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なぜここにテルファーが?

間もなく深夜零時。外は真っ暗。

明日は早朝から二山超えて港町へ。そこから船だかフェリーだかに乗り目的地へ。

出発から丸二日は掛かりそうだが予定よりも早い。


やっぱりテルファーが気になる。

第一印象の怖くて性格の悪いお姉さんとは違って男っぽいが面倒見がいい。

僕なんかより随分年上だろう。父さんのセクハラと我がままに耐えよくやってる。

金の為なら多少のことは我慢する格好いい女性。それがテルファーだ。

ハイなど憧れから興奮して突っ込んで一撃を喰らうし。

ゾークは恥ずかしくて目も合わせられないと。

でもテルファーは話しやすいし楽だと思うんだけどね。


へへへ…… ついテルファーのことばかり考えてしまう。本当に情けない。

ただテルファーってあのジャックの姪。もちろんただの姪や親戚ならいいんだ。

でも二人の繋がりは深い。もし結婚すればいつも邪魔して来そう。

父さんの親友だか悪仲間だか知らないけど嫌だな。あんな人と毎日関わるなら……

どうしてもジャックの顔が浮かぶ。第一印象最悪だから。

きっとあっちは覚えてないだろうが。


問題はハイだよな。奴の為にももう一人女の子を見つけないと。

テルファーがあれだけ魅力的ならもう一人は普通でいいか。

最悪ゾークに協力してもらえばどうにかなる。ハイを騙すぐらい楽勝さ。

でもさすがに今回は無理に連れ出したんだから期待に応えないと。


一番の問題はゾークか。いくら慣れない馬車で酔ったとしても明日だってある。

明日は二山超えるだけでなくその後港から船に乗る。

船酔いは馬車レベルではないだろうさ。

歩くよりはグッと早くなるし移動も楽だけどゾークの体調を考えると心配だ。

一応はまだ僕は世話係だから。


これで父さんの世話までさせられたら堪らない。

そう言うのはできるならテルファーかハイにでもやらせたい。

でも父さん我がままだからな。

急いで酔い止めでも調達するか。ただ効かないのと眠気に襲われる場合がある。

その欠点をどうにかしないと。特にゾークはその辺りが敏感だから。


「いつまで一人でブツブツ言ってるの? いい加減早く入りなって! 」

ダメだ。いくらごまかしても無理みたい。幻覚でも幻聴でもないようだ。

温泉に浸かってるのはあのテルファー。

すると僕は最悪のタイミングで来たらしいな。もはや無視できない。

「テルファー? そこにいるのはやっぱりテルファーなのか? 」

しかし僕だと分かったらすぐに出て行けと言わないか?

僕が子供だから舐められてる?

 

「おかしなカズ。そう言えばそのメガネも変だぜ。いいから遠慮せずに入れよ」

何だよテルファーの奴が妙に落ち着いてると思ったらこれはタオルを巻いてるな。

こっちは素っ裸なのにそれはないよ。ちょっと恥ずかしいんですけど。

「いやでも体を洗わないと…… 」

間もなく深夜零時。願いが叶う時間…… のはずない。僕にはこんな願望ない。

いや仮にあってもないと言い張る。それが男と言うものさ。


「ほら早くしなって! 」

どうも何が変だ。なぜテルファーは何も気にしない?

僕は男でテルファーは女じゃないのか? 思いっきり叫べとか言わない。

捕まりたくないし女性の悲鳴に興奮する変態でもないんだ。

僕はただのどこにでもいる竜人さ。

「今すぐ洗います! 」

別に急ぐ必要ないんだけど。でも急かされた感じがするから。

頭は後にしてそれ以外を丁寧に洗おう。


「それどうしたのカズ? 潜水でもする気? 」

テルファーがからかう。どうやらまだ僕を子供扱いしてるらしい。

そんな…… 村では一番の成長株って言われてるのに。ハイよりも大人だ。

「これは廊下で商売してた爺さんが泣きついたから買ってあげたんだ」

大体合ってるよなこれで? ファンタジーの神なんて大げさなこと言ってたっけ。

そんな神様がこのセーフティゴーグルを貸してくれた。

何でも一時間は取り外せないのでその間はずっとつけてないとならない。

溺れてもいいように浮くんだとか。後は……


「ほら照れてないで早く来なって! もう時間ないぜ! 」

温泉は零時まで。それ以降宿の者が清掃に来るから出て行かなければならない。

タイムリミットは後三十分もない。別に僕はそこまで長風呂じゃないが。

父さんみたいに汗臭くないしゾークみたいに体が悪い訳でもない。

長風呂する理由が見当らない。


「テルファー。いくら誰もいなくてもタオルは脱がないと。それがマナーだよ」

そうやって優しくマナーを教えてあげる。

本当は温泉に入る前に洗わないといけない。きっと飛ばしたんだろうな。

「何を言ってるんだよカズ? 誰がタオルを巻いてるって? 」

そう言って立ち上がる。下品だなと言ってられない。それだと丸見え。

湯気でどうにかできるレベルじゃないぞ。仮にできても最初の数分だけだ。


僕だってソラの世話してるからよく分かる。

ソラも一緒に入ると何も気にせず見せようとする。

やめろと言っても聞きやしない。

だがあのテルファーがそうだとは思えないが。


「ははは! どうしたんだよ? 恥ずかしがるなよ」

「いや違う。見えない…… 見えないんだ! 」

湯気のせいじゃない。これは間違いなくこのセーフティゴーグルのせい。

きっとこれを外せばきちんと見えるはずだ。

でも今は見えない。いくら周りが見えても大切なものは隠れて見えない。


「へえ見えてない? 」

テルファーが興味を示す。これはさすがに下品でヒロインらしくない。

「だから全然見えないんだって! 裸なんだろう? 」

つい訳の分からない確認を取る。どう見てもいや見えないが裸に決まってる。

温泉に行って裸でないはずない。そもそもタオルや湯気で見えないとかではない。


おかしい。やっぱりあの爺さんに嵌められたんだ。

何がファンタジーの神だよ。人の楽しみを奪いやがってチクショウ!

おっと…… 冷静に。これでは僕が逆に主人公らしくないじゃないか。


「よく目を見開いてみろ。本当は見えてるんだろう? 」

疑いの目で見るテルファー。

こんなの悪ふざけや冗談ではできないんだから信じてくれよ。


さあこれからどうする? 


                 続く

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