつでも使えるようにと父さんから…… 勝手に借りていた。
「馬鹿者! 親のを勝手に持ち出してはいけない! それにカードは不可。
現金のみ対応。もちろんそれに値する金や硬貨ならば考えてやらないこともない」
どうやら現金取引らしい。するとこのドラゴンカードではダメか。
昨夜もそんなこと言ってったけ。もう少しサービスしてよね。
お近付きの印なんでしょう? 同じ宿仲間だからって。
相手は行商の爺さんだから当然と言えば当然か。
結局ただ悲惨な目に遭わされただけ。
「うん? どうやら恨んでいるな? それでは一つサービスしてやるか」
特別サービスだと言って箱を三つ用意。
爺さんの言葉を真に受けていいのか? どうせまたおかしなアイテムだろう?
そんなことぐらい分かってるんだよ。
「好きなものを選べ。大中小とあるがこの中から一つだけ選ぶがいい」
「またとんでもない不良品じゃないの? 」
爺さんを睨みつける。もう二度とあんなことは繰り返したくない。
欲望全開で恥ずかしい思いをした記憶が残る。
「おいおいゴーグルは君が危険な道に行かないようにだな……
ファンタジーの神として采配したのだ。それを恨まれては堪らない。
恐らく似たような場面で同様な妨害があるだろうさ。
お前はまだガキだから大人がどうにか。優しく見守るのが大人の役目だ」
適当なことを抜かす爺。まったく苦労するぜ。
でも言ってること自体は間違ってないから困る。
「それでどうする? 選ぶのか選ばないのか? 好きにしろ。強制はしない」
「もらえる者はもらっとくさ。遠慮はしないタイプなんだ」
「よしなら選べ。ちなみにお楽しみ箱だと思うがお前にまた恨まれても敵わない。
だから中身を教えよう。この大きい箱は空っぽ。中くらいの箱は蛇がびっしり。
よく見れば動いてるだろう? 恐怖体験を存分に味わいたければ選ぶがいい」
爺さんは大きいのと中くらいのを紹介した。だとしたら最後のはどうだ?
まさかこれが当たり? それとももっと危険な代物?
「それで最後のには何が入っている? 」
「うむ。では小さいのはと言うと…… 今お前に必要なものとだけ。
ただその時にならないと開かないイベントアイテム。
どうする? 好きなのを選べ」
爺さんの言葉には嘘はなさそう。だったらおとなしく小さな箱を選ぶか。
ただ時が来るまで開かないのでつまらない感じもする。
続く




