タンサン毒水によるアトリエ取り壊しの刑
アトリエで王子のお相手をする。
「よしやるぞ! 」
「はあ…… ダメだってそれじゃあ! 」
つい合成ごっこで興奮する。王子はもっと興奮してるから手に負えない。
自分はできると勝手に思い込んで説明を聞こうともしない困った奴。
王子のお相手をするのも疲れる。いつだって我がままだからな。
でも今日はそんなことよりも体調が心配。凄く心配。
タンサン毒水をあれだけうまそうに飲むんだから。
どう言う味覚をしてるんだ? 普通は吐き出すはずだろう?
間違えて渡した父さんも父さんだけど飲んでも気づかない王子もどうかしてる。
「どうしたんです王子? 貧乏ゆすりしちゃって。もしかして貧しいの? 」
王子が貧しいはずはないがもしかしたら貧しい王子だっているかもしれない。
「うるさい! これは何でもないわ。さあ続けるぞ! 」
「我慢しないで。トイレでしたら河原にでも」
アトリエのトイレは僕たち村人のものでさすがに王子には勧められない。
だからって河原ってのもどうかとは思うけど仕方がない。
「違うと言ってるだろう! さあ今度は失敗しないようにやり方を教えろ! 」
「はいはい。まずは…… 」
こうして二人っきりでアトリエにあるモノを使って遊んだ。
当然危険がないように見張られているがそんなことは気にしない。
「やっぱり河原にでも行く? 」
合成ごっこも飽きたことだしせっかくだから外に。
「そうだな。よし…… 」
「行けません王子! 」
止められてしまう。河原で溺れる危険があるとのこと。
お洋服が汚れるからと王子は納得するしかない。
だったら汚れた服にすればいいがそれでは許可が下りない。
王子も本当に大変だな。大変と言うか楽と言うか。
大変過ぎて楽なのは意味不明だけど楽過ぎて大変で辛いのは可哀想な気もする。
何もすることがないから暇なんだろうなきっと。
それでも王子を振り回して三時間は遊んだ。
王子は大変満足して帰って行った。再会を楽しみにしてるそう。
僕としては例の件が気づかれてなければいくらだって遊んであげるつもり。
大体僕の方が年上でお兄さんだからな。王子だから偉そうには言えないけどね。
王子来訪は結局成功に終わったのか?
あれさえバレてなければきっとうまくいっただろう。
大丈夫。バレないさ。絶対にバレないさ!
それから一か月後に急展開を迎える。
「済まんカズ…… 実はうちの工房が取り壊されることになった」
そんな風に落ち込む父さん。僕も突然のことに驚いている。
まさか何か失敗した? 酔っぱらってトラブルでも起こした?
本当は酒に弱いのに飲むのが好きだから困ってる。
マローンおばさんが絡み酒は頂けないねと言ってたけどそれのこと?
「どうして? 僕のアトリエは? 合成師として有名になるつもりだったのに」
父さんに訳を聞くしかない。どうせ他の人はごまかすに決まってる。
でも父さんは粘ればいくらでも教えてくれる。昔からそうだった。
誕生日プレゼントの時も前日に発表しちゃうし。
確かドラゴンのおもちゃ。父さんの古い友人が作っていて。
仕方なくお菓子もセットになったからよかったんだけどね。
そのおもちゃも去年近所の子にあげたな。欲しいって毎日のようにねだるから。
おっと…… 今はそんなことはどうでもいい。
なぜアトリエが取り壊されるんだ? そんな話聞いてないよ。
一体何か悪いことしたの? 心当たりがあるとしたら…… うわ気づかれた。
まさか見習いも助手も解雇? ファイヤーおじさんになっちゃうの?
「ねえ父さんってば! 」
「それが…… 俺にもよく分からなくて…… あの後王子が体調を崩されて……
ようやく元気になられ顔を見せるようになったのはここ最近だと聞く。
もしかすると訪問時に何かとんでもないことを仕出かしたか?
そのせいでうちの工房を危険視して閉じさせた?
今母さんが一生懸命交渉に当たってるが決定は覆せそうにない。
お前も分かってくれ。これも運命だ。王子に近づき過ぎたのかもしれないな」
どうやら原因は僕が作ったタンサン毒水。処分するようにゾークに言ってたのに。
父さんにはきちんと伝わらずにやっぱり王子に飲ませてしまったのだろう。
その現場を僕も見ていた訳だから言い訳はできない。すぐに止めていれば……
今更後悔しても遅い。
「落ち込まないで父さん。工房は閉じるけど家は大丈夫なんでしょう? 」
我が家さえ何とかなれば問題ない。工房はまた新たに作り直せばいい。
もちろんそんな簡単なものじゃないけど。それでも三年もあればどうにか。
「ああそれは問題ない。ただこうなってはこの村にいられるか……
とにかくお前も覚悟しておいてくれカズ」
準備をするように言われてしまう。
これで一年後の冒険の話もなかったことにされてしまう。
と言うかこれからが本当の冒険になりそうな予感。
こうして今までの王子との友好関係もなくなりアトリエを取られてしまう。
タンサン毒水の扱いを間違えなければ。
王子が来る時ぐらい合成しなければ王子だって一週間以上苦しむこともなかった。
アトリエを取られてから両親は寝込んでしまった。
元々やる気のなかった父さんは酒に溺れて使い物にならず。
母さんは母さんで無理が祟ってマローンおばさんの世話になっている。
残されたのは僕だけ。
新たなアトリエを見つける旅に出るしかなさそうだ。
でもきっとすぐ見つかるはずさ。だって最悪家さえあればいいんだから。
新しい土地でまたアトリエを開けばいいさ。
「悪い…… 今日は忙しいんだ。また今度遊ぼうぜ」
「ごめんねカズ君。母さんがもう遊んじゃダメだって」
どうやら王子を怒らせ国王からも目をつけられたようだ。
僕たち一家は村の誰からも相手にされなくなった。
仕方ない。ここはやっぱり村を出て新たなアトリエを一から探そう。
こうして僕たちのアトリエ探しの旅が始まった。
続く




