王子のお飲み物
アイテム合成。まずはいつものようにタンサンと混ぜ合わせてみる。
「うわやっぱりダメだ! タンサン毒水になった。失敗! 」
残りのニンジンとはちみつは保存しておくとして羽根を入れてみることに。
「ゾーク。そこから青い瓶を取ってくれ」
「はい。これでいい…… 」
「うん。それじゃあこれ父さんに渡して来てくれ」
青い瓶にタンサン毒水を半分だけ流し込む。これは廃棄用。
そして残ったタンサンを使って解毒薬を作ることに。
解毒薬は意外と簡単に作れていいがその為にアイテムを無駄にはできない。
こうして余った材料で解毒薬を一リットルほど。
大体一か月しか持たない。ただ薬は村で不足してるからあげると感謝される。
うんうん。こうしておけばいつかレアアイテムが手に入るかも。
きゃああ!
外が騒がしい。どうやら王子がやって来たらしい。
これはまずい! 急いで支度をしないと。
「ほらお前たちは用済みだから早く帰りな」
これ以上ここにいられたら邪魔になる。騒ぐし臭いから。
「ふざけるなって! 俺たちだって見たいんだからよ。なあゾーク? 」
「そうそう。カズ君だけなんてずるい」
二人は簡単には帰ってくれない。もう仕方ないな。
ここはやっぱり二人には王子のお世話をしてもらうか。
「おい何をやってるカズ? 急いでこっちに来い! 」
大慌ての父さん。思ってたよりも早かったのか焦ってる。
最後の最後までアトリエをきれいにしようと皆で大掃除。
王子来訪時はいつもこんな感じ。
一国の王子がお越しになるのだから当然でもっときれいにしてもいいぐらい。
ただそもそも人手不足。できるならもっとゆっくり来てくれるといいんだけど。
気の利かない王子だからな。
「どうしたの父さん? 王子が来たんでしょう? 」
見なくても外の騒ぎを聞けば分かる。
「そうだ。だからお出迎えしないと。ほら急げ! 」
父さんは僕たちが遊んでいると思ってるらしい。
でも実際はレアアイテムを合成して回復系アイテム作りしてるだけなんだけどな。
「そうよ。ほら急いでカズ! 」
そう言って引っ張られていく。買ってもらったばかりの服が……
うん。伸びてない。でも何だか臭いや。
母さんまで。二人ともちっとも理解してくれない。僕は遊んでないんだって!
「これはこれは王子。遠路はるばるこのような田舎に。どうぞ中へお入り下さい」
父さんが胸を張る。どうやら気に入られたと思ってるんだろうな。
「それは何だ? 」
父さんは慌てたものだからゾークから渡されたタンサン毒水を手にしている。
ゾークはきちんと伝えたはず。父さんだってそれが何だか分かってるはず。
僕は信じる。だって父さんは立派な合成師なんだから。間違える訳ない。
「はい。何でしょう? 」
どうやら父さんはいい加減に聞いていたらしい。何だか嫌な予感がする。
それはどう見てもタンサン毒水。見た目で分かると思うんだけど。
だからって王子に説明しなくていい。それはただの廃棄用でただのゴミだから。
「寄越せ! 飲みものであろう? 」
王子はそれがウエルカムドリンクだと疑わない。
喉が渇いただろう王子にと持ってきたと思っている。
「はい。王子がお疲れかと思いまして。タンサンドリンクをどうぞ」
「うむ。気が利くなお主。気に入ったぞ」
そう言うと何のためらいもなく飲み干す王子。
待って…… ダメだ。もう全部飲んでしまった。
まずい。これはまずいぞ。どうしよう?
「ハイ! ハイ? ゾーク? 」
二人に頼ろうとしたがどこにもいない。
父さんの手にタンサン毒水があるを見て逃げやがった。
何て逃げ足の速い奴らだ。くそ…… このままだともしかして僕のせいになる?
まずいぞ。吐き出させるか? でも…… いや笑ってる。
だったらこのままでいいか。気づかれなければそれでいい。それで…… いいの?
「どうぞ中へ」
「おお…… お前はカズではないか? 久し振りだな。どうした? 」
王子はいつにも増して元気そう。
「お元気で何よりです。これからもずっとお元気だと嬉しいです」
ただの希望じゃない。すべて知ってるので元気でずっといてくれないと困る。
もし体調を崩されたら…… そう考えるだけで逃げだしたい気分。
「何を堅苦しいことを言ってる? さあ一緒に遊ぶぞ! 」
うわ…… どうしよう? これ以上関わったらまずい。
絶体絶命のピンチ。
それから一時間は王子の体調に異変が見られなかった。
「どうしたどうした? カズはそんな畏まるタイプか?
それとも人見知りでも発動したか? 」
呑気過ぎる王子。お前の体を心配してやってるんだろうが。
「それは王子の方でしょう? 前回だって遊んでると突然…… 」
まずいまずい。王子の機嫌が悪くなっていくのが分かる。
笑顔が消えてブツブツ呟き始めたら危険。
すぐにでも元気づける。そうしないと僕が泣かせたことになる。
王子ってばすぐ泣くんだよね。まだ子供だし甘やかされてるからな。
「それで何を作っている? 」「
気分を直して笑顔。単純だから扱いやすい。
「ああこれ? レアアイテム作りでして…… 」
「しかしまるで剣のような形をしてるではないか! 」
意外にも分かってる。そうアイテム合成だけでなく武器合成も行っている。
来年には手作りアイテムで冒険することになっている。だから武器も一応。
その為にいらなくなった刃物を集めている。
武器屋で処分に困ったものを父さんに頼み込んで持って来てもらっている。
村の奴らにバレとる面倒だから仲間にも言ってない。僕と父さんとの秘密。
「実は武器屋も始めまして。どうです合成してみませんか? 」
こうやって武器屋ごっこを始める。王子はこう言う遊びが大好き。
だから付き合ってやる。僕はもうとっくに飽きてるが武器作りは本当だから。
アイテム作りの合間にちょっとだけ。腕を磨いている。
きっと一年後の冒険で役に立つだろう。
続く




