宿屋
ラッカマンの落とし穴攻撃に耐えどうにか危機を乗り越えレベルアップ。
レベルが6になった。これで一人前の竜人に一歩近づいたことになる。
ただ父さんの酒量とテルファーの大胆さがアップしたのが気になるが。
慎重に穴ぼこを避け先に進む。
ゾークは無事。ハイは放っておいても大丈夫。
テルファーも元気だ。ただ第一印象とは随分違うかな。
こんな力持ちで思いやりがあるとは思わなかった。
もっと冷たく淡泊で少し離れたところで見守る感じがあったんだけど。
まあ悪い人じゃないのは見てよく分かる。ただあのジャックの姪だから。
もし僕たちが結婚したらジャックもついて来る。
だから友だちのままでいるのがいいだろう。
「ありがとうテルファー。もう大丈夫だよ」
背負われたこの状況でも格好つけやせ我慢するゾーク。
相当テルファーの魅力に憑りつかれてるな。これはハイ以上に単純で情熱的だ。
異常なほどのゾーク。困ったな…… 諦めるつもりはないらしい。
過去二度の失敗を忘れてる訳でもないだろうによくやるよ。
「父さんまだ? 」
「ベネットにはまだ遠い。そうだ。この近くに船はないのか? 」
「それなら二つ山を越えたところが港町だったと記憶してるが…… 」
「よしだったら山の前で一泊するぞ」
一時間歩きっぱなしでフラフラ。足の感覚もないほど。
この状況でもし山登り…… しかも二つもと来れば途中でへばるのは間違いない。
だからこの判断は間違ってない。でもテルファーは不満そう。
あと二山ぐらいどうってことない。船など乗らなくても歩けばいいと無茶言う。
どうやら遅れるのも金が入らないのも困ると焦ってる様子。
逞しいよりもがめついかな。
「ははは! テルファーだけ元気だな。さすがは山育ち。
その脚力は隠しきれない。ただか弱い女の子ではない。
あのジャックが恐れるほどのスタミナとパワーと度胸と行動力。
だから奴は全幅の信頼を置いてるんだ。なあそうだよなテルファー? 」
そんな風に言いながらテルファーの肩を触れようとしたところで肘打ちを喰らう。
まさか褒めて喜んでる隙を突いてのタッチ? 情けないよ父さん。
相手に動きを読まれてる。どうしてそんなにも単純なんだ?
「バカやってないで急ぐよ」
「ははは…… 痛いぜ。容赦ないな。俺には優しくして構わないんだぜ」
ちっとも反省してない父さん。これは後で母さんに報告だ。
「それでどこに泊まるつもり? 」
案内役のテルファーに頼る。
「さあな。このおっさん次第だろう。これから行く村には当然宿屋もある。
だが帰りも後払いとは言え特別報酬もある。さすがにケチるんだろう? 」
父さんの考えが読まれている。でも確かに五人もいたら宿代もバカにならない。
親切な村人のお世話になるしかないか。
「まあそう言うことだな。お前らには悪いが贅沢はできない」
「なあラッカマンから奪った落下石を売ればどうだ? 」
ハイはお腹いっぱい飯が食いたいから宿がいいと騒ぐ。
ゾークのことも考えれば落ち着く宿屋の方がいい。ただ父さん次第だよな。
「そうだな。それを売って旅の資金にするか」
どうやら父さんは端から宿に泊まるつもりはないらしい。
村人のお世話になる気満々。
ちょっと恥ずかしいぐらいの図々しさ。僕も見習ないとな。
「テルファーはどうする? 」
「どっちでも構わないさ。ただ金が貰えないなら宿屋は勘弁だぜ」
自分の儲けがいかに増えて絶対に減らないかだけ考えている。
「ゾークは? 」
ゾークはどっちでもいいと。僕に任せるそう。実際は父さんが決めるんだけどね。
「よしならば…… 」
父さんが決定しようとするとテルファーが耳元でささやく。
「本当かそれ? 」
「噂だな。だが恐らく間違いないだろう。後はあんたの好きにしな」
テルファーは面白がってかおかしな情報を与える。
すると父さんは突然考えを変え宿屋に泊まると言い出す。
一体何を吹き込んだんだテルファーの奴は? まあ僕はどっちでも構わないが。
落石村到着。
目の前の山は高さは分からないが距離にしておよそ一時間ぐらい。
ただそれは上級者コースを通った場合。
初心者コースは楽だけど大回りするので休憩含めて三時間が目安。
当然早い方がいいと多数決で決定。反対に回ったのは僕だけ。
「おいカズ! 何を情けないことを言ってる? 」
「そうだぞカズ」
飯を食い元気満々のハイはご機嫌だ。僕をからかう。
それを止めるのが父であり親方であり師匠で大人なのに。
父さんってば一緒になって僕を臆病と決めつける。
現在落石村の山側にある宿屋に一泊。
「危ないからそうしただけだろう? こっちにはゾークがいるんだし」
ゾークはもうすっかり良くなっている。
ハイと同じように食うからまた気持ち悪くならないか心配。
「ははは! テルファーも何か言ってやれ」
「私はハードな旅がいいがお前たちは初心者だろう? 」
無理するなと言ってくれた。
「ほらカズ。慰めてもらって良かったな。もしかしたら気に入ってくれたかもよ。
だとするとあのジャックとも仲良くしないとな」
そうんな風にふざけて笑う。
ジャックってあの恐ろしい面の困ったその手の人。
いくら父さんの友だちでも関わりたくない。
「さあ好きなだけ食え。明日は山を二つも登る。ここで体力をつけておかないと」
夜遅く。
「なぜ落石村かって? それはよくここに落石被害があるからだよ。
あんたら上級者コース登るんだろう? 気を付けな。あそこは頻繁に落石がある」
聞くんじゃなった。明日からの旅が憂鬱なものに。
情報収集は冒険の基本中の基本。あまり嬉しくないニュースだが明日に活かそう。
もう寝るか。その前にお風呂に。
宿には温泉が。ここは山奥だからあっておかしくない。昔ながらの温泉。
すると当然…… それ以上のことは後のお楽しみだと父さんは笑っていたな。
何だか凄く興奮してたし絶対にロクなことがない。
風呂に入ろうと長い廊下を歩いてるとなぜか爺さんが。
もう後一時間もすれば零時だと言うのにどうしたんだろう?
スピードを上げて通り過ぎようとすると呼び止められてしまう。
続く




